住宅ローンの事務手数料と保証料の違い
記事作成日:2016年7月3日
最終更新日:2022年7月17日
住宅ローンを借りる際に、保証料の支払いがない(金利上乗せもない)一方で、定率の事務手数料や10万円を超える定額の手数料を支払う場合があります。保証料と同程度の負担になる高額の事務手数料は保証料と同じようなものだと思ってしまうかもしれませんが、違いがあることに注意が必要です。なお、事務手数料は融資事務手数料などと異なる呼び方をする場合もあります。
住宅ローンを借りる場合、保証料を支払って保証会社に保証をしてもらうことが一般的でしたが、最近では事務手数料が借入金額に対して定率または定額で発生する代わりに、保証料が無料となる住宅ローンが増えてきました。
事務手数料や保証料の部分は実質的に金融機関などの利益になる部分ですが、事務手数料とされているか保証料とされているかで違いがあります。保証料は繰り上げ返済をすると返ってくる可能性があり、事務手数料は返ってこないことが違いです。
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保証料を支払って保証会社に保証してもらう
住宅ローンは大きな金額を借りることになるので、貸す側からしたらちゃんと返してもらえないと大損になってしまいます。そのため、土地や建物に抵当権を設定して担保をとるだけでなく、信用保証会社の保証を得ることを融資の条件としている場合があります。
保証会社は、住宅ローンを借りている人が返済不能となった場合に、借りている人に代わって銀行などの金融機関に住宅ローンを全額返済します。そして、保証会社が銀行などの金融機関に代わって借りている人に返済を迫ることになります。
不動産を担保にとることができて、いざという時には保証会社が返済をしてくれるので金融機関は安心してお金を貸せるということになります。
保証会社に保証してもらうための費用が保証料で、借りる金額が多くなるほど、借りる期間が長くなるほど、借りる人の信用状態が低いほど保証料は高くなる傾向があります。
事務手数料は保証料の代わりの場合とそうでない場合がある
銀行などの金融機関に支払う事務手数料には大きく分けて2種類あり、実質的に保証料の代わりとなる借入金額に対して定率(1~2%前後)の事務手数料(あるいは10万円を超える高額の固定の事務手数料)と、保証料の代わりでなく純粋に住宅ローンを借りることに関する事務手数料があります(通常は10万円未満)。
住宅ローンでは保証料が発生しない代わりに借入金額に対して定率または定額で発生する事務手数料の支払いが必要になる住宅ローンがあります。
保証料は繰り上げ返済でも戻ってくるが事務手数料は戻ってこない
保証料と定率の事務手数料は同じように発生する住宅ローンの諸費用ですが、利用者にとって大きな違いがあります。金利上乗せではない一括で前払いする保証料(いわゆる外枠方式)は繰り上げ返済が行われると不要になった保証料が返金される場合があります。
例えば、35年の借り入れを35年保証していたはずが、10年で繰り上げ返済をして完済したら残りの25年の保証は不要になるので、不要になった保証の分だけ保証を返してもらうというようなイメージになります。もちろん、全部繰り上げ返済でなくでも、一部繰り上げ返済でも保証料が返金される場合があります。
また、金利上乗せの保証料(いわゆる内枠方式)の繰り上げ返済では、支払った保証料が変換されるわけではありませんが、借入金額が減るため将来支払う予定だった金利に上乗せされている保証料は減ることになります。そのため、繰り上げ返済をすることによって当初予定した保証料よりも支払いが減ります。
一方、事務手数料は繰り上げ返済をしても基本的に返金されることはありません。払ったら払ったきりとなります。そのため、繰上返済を予定している場合は、事務手数料方式だと損をしてしまうことがあります。ただし、事務手数料方式は繰り上げ返済がなかった場合に保証料方式と比べて総支払い金額(金利)が低く設定されている場合があります。
住宅ローンで事務手数料の選択肢が出てきたと考えられる理由
金融機関などから見た場合、保証料でも事務手数料でも、返済不能となった場合に備えて徴収するお金であり、利益になるお金であるという点は変わりません。しかし、それだけならば敢えて似たような費用が2つある必要性はありません。事務手数料は保証料と異なり、繰り上げ返済に返還されないという特徴があります。
保証料の代わりに定率で発生する事務手数料(あるいは10万円を超える高額の固定の事務手数料)という選択肢が出てきた理由は繰り上げ返済時に返さなくてもいいという点です。
事務手数料方式は低金利の住宅ローンでよく見られる傾向があります。保証料方式は繰り上げ返済があると借りた人に保証料の一部を戻すことになるため、厳しい競争で金利をぎりぎりまで引き下げていると、保証料の戻りで予期しない利益のとりこぼしが発生してしまいます。そのため、事務手数料方式にすることでより低い金利の住宅ローンが提供されることになります。
つまり銀行など金融機関にとっては、事務手数料であれば返金の必要がない点は経営上有利な部分です。裏を返せば住宅ローンの利用者にとっては繰り上げ返済時に戻ってこないという点は不利な部分です。
もちろん、適用金利のほか保証料や事務手数料、団体信用生命保険などの条件を総合的に判断して、事務手数料方式の方が費用の発生が少ない場合は、事務手数料方式の住宅ローンを借りると有利になりますが、繰り上げ返済を行った場合に結果的に不利になってしまうこともあるので注意が必要です。
借り換えや繰り上げ返済の予定なら保証料方式を検討
繰り上げ返済を行うことがはっきりしている場合は、定率の事務手数料を支払う住宅ローンは事務手数料が返金されない分だけ不利になる場合があります。そのため事務手数料方式の住宅ローンの金利が低くても、保証料を払う場合と比較して損することがあるので注意が必要です。
繰り上げ返済以外にも借り換えの場合にも注意が必要です。借り換えは今借りている住宅ローンを一度全額返済して別の住宅ローンを借りることになりますが、全額返済をするので保証料は返金される場合がありますが、事務手数料は返金されません。そのため、短期間で借り換えを行う可能性がある場合、事務手数料方式で借りていると不利になる場合があります。
まとめ
- 保証料の代わりに借入金額に対して定率または定額で事務手数料が必要な住宅ローンがあります。
- 保証料は繰り上げ返済を行って保証が不要となった分だけ返金される場合がありますが、事務手数料は繰り上げ返済をしても通常は返金されません。繰り上げ返済や借り換えの時に事務手数料方式は不利となる場合があるので注意しましょう。