夫婦で共通の銀行口座を使う方法とメリットやデメリット
記事作成日:2015年12月16日
最終更新日:2018年10月29日
家計管理を行う場合に問題となるのが、銀行口座をどのように使うかです。多くの人が夫婦で使う銀行口座を準備していますが、名義は夫か妻になっています。代理人カードを作ることで名義人以外の配偶者も口座からお金を引き出すことができるため日常生活で問題になることはありませんが、夫婦の共通口座にはデメリットもあります。共通の銀行口座を使う方法とメリットやデメリット、注意点についてまとめました。
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夫婦で共通の銀行口座を使う方法
日本の銀行では夫婦共同名義の口座にできない
海外では夫婦共同名義の口座を作れる場合がありますが、日本では銀行口座は基本的に1人の名義になり、夫婦共同の名義の口座にすることはできません。そのため、夫婦が共有して使う口座を開きたいと思っても、夫か妻のどちらかの名義で銀行口座を開設することになります。
代理人カードで夫婦共用の口座として使える
ただし、「代理人カード」を使うことで、共同名義に近い使い方をすることができます。代理人カードとは口座名義人本人の親族に対して発行されるカードで、名義人口座から代理人がATMでお金を出し入れすることができるカードです。
代理人カードを使えば、共同名義ではありませんが、事実上共通・共用の口座として使うことができます。代理人カードの細かい取り扱いは銀行によって異なる場合がありますので、取引している銀行に確認しましょう。
夫婦で共通の銀行口座を使うメリット
代理人カードを作ることで夫か妻の単独名義の銀行口座でも、事実上の共有口座として夫婦で共通して使うことができます。銀行口座を夫婦で事実上共有して使うことで、夫婦の収入を1つの口座にまとめて管理できる、電気代や水道代などの料金の引き落としを1つの口座にまとめられる、毎月の生活費を1つの口座で管理できるなどのメリットがあります。
収入を1つにまとめて管理できる
家族全体の家計を考える場合には、収入や支出を1つにまとめて管理した方が分かりやすいです。夫婦それぞれに収入があって別々の口座に入って、そのまま夫と妻が別々にお金を使っていくと、何が何だか分からなくなってずさんな管理になりがちです。
一度夫と妻の収入を家族の口座に入れてしまうことで家計全体の管理がしやすくなります。夫や妻が自分で使いたいお金はお小遣いとして夫婦の口座から夫と妻に支払うか、あらかじめ自分のお金を除いて残ったお金を夫婦の口座に入れる方法があります。
各種料金の支払いが便利
口座を1つにまとめられるというのは各種料金の引き落としで特にメリットがあることに注目です。例えば、夫婦が別々に2つの口座を持っていて2つの口座で分担して各種料金の引き落としをする場合、どちらの銀行口座で何日にいくら引き落とされるのかという管理が複雑になってしまいます。
さらに口座に引き落とされるお金を入れておいたと思っても、年に1回しかない支払いなど足りなくなってしまう場合や、病気やケガ、冠婚葬祭など何らかの事情で口座に入金が出来なかった場合、たまたま忘れてしまい入金できなかった場合などに残高不足となるリスクがあるため、口座にはそれなりのゆとりをもってお金を入れておくことになります。
2つ口座があれば2つの口座にそれぞれゆとりを持たせることになりますが、1つの口座なら1つの口座だけ残高不足にならないようゆとりを持たせればいいので管理が楽です。
生活費を口座で管理する場合分かりやすい
毎月の生活費を口座に入れておく場合にも、夫婦共通の口座があると便利です。生活費を月に1度下ろして封筒で管理するような場合は関係ないのですが、口座に入れておいて残っているお金がその月の予算といったような管理をしている場合にメリットがあります。
夫婦共通の口座ではなく、夫婦それぞれの口座に分けて生活費を預けていると、相手の口座の状況が分かりづらいため、生活費が合計でいくら残っているのか、どのくらい使っているのかが見えづらくなります。しかし、1つの口座で管理していれば、その口座のお金が生活費になるので分かりやすいです。
家族のお金と個人のお金を分けやすい
銀行口座を夫婦で事実上共有することで家族のお金と個人のお金を分けやすくなります。夫婦で使う口座を作った場合でも、夫と妻それぞれが個人用の口座を持つことになると思います。
もし夫婦で使う口座を作っていなければ、夫か妻の個人用口座で家族のお金を管理することになりますが、家族のお金と個人のお金が混じってしまって使ってしまったり、相手の目が行き届きにくくなってしまったりする問題点があります。しかし、夫婦共通の口座を別に作ることで家族のお金と個人のお金を分けやすくなります。
夫婦で共通の銀行口座を使う場合のデメリットや問題点
銀行口座を夫婦で事実上共有して使う場合には家計管理がしやすくなる多くのメリットがありますが、もちろんデメリットや注意する点もあります。
離婚時に揉めてしまう
あまり考えたくないことかもしれないのですが、万が一夫婦の仲が上手くいかなくなって離婚してしまう場合に夫婦で共通の銀行口座を使っていると揉める原因になります。共通して使っているとはいえ、あくまでも夫か妻の名義なので名義を持っている側が口座のお金は自分のものだと主張することになる恐れがあります。
特に代理人カードを作らずに夫か妻のどちらか片方だけが管理していた場合には片方しか引き出せず、口座の状況が分からないこともあるため、問題がこじれやすいです。また、離婚時のお金の受け渡しを巡って後述する税金の問題を引き起こしてしまう恐れもあります。
相続時に揉めてしまう
離婚と同じようにあまり考えたくないことですが、病気や事故などで夫か妻のどちらかが亡くなってしまった場合、相続の時に問題となることがあります。夫婦共通で使っていたとしても、銀行口座の名義は夫か妻のどちらかになっているため、銀行口座のお金が誰のものなのかを巡って無用な言い争いをしてしまう可能性があります。
子供がいる場合は子供と配偶者が相続人になるためあまり問題にならないかもしれませんが、子供がいない場合には両親が相続人になる可能性がありますし、直系尊属がいない場合兄弟姉妹が相続人になる可能性があります。兄弟姉妹と銀行口座の預金の持ち主について揉めてしまう可能性がないとは言えません。特に金額が巨額であれば、揉める可能性が高まります。さらに、後述の税金の問題を引き起こしてしまう可能性があります。
税金面で問題になることがある
税金面で夫婦共通の口座が問題となる場合があります。銀行口座の名義は夫か妻のどちらかになっていますので、名義人以外の人のお金が入っている場合、贈与や相続の場面で面倒なことになる恐れがあります。
住宅購入の場合
夫婦で事実上銀行口座を共有して使っているとはいえ銀行口座は夫か妻どちらかの名義になっています。例えば、住宅の購入費用を夫婦が共有している口座で貯金して、その口座から代金を支払った場合、贈与の問題が出てきます。
夫婦の口座に夫と妻がそれぞれ折半して1000万円ずつ出し合って2000万円を貯めていて、2000万円の住宅の購入代金に充てたとします。この場合、購入した土地と建物の持ち分は2分の1ずつになるはずですが、銀行口座が夫名義の場合、形式的には口座名義人の夫が全額支払っているのに、土地と建物の持ち分の半分が妻のものになっているから贈与ではないか、と指摘される可能性があるのです。
相続の場合
相続時にも税金が問題となる可能性があります。夫の名義で夫婦の口座を作っていて夫と妻が半分ずつお金を入金して貯金していた場合、夫が亡くなった後に妻が口座の自分が入金した半分のお金を自分の口座に移すと、外見上夫の口座のお金の半分が妻の口座に流れていることになります。このお金が相続財産で課税対象なのではないかと指摘される恐れもあります。
高額なお金は別々の管理が良い場合も
実際に贈与や相続とされて課税されるかどうかは別にして、税務署や税理士などの専門家に相談したりする手間も増えてしまうため、住宅購入資金や老後資金など高額なお金は別々の自分名義の口座で管理した方が良いこともあります。
振込先や支払いで使う時に名義が問題に
銀行口座から振り込みを行う場合、振込人の表示は変更できるのですが、夫婦の共通の銀行口座を振込先として使う場合には銀行口座の名義人は夫か妻になります。そのため、口座の名義人でない人が口座を振込先として使う場合は、名義が違ってしまうため、問題となる場合があります。
また、各種料金の引き落としで使用する場合に、名義人でない人の料金の支払いに使う場合に名義が違ってしまうため、問題となることがあります。
代理人カードを作るなら紛失に注意
代理人カードを作る場合には、お金を引き出せるカードが2枚できることになります。そのため、紛失など管理には十分に注意をする必要があります。特に2枚カードがあると1枚あれば入出金ができるため、もう1つのカードをほとんど使わなくなる場合があります。そうなると無くなっていても気づきづらいので注意が必要です。
入出金で重複や行き違いが起きる可能性
代理人カードを作る場合は夫と妻の両方が口座からお金を引き出すことができるようになります。そのため、同じ目的で夫と妻が別々に2回お金を引き出してしまったり、夫か妻のどちらか片方が勝手に使ってしまったりして残高が不足してしまう可能性があります。夫婦で共有して使うのであれば、入出金をする時は相手に話をして管理が適当にならないように気を付けましょう。
夫婦の仲が良くないと失敗する
最後に根本的な問題ですが、夫婦共通の口座は夫婦の仲が良くお金についてタブー視しないで話し合えることが大前提となります。夫婦の仲が良くないと、お金の話がしづらくなって、十分に話し合わずにどちらかが口座の管理を行うことになり、相手の不満が溜まってしまったり、ずさんな管理をしてお金を減らしてしまったりすることがあります。
クレジットカードを夫婦で共通化するなら家族カード
銀行口座を夫婦で事実上共有して使うと、クレジットカードも夫婦で共通化したいと思うことがあるかもしれません。その場合には、家族カードを利用すると、口座と同じように事実上共有して使うことができるようになります。詳しくは次の記事をご参照ください。
クレジットカードで夫婦が家族カードを使うメリットとデメリット
まとめ
- 日本では銀行口座は夫か妻の名義で作ることになりますが、代理人カードを作ることで夫と妻が口座から入出金できるようになり、夫婦で共通した銀行口座を使うことができます。
- ただし、夫婦で共通の銀行口座を使っていても名義は夫か妻のどちらかになるため、離婚や相続、税金などの面で問題が生じることがあります。
- 夫婦で共通して使う銀行口座は毎月の家計管理、各種料金の支払いや生活費の管理に使うことが望ましく、高額なお金を管理するのにはやや不向きです。高額なお金は夫婦が別々の口座を作り、それぞれ入金しておいた方が良い場合があります。