保険で貯蓄を行ってはいけない理由
記事作成日:2015年5月30日
保険で貯蓄を行う場合、最低でも定年前後までの期間が考えられます。スタート時の年齢によっても変化しますが、数十年に及ぶ長い期間となります。この長い期間ということがポイントですが、保険で貯蓄を行ってはいけない理由は主に次の理由です。
- 保険会社に預けるとお金の自由がなくなる
- インフレリスクへの対応が難しくなる
- 保険会社の破綻リスクがある
- 貯蓄部分が保険部分に影響される場合がある
もちろん、予定利率が低いなどの理由も指摘できますが、金利は上昇する可能性があり予定利率は今後上がる可能性もあります。その時には保険を活用した貯蓄に再び注目が高まる可能性もありますが、単純に予定利率の高低だけで判断できるものではありません。仮に保険会社の資産運用力が他の金融商品を提供している主体よりもずば抜けて高くても、上記の理由が改善されていないのであれば、保険で貯蓄を行うべきではありません。
一つ一つ理由を見ていきます。
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保険会社に預けるとお金の自由がなくなる
保険で貯蓄を行うということは、貯蓄性の保険を契約して、通常は毎月あるいは毎年保険料を支払うという形になります。これは保険会社に相当な長期間お金を預けてしまうことになり、お金の自由度が大幅に下がります。
- 支払いが苦しい時も保険料を支払う
- 途中で解約すると解約返戻金が少ない
- いざという時に自由にお金を動かせない
支払いが苦しくなっても保険料は払わなければならない
当たり前ですが、保険に加入すると最初に全額を支払う形でない限り、毎月あるいは毎年保険料を支払わないといけません。保険料を支払うことが出来なければ、保険が失効し解約となってしまう場合があります。
しかし、人生の長い期間を考えてみると、教育費の負担が増えてやりくりが厳しい時期もあれば、負担などが少なくやりくりが楽な時期もあります。会社の倒産などによる失業で急に生活が苦しくなる場合もあります。保険でも自動振替貸付制度などがありますが、自分で資産運用をしている時ほどの柔軟さはありませんし、解約返戻金が減ってしまいます。
保険を利用した貯蓄ではなく、自分で貯蓄をしていれば貯蓄金額の増減も柔軟にできます。
途中で解約すると解約返戻金が少ない
保険の場合は、途中で気が変わって保険を解約しようと思うと、払い込んだ保険料よりも少ない解約返戻金しか受け取れない場合があります。その場合は損をすることになります。
自分自身で貯蓄をしている場合、途中解約しただけでかなり損をする金融商品はほとんどないと思いますし、そういう商品を選ばなければ済みますから、保険のような問題はありません。
株式や投資信託は売買手数料がかかったとしても、途中解約そのものが損になる仕組みにはなっていません。評価損益がマイナスになっている場合も価格変化によるもので、解約が理由ではありません。
いざという時に自由にお金を動かせない
経済・金融危機で特定の保険会社の経営が危ないということになると、自分で貯蓄している時よりは資金の動かし方の自由度が下がります。また、非常時に急にお金が必要となった場合でも、自分で貯蓄している場合と保険を解約する場合とではお金の動かし方の自由度が下がります。
保険は中途解約になると解約返戻金が少なくなり損をする場合もあります。長い人生の中ではいつどのような時にまとまったお金が必要になるか分かりません。
保険会社に預けているお金と自分が運用しているお金では、自分が運用しているお金の方が自由になります。
インフレリスクへの対応が難しくなる
保険はインフレに弱い
保険は、特別にインフレに対応する仕組みを作っている保険以外はインフレにとても弱いです。長期間後の保険金額を現時点で決めてしまうので、物価が上がっても保険金額は変わらないからです。
例えば今は1日10,000円のお金を支払えば豪華な部屋に入院できるとした場合、物価が1.5倍になれば15,000円支払わないと同じ部屋に入院できません。物価が2倍になれば20,000円支払わないと同じ部屋に入れません。将来、物価が2倍になった時、今の10,000円は将来5,000円相当の価値しかなくなります。
長い期間では物価が1.5倍、2倍になる可能性も
1年や2年で物価が1.5倍、2倍になる事は経済の混乱がない限り通常ありませんが、30年、40年と長い期間を考えると毎年1%~2%の間で物価が動けば将来物価が1.5倍位になることは普通に考えられます。
一般的な保険では予定利率は契約時に固定され、保険金額はインフレに伴って増えることはないため、インフレにとても弱いです。契約者配当があったとしても保険金額の不足分を補うほどの配当を見込みづらいのではないでしょうか。
インフレ時の保険見直しに制約
インフレが起きた場合に、保障内容が不足する場合、保険の見直しを考えることになります。その場合、貯蓄が付いていると途中解約で解約返戻金の問題も出てきますので、損をする場合もあります。
保険がインフレに弱い金融商品であるために、保険に貯蓄を組み込んでしまうと、インフレ発生時に保険の見直しがしづらくなり、結果的に貯蓄も効率的に行えないということになります。
保険会社の破綻リスクがある
保険会社も民間の会社なので破綻のリスクがゼロというわけではありません。2008年のリーマンショックのように世界経済を揺るがすようなショックが日本国内に及ぶ場合も考えられますし、日本の財政状況の悪化を背景に国内債券市場が荒れて保険会社の資産運用に影響を及ぼすリスクも考えられます。
保険会社が破たんした場合、生命保険契約者保護機構により保険の契約者の保護が図られますが、貯蓄性が高く、契約期間が長い保険では保険金額が大きく下がる可能性もあります。
保険会社に全て貯蓄を任せてしまうとリスクの分散という観点からも問題です。
貯蓄部分が保険部分に影響される場合がある
貯蓄性がある保険には貯蓄相当部分が保険相当部分の影響を受ける場合があります。つまり、契約内容が、保険事故に該当する給付金を受け取っていない場合は給付金(ボーナス、お祝い金)が支払われるというような場合です。
事実上貯蓄とは言えないような気がしますが、入院などの保険事故の有無によって、給付金の額が変わってしまうので、ライフプラン上当てにしづらい扱いづらい貯蓄となります。このようなタイプの保険は貯蓄としては使いづらいと思います。
なお、健康かどうかでボーナスがある場合、当然ボーナスを支払うためのお金も保険料に含まれていて、保険全体で見れば保険会社が行う資産運用も考慮した上で、保険会社が損しないように出来ています。
また、保険を解約すれば当然貯蓄部分も解約なので保険と貯蓄は一蓮托生です。セットになってしまっています。
保険で貯蓄をするメリット
保険で貯蓄をしてはいけない理由として保険で貯蓄をするデメリットを強調しましたが、保険で貯蓄をするメリットももちろんあります。ただ、資金の動かしづらさ、自由度の低さに勝るメリットではないと考えられます。
- 強制的に貯蓄される
- 資産運用能力を利用できる
強制的に貯蓄される
保険を失効させないためには毎月あるいは毎年定期的に保険料を支払う必要があります。自分で貯蓄をする場合、計画的に行わなければなりませんが、保険に加入していれば保険料を支払うだけである程度の貯蓄が行えます。これは貯金という意味ではメリットです。
資産運用能力を利用できる
保険で貯蓄をする場合、保険会社の高い資産運用能力を活用できるということはメリットです。ただし、資産運用能力を高めるための人件費や設備投資費用などのコストがかかってくることも踏まえると、得なのか損なのか場合によりけりということになります。
専業のプロの運用能力を利用できる
保険会社が行う資産運用は、投資を仕事にしている人たちが行うため、投資の初心者が行う資産運用よりは高い成果を挙げられる可能性が高いとみられます。
情報収集能力が高い
保険会社の資産運用では投資に関する情報を集めるために相当なお金を使っているため、投資に関する情報収集能力が高いです。情報端末、リサーチなど相当なお金がかかっています。
個人が買えない金融商品が買える
機関投資家である保険会社は個人投資家では通常購入できないような金融商品を購入できます。個人投資家が投資する金融商品よりも投資効率が高い金融商品に投資できる場合があり、高い成果を挙げられる可能性が高まります。
まとめ
貯蓄は保険ではなく、投資・資産運用で
保険を貯蓄に活用することはできますが、保険会社にお金を預けてしまうことになるなど自由度が下がります。そのため、保障は保険を利用しても、貯金は保険ではなく普通に投資や資産運用を行いましょう。