住宅ローンの金利が上がることに備えておく
記事作成日:2016年6月27日
最終更新日:2022年7月18日
日本では長い間低金利が続いていますが、住宅ローンを借りる場合には全期間固定金利の場合を除いて金利が上がっても大丈夫か検討してから借りることが重要です。変動金利や一定期間固定金利の住宅ローンを借りる場合、最初の返済額だけを見て返せるかどうかを判断してはいけません。金利が上がって返済額が増えても家計に問題はないか確かめることが重要です。
2000年代以降長引いたデフレや2008年の世界金融危機(リーマンショック)などから、日本銀行はゼロ金利政策、量的緩和政策、マイナス金利付き量的・質的金融緩和、長短金利操作付き量的・質的金融緩和など実施し、日本では異例の超低金利の状況が続いています。今まで金利が上がらなかったからと言って将来も上がらないわけではありません。金利は突然上がることもあるので住宅ローンを借りている場合は金利が上がっても大丈夫か考えておく必要があります。
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金利は上がらないと思い込まない
2000年頃からの日本の過去の金利の推移を見ると長期的に低下傾向にあり、かつとても低い水準に抑えられています。そのため、住宅ローンはかなり低い金利で借りることができます。今まで長い間金利は下がり続けてきたので、金利はもう上がらないのではないかと思ってしまうかもしれませんが、金利が上がらないと思い込んで住宅ローンを借りるのはとても危険です。
金利は上昇することもある
市場金利は上昇することがあります。日本も例外ではありません。一般に均衡的な金利の水準は「期待成長率」+「期待インフレ率」+「リスクプレミアム」として考えることができます。 日本では人口が減っていく中で成長率が高度成長期のように高まることは難しいので、「期待成長率」が大きく上がることはないかもしれません。
しかし、「期待インフレ率」は上がる可能性があります。日本銀行はインフレ目標を掲げて物価の上昇を目指していますし、円安になれば輸入する商品の値段が上がります。海外で原油価格が上がれば、日本でもガソリン価格や輸送費が上がります。また、極端に財政が悪化した場合などに政府が紙幣を大量に刷って乗り切ろうとするとお金の価値が下がりインフレになる場合があります。
「リスクプレミアム」とは、成長率やインフレ率以外の要素のことです。例えば日本が財政危機に陥った場合には、投資しても返ってこないリスクが高まるので、金利が高くないとお金を貸せない、お金を投資できないということになります。日本の財政が危ないと見られてしまうと、リスクプレミアムが高まり金利が上昇する可能性があります。
近年では、財政の悪化が続いていますが、日本銀行が大量に国債を買い入れることでリスクプレミアムの高まりは見られません。しかし、日本銀行が国債の買い入れを減らしていく過程や保有残高を減らしていく過程で、抑えられていた金利が上昇する可能性があります。
つまり、金利を動かす要因のうち、「成長率」が金利上昇要因になる心配は日本に限っては少ないかもしれませんが、「インフレ率」や「リスクプレミアム」は金利上昇要因になる可能性があり、警戒が必要です。
変動金利型や固定金利選択型は要注意
全期間固定金利型の場合は借りた後に金利が変動しても住宅ローンの適用金利は変化しません。一方、変動金利型や固定金利選択型は住宅ローンに適用される金利が変化するので金利動向に注意しなければいけません。
変動金利型や固定金利選択型は金利の変動に注意を払い、返済金額が変化することを常に頭に入れておかなければいけません。
金利が上昇した場合でも家計が耐えられるか
住宅ローンを借りる場合、全期間固定型以外の金利を選択する場合は、金利が上がることを想定して借りる必要があります。実際の借入金利だけで返済金額のシミュレーションをしていると、金利が上昇した場合に対応できなくなる可能性があります。
実際の借入金利での返済金額だけではなく、金利が上がった場合、例えば1%上昇した場合、2%上昇した場合、3%上昇した場合などのうように金利が上がった場合に返済金額がどう変わっていくのかをシミュレーションしておくことが重要です。
住宅ローンは1度借りてしまうと完済まで非常に長い時間がかかるので、いつ、どんなことが起こるか分かりません。金利が上がっても家計への影響が抑えられるように、家計への影響を事前に見積もっておく必要があります。
ぎりぎりまで住宅ローンを借りると金利上昇で破綻する
審査が通るか通らないかのぎりぎりまで住宅ローンを借りてしまうと、金利が上がった時に返済ができなくなってしまい家計が破綻してしまう可能性があります。余裕がない家計では、返済金額が増えると収支のバランスがすぐに崩れてしまいます。
全期間固定金利型で返済金額が固定されている場合は金利上昇による影響はありませんが、変動金利型や固定金利選択型の場合は、金利が上昇しても大丈夫な範囲で住宅ローンを借りるようにしなければいけません。
金利上昇でも耐えられる借入金額にする
将来の金利が上がるか下がるかは予測が難しいです。住宅ローンは10年、20年の付き合いになりますが、将来の世の中がどのように変化し、経済・社会がどのようになっているか正確に予想することは困難です。誰にも未来の事は分からないのです。一応、もっともらしい考え方、当たっていそうな予測というのは世の中にもたくさんあるのですが、当たるとは限りません。
住宅ローンを借りる時は、最低でも住宅ローンの適用金利が3%程度上昇しても、家計に問題がないことを確認することが大切です。
もし、3%程度金利が上昇して返済金額が増えた場合に、家計のバランスが大きく崩れる場合には住宅ローンの借入金額を見直した方が良いです。できれば4~5%住宅ローンの適用金利が上昇しても家計に全く問題がないようにしておくことが理想です。なお、実際に財政危機が発生した場合に、3~5%程度の金利上昇で済むとは限らないのでご注意ください。
なお、金利水準についてですが、日本では2000年代は長期金利(10年国債利回り)が1~2%を中心に推移したので2%くらいの上昇は普通にあると考え、少し余裕をみて3%は最低でも金利上昇の可能性を考えた方が良いとして3%としました。また、先進国を中心とした過去の内外の長期金利、経済成長率、インフレ率なども考慮しています。もちろん、3%上昇まで備えているから安全と考えるのではなく、最低限備えておくべき金利上昇幅であって、更に余裕があるとなお良いと言えます。
また、5%以上金利が上昇するような場合は、日本という国自体にとって異常事態である可能性が高いです。そのため、住宅ローンの金利を心配している場合ではなくなっている可能性が高いため、とりあえず5%の上昇まで耐えられれば個人の家計としては問題が少ないと考え、5%まで想定すればとりあえず良いのではないかとしています。
低金利の時には全期間固定金利型への借り換えも検討する
全期間固定金利型は変動金利型や固定金利選択型と比較すると金利水準が高いため、低金利が続いた場合には損をします。しかし、金利上昇リスクに備えたい場合には、全期間固定金利型への借り換えが有効です。
特に金利水準がかなり下がっている場合には、全期間固定金利型の金利水準もそれなりに下がっているので、変動金利型や固定金利選択型とはそれほど変わらない金利水準で借りられる場合もあります。
大きな金利上昇に家計が耐えられない可能性が高い場合には、多少返済金額が増えても、金利を固定してしまうという考え方も有効です。
ただし、金利が上がってから全期間固定金利型に変えようという考えは要注意です。金利が上がり始めてから借り換えるのでは遅いからです。
まとめ
- 低金利が続いているからといって金利が上がらないと思い込んでしまうことはとても危険です。
- 住宅ローンを借りる場合には、金利が上昇しても家計に問題がないかを検討してから借りるようにしましょう。最低でも住宅ローンの適用金利が3%程度上昇しても大丈夫かどうか確認しておくことが大切です。