自動車の残価設定ローンの特徴とメリット・デメリット
記事作成日:2016年5月9日
最終更新日:2022年7月4日
自動車を購入する場合は、全額お金を用意する場合もありますが、自動車ローンを借りる場合があります。自動車ローンの中には、残価を据え置くことができる残価設定ローン(残価設定型ローン、残価設定型クレジット)があります。残価設定ローンのメリットは最終回以外の毎月の支払い金額が抑えられるということがあります。一方で、残価設定ローンのデメリットは、総支払金額が多くなってしまう場合があるこなどです。
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残価設定ローンとは
残価設定ローン(残価設定型ローン、残価設定型クレジット)とは、自動車を購入する際にローンの期間の満了時点で予想される車の価格分(残価)の支払いを据え置いて、残価以外の残った部分を分割して返済するローンです。ローンの満了時点の支払いの最終回で、据え置いた残価分を支払うことになりますが、車を返すことで精算するか、一括・分割で返済することになります。
車を返却する場合、あらかじめ決められている走行距離や車の状態などの条件を満たしていないと、追加で精算のお金を支払わないと完済とならない場合があります。
残価設定ローンの特徴・メリット
残価設定ローンの特徴やメリットについてです。
残価設定ローンは借入期間の終了時の選択肢が豊富
残価設定ローンは最初の契約の時点で設定した借入期間が満了した時点で次のような選択をすることができます(ただしローンによって選べない場合もあります)。家族やライフスタイルの変化、家計の状態に合わせて車を返すか、残債分を支払って車の所有権を獲得するかを選ぶことができます。
- 同じ販売店で新車に乗換え(精算が必要な場合も)
- 車を返却(精算が必要な場合も)
- 残価のローンを一括返済
- 残価のローンを更に分割で返済
同じ販売店で新車に乗換え
残価設定ローンの支払期間の満了時点で、残価分のローンの支払いをしないで、同じ販売店で新車に乗換えることができます。これは、今乗っている車を返却して、新しい車を自動車ローンで新たに購入するということで、新しい車に乗換えた場合、新車のローンの返済が新たに発生します。ローン期間の満了期間ごと3~5年の間隔で新車の購入をすることになるため、かなりの贅沢だともいえます。
走行距離が指定されている距離よりも長かった場合や、事故などによって修理した履歴がある場合には、当初設定していた残価を下回る査定金額となり、精算(追加でお金の支払い)が必要になる場合があります。
車を返却
残価設定ローンの支払期間満了の時点で、残価分のローンの支払いをする代わりに車を返却することで返済完了とすることができます。別途新しい車を購入しなければ自動車ローンの支払いが終わります。ただし、車も無くなります。
走行距離が指定されている距離よりも長かった場合や、事故などによって修理した履歴がある場合には、当初設定していた残価を下回る査定金額となり、精算(追加でお金の支払い)が必要になる場合があります。
残価のローンを一括返済
通常は残価設定ローンの支払いの最終回に、残価分のローンの支払いを一括ですることになっています。特に乗り換えや返却をしないのであれば、残ったローン金額を一括で支払い完済することになります。この場合、車は自分の所有物になり、ローンも完済しているので支払いは無くなります。ただし、残価分のローンを返済するためにまとまったお金を用意しなければいけません。
車を丁寧に扱っていて、状態が良く事故もなかった場合には、残価以上の価格で買取り・下取りをしてもらえる場合があります。その場合には、車の返却を選択すると、残価を上回る部分が精算されない場合があるため、一括返済をして買取り・下取りをすることで、残価を上回る車の価格分のお金を得ることができます。
残価のローンを更に分割で返済
残価設定ローンの支払い最終回には、残価分のローンの支払いを一括でする必要がありますが、一括で支払わないで残価分を更に分割(割賦)で支払うことが可能です。ただし、金利は見直される場合があるほか、分割で支払う期間が短くなり以前よりも毎月の支払金額が増える場合もあります。また、審査が通るのであれば銀行などから自動車ローンを別途借りて残価分を支払うということもできます。
毎月の返済金額が少なくなる
残価設定ローンは、残価分を支払期間の満了時点まで据え置くため、残価分の返済がない分だけ毎月の元本の返済金額を抑えることができます。普通の自動車ローンと比較すると、利息は多めに発生しますが、最終回以外の毎月の支払金額は元本の返済が少ない分、少なくなります。毎月の支払金額が少ない分、車を買いやすく感じられます。
金利が低く設定される場合がある
残価設定ローンは、毎月の支払金額を抑えることで気軽に車を買ってもらおうという意図で提供されていますが、普通のローンよりも金利が低く設定されて更に買いやすくなっている場合があります。なお、残価分が据え置かれるため、金利が多少低くても利息は元が取れるという側面もあります。
一定の条件の範囲内で残価が保証される
残価設定ローンは、走行距離など一定の条件を満たしている範囲内であれば残価が保証されるため、条件を満たしている限り車の価格変化を気にする必要がなくなります。なお、想定されている距離よりも走行距離が長くなってしまった場合や、事故で車に損害が出た場合には残価の保障がされない場合があります。
残価設定ローンのデメリット
残価設定ローンのデメリットについてです。
残価にも利息がかかる
残価設定ローンでは残価分の支払いが支払期間満了時点まで据え置かれますが、据え置く残価部分にも当然に利息が発生します。借りたお金なので、利息が発生するのは当然なのですが、なんだかもったいなく感じる人がいるかもしれません。
総支払金額が多くなる
同じ期間、同じ金額で残価を設定しないローンと残価設定ローンを借りた場合、残価設定ローンは残価を設定しないローンと比べて残価分が支払い満了時まで据え置かれるため元本の減りが遅くなり、利息が多く発生します。利息が多くなるため、総支払金額は多くなります。
条件を満たせないと残価が保証されない
残価設定ローンは、走行距離など一定の条件を満たしている範囲内であれば残価が保証されますが、逆に言えば条件を満たせないと残価が保証されないということになります。走行距離が長くなったり、内装や外装が著しく痛んでしまったり、自分で勝手に改造してしまったり、事故で損傷したりすると残価が保証されない場合があります。
ただし、走行距離が長くなったり、事故で車が損傷したりすると普通のローンの場合でも下取り価格や買い取り価格の減額要因になるため、残価設定ローンだから特別走行距離を気にしなければいけないという訳でもありません。
他の販売店で買い替えがしづらい
残価設定ローンを借りていても、通常は車を売却したお金や手持ちのお金でローンを一括返済することができるのであれば、購入した販売店以外の販売店で車を売却して新しい車に買い替えることができます。しかし、残価設定ローンは残価が据え置かれて元本の減りが遅くなるため、残高が減りづらくなります。
そのため、下取り価格や買い取り価格がローンの残債に足りなくなってしまう場合があります。その場合には、自分で足りない分を支払わないと買い替えができなくなってしまうため、普通の自動車ローンよりは、少し買い替えがしづらいといえます。
販売店で紹介されるローンはそもそも金利が高い場合も
車をローンで購入する場合には、販売店でメーカーが提供しているローンの紹介をされてそのまま購入ということになってしまいがちですが、販売店が紹介するローンを利用しなければならないということはありません。自動車ローンは銀行などでも借りることができます。職場の福利厚生制度などで、低い金利の自動車ローンを借りることができる場合があります。
販売店が紹介して自動車メーカーが提供している自動車ローンは、販売促進のため特別な低金利となっている場合がありますが、普通に銀行で自動車ローンを借りた方が低金利の場合もあることに注意が必要です。
残価設定は車種や車の色などによって変化する
残価設定ローンは、支払い満了時点で予想される残価分の支払いを据え置くローンですが、残価は将来の車の価格を予想して設定することになります。人気がない色、人気がないタイプなどは残価の設定額が相対的に安くなることがあります。残価(買取価格)を意識して、色などの選択に迷ってしまう場合があります。
残価設定ローンはどんな場合に有効か
残価設定ローンはどのような場面で活用できるのか、有効なのかについてです。
一見支払いが楽そうでも実は違う
残価設定ローンは残価分の据え置きによって毎月の支払金額が抑えられるため、支払いが楽に見えますが、総支払金額は残価を据え置かない場合よりも多くなってしまい、長い目で見れば家計をより圧迫してしまうことが多いといえます。そのため、同じ金利であれば残価設定ローンを選ぶと損になります。
低金利で総支払金額が膨らまないなら利用価値あり
残価設定ローンが普通のローンよりも低金利で、残価設定にしない場合と比べて総支払金額が膨らまない場合は残価設定ローンを選択しても問題はありません。ただし、支払期間満了時に慌てることがないように十分に一括払いのお金を貯めておくことが重要です。再度分割払いにしてしまうと、また利息が発生してしまうからです。
短期間だけ車に乗りたい場合も利用価値あり
残価設定ローンの期間だけ車に乗りたいという場合には、残価設定ローンが有効であるといえます。残価設定ローンの支払いの最終回で残価分の一括返済ではなく車の返却をすればよいからです。乗りたい分だけお金を支払うという意味である意味合理的な選択になる場合もあります。
短期間で車を乗り換えたい場合
3~5年の短期間で車を乗り換えたい場合にも、残価設定ローンが有効な場合があります。残価設定ローンの支払期間の満了時点で新しい車に乗換えることができるからです。ただし、3年から5年の間隔で新車を購入していることになるため、自動車に相当なお金をつぎ込むことになります。短期間で頻繁に車を買い替えると家計の負担が増えるためお勧めできません。
まとめ
- 残価設定ローンは、支払期間の満了時に想定される残価分の支払いを据え置くローンです。残価設定ローンのメリットは、金利が低く設定される場合があることや、最終回以外の毎月の支払い金額が抑えられるということです。
- 残価設定ローンのデメリットは、総支払金額が多くなってしまう場合があること、車の乗り方や扱い方によっては残価が保証されず精算を求められる場合があることです。