貸与型奨学金は将来の返済能力が分からず返済できないリスクも
記事作成日:2018年3月31日
最終更新日:2022年7月7日
貸与型奨学金は将来返済をする義務がある奨学金で、実態は借金です。しかし、貸与型奨学金は大学などに入学する前にいくら借りるかどうかを決めることになり、その時点では借りた本人の返済能力はなく、将来の返済能力がどれくらいあるのかも分かりません。将来、どのような働き方をするのか分からず、何らかの事情で働けなくなる可能性、思ったような収入が得られない可能性があることを理解した上で、利用するかどうか慎重に考える必要があります。
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奨学金は借りる時点で本人の返済能力が問われない
通常のローンは本人の返済能力の裏付けがないと審査に通りません。住宅ローンを借りる場合には、収入や勤務先、勤続年数などに基づいて審査が行われます。また、土地や建物は担保となり抵当権が設定されます。カードローンやキャッシングを借りる場合でも、年収が問われます。
しかし、貸与型奨学金は大学などに入学する時点で借りることになります。借りる本人はまだ働いておらず、どのような職業につくのかもわかりません。返済能力は全く未知数なのです。機関保証・人的保証による保証制度はありますが、本人の返済能力が問われないまま借りられてしまうのです。
奨学金は将来どうなるかわからないため返済できるかリスクがある
奨学金は借りる時点では大学などの入学前で、働いていません。また、大学などの入学前なので家計管理の経験もないことがほとんどです。将来どうなるのか全く分からない時点で借りることになるため、どんな仕事に就くのか、どの程度収入が得るのか全く分かりません。どのくらいの返済金額なら負担感が少ないかについても感覚的にわからないのです。
何らかの事情で大学などを卒業した後に働けない場合、収入が少ない場合には、奨学金の返済で苦労することになります。もちろん返済が困難な場合の支援制度として、返済金額の減額、返済期限の猶予、返済の免除などの制度がありますが、認められない場合もあります。
収入を安定的に得るということは簡単なことではない
奨学金を借りる時点では大学を卒業した後、就職して働けば収入を得られると考えますが、安定的に収入を得るということは簡単なことではありません。
就職できるかどうか
まず、就職できるかどうかという問題があります。大学在学中に、大きなけがをしてしまったり、精神的に病んでしまったりしたような場合は、思ったように働けなくなる可能性があります。親の介護が必要になったなど、家庭の問題で働き方を工夫しなければいけない場合もあります。
また、世界的な不景気や金融危機で、日本の景気が後退し、就職氷河期が訪れてしまう可能性があります。働くことや収入は本人の問題、自己責任だと言われることが多いですが、景気の悪化によって求人が少なくなった場合、就職できなかった人がいたとして本人だけの問題とは言い切れない部分があります。正社員ではなく非正規社員として就職を強いられる場合もあり、雇用が不安定になってしまうこともあります。
働き続けられるかどうか
就職することができたとしても、働き続けることができるかという問題もあります。例えば、過重労働やサービス残業などを強いるブラック企業に就職してしまった場合は、心身を病んでしまうことがあり、辞めた方が良いこともあります。また、奨学金の返済を抱えていると退職しづらくなってしまい、人生が狂ってしまうこともあります。
また、就職ができても仕事内容があっていない、人間関係が悪い、待遇が良くない、やりたいことが変わったなどの理由で仕事を続けるのが難しい場合があります。
収入は十分確保できるか
奨学金の返済にあたって、収入が十分確保できるかという問題もあります。就職するだけなら何とかできるかもしれませんが、奨学金の返済をした上で、文化的で健康な生活を送れるだけの収入(給与)を得られるとは限らないのです。
世の中には非常に待遇が悪い仕事もあって、奨学金の返済をしてくだけの十分な収入が得られず、奨学金を抱えていると生活を送るのが苦しい場合もあります。
貸与型奨学金を借りるのは慎重に
貸与型奨学金を借りる場合は、本当に借りてよいのか特に慎重に考える必要があります。金銭感覚が十分養われていない、家計管理の経験がない、将来の収入がどうなるかわからないというような状態で多額の借り入れを行うことになるため、慎重にも慎重を期す必要があります。なるべく借りないで何とかする、借りる金額をできるだけ少なくするなどする必要があります。
まとめ
- 貸与型奨学金は将来返済をする義務がある奨学金です。しかし、貸与型奨学金を借りる時点では、借りる本人は働いておらず、将来の返済能力も未知数です。
- 奨学金を借りて大学などを卒業した後に、病気やケガなど何らかの事情で働けなくなってしまう可能性、ブラック企業に就職して働き続けられなくなる可能性、収入が少ない可能性などがあるため、奨学金を利用するかどうかは慎重に考えなければいけません。また利用する場合も借りる金額はなるべく抑えるに越したことはありません。