高等専門学校(高専)のメリットとデメリット
記事作成日:2018年1月12日
高等専門学校(高専)のメリットとデメリットについてです。高等専門学校のメリットは、5年一貫教育で、専門的な職業教育を受けることができるということ、就職を希望した人の就職率が良いということなどが挙げられます。一方で、高等専門学校(高専)のデメリットや注意点としては15歳の時点で専門を決めることになるため職業や進学の選択肢を狭めてしまう恐れがあること、修業年限が5年と変則的であることなどがあります。
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高等専門学校(高専)入学・卒業のメリット
高等専門学校(高専)に入学して卒業することのメリットについてです。
高等専門学校(高専)では専門的な内容を学べる
高等専門学校(高専)では、工業あるいは商船の分野に関して専門的な教育を受けることができます。工業や商船の分野に関心がある場合には、学ぶことに対する意欲を維持しやすいと考えられます。
高等専門学校(高専)は就職状況が良い
高等専門学校(高専)を卒業した人の就職状況は良い傾向があります。専門性が高い人材であると認識され、関係が深い分野の企業に就職がしやすいためです。
高等専門学校(高専)の就職率
2016年度に大学等(大学、短期大学、高等専門学校、専門学校(専修学校専門課程))を卒業した人について、2017年4月1日時点での就職率(就職を希望する人に対する就職した人の割合)を文部科学省・厚生労働省がサンプル調査した結果をみると、高等専門学校(高専)は100%となっています。
なお、就職率は就職希望者数が母数となりますが、就職希望者数の部分をある程度調整することが可能であるため、就職率については参考と考えておいた方が良いということに注意が必要ですが、高等専門学校は就職の面では恵まれている可能性があります。
学校等 | 就職率 |
---|---|
大学 | 97.6% |
短期大学 | 97.0% |
高等専門学校(高専) | 100.0% |
専門学校 | 96.1% |
(注)2016年度卒業者の2017年4月1日時点の数値。就職率は就職希望者に対する就職者の割合です。
(出典)文部科学省・厚生労働省の平成28年度大学等卒業者の就職状況調査(大学等卒業者の就職状況調査(文部科学省発表分)・大学等卒業者の就職状況調査(厚生労働省発表分))を基にfromportal.comの担当者が作成
高等専門学校(高専)は実習・実験・研究のための施設や設備が充実している
高等専門学校(高専)は高等教育機関に位置付けられますが、専門的な知識や技能を身に付けるため、実習・実験・研究のための施設や設備が充実しています。教員として教授や準教授などが配置され、きめ細かな専門的な指導を行うことが特色となっています。
高等専門学校(高専)は大学受験がない
高等専門学校(高専)は5年間の一貫教育を行う高等教育機関(商船系学科は5.5年)で、大学受験がありません。大学受験のプレシャーを受けることなく学業に専念することができるため、学びやすい環境であるとも言えます。なお、大学に編入学する場合には、編入学のための試験勉強に取り組む場合もあります。
高等専門学校(高専)入学・卒業のデメリットや注意点
高等専門学校(高専)に入学して卒業することのデメリットや注意点についてです。
途中で学ぶ分野の関心が薄れると留年や中退につながる
高等専門学校は、工業や商船の分野の専門的な教育を行います。工業や商船の分野への関心が高い間は学ぶ意欲が高まりやすいですが、何らかの理由で工業や商船の分野に対して関心や興味が薄れてしまうと学ぶ意欲が低下してしまい、留年や中途退学(中退)につながる恐れがあります。
他の学校で学び直す場合には、同程度の学歴を得るまでに通常よりも多くの年数がかかってしまうこともあります。
高等専門学校(高専)の中退率・休学率
1年間に高等専門学校を中退した学生の割合(中退率、退学割合、退学率)は2012年度のデータで2.5%となっていて、高等専門学校の中退率は大学学部・短大並みとなっています(参考:大学学部・短大は2.6%)。
一方、大学を休学していた学生の割合(休学率)は、2012年度末(2013年3月末)時点で0.8%(参考:大学学部・短大は2.0%)となっています。中途退学は年度を通じた1年間のデータ、休学は年度末時点の一時点のデータです。
学校 | 中退割合 (中退率) | 休学割合 (休学率) |
---|---|---|
高等専門学校(高専) | 2.5% | 0.8% |
大学学部・短大 | 2.6% | 2.0% |
(出典)文部科学省の学生の中途退学や休学等の状況についてを基にfromportal.comの担当者が加工して作成
高等専門学校(高専)は15歳の時点で進路選択が必要になる
高等専門学校(高専)は中学校を卒業した15歳の時点で進学することが一般的です。一方で、高等専門学校は工業や商船の分野を専門的に学びます。専門性が高まるがゆえに就職先も専門性と結びついたものになりがちです。
高等専門学校で学ぶことによって特定の分野の専門性は高まりますが、知識・技能などが偏ってしまい、将来の進学や就職の選択肢の幅を狭めてしまう恐れがあります。
義務教育を修了した15歳の時点では、十分な判断材料を持って特定の分野の専門性を高めるという選択をすることが困難である場合もあります。
高等専門学校(高専)は専門分野を重点的に学ぶため知識が偏る可能性がある
高等専門学校(高専)では、数学、物理、化学、国語、外国語、歴史、地理、政治経済、美術・音楽、保健体育などの一般科目を学びますが、機械、電子・電気、情報、化学、生物、建設、建築、商船などに関する専門的な科目である専門科目を学びます。
高等専門学校は高等学校よりは専門的な分野を学ぶ時間が相対的に多くなるため、専門性は深まりますが知識の偏りが生じてしまう可能性があります。
高等専門学校(高専)卒業は大学卒業には及ばないと考えられている
高等専門学校(高専)卒業は年齢的には大学の2年次修了に相当します。高等専門学校は高等教育を行う機関ではありますが、大学と比べると教育期間が2年短いため、学歴の面では大学卒業には及ばないと考えられます。年齢的には、高等専門学校卒業は、高等学校を卒業した後の短期大学卒業(2年制の場合)に相当します。
なお、高等専門学校卒業後に専攻科に進学する、あるいは大学に編入学することによって学士の学位を得られる場合があります。
高等専門学校(高専)の認知度が高くない
高等専門学校(高専)全体の校数、受け入れ定員の規模がそれほど多くないこともあって認知度が高くないということも高等専門学校の課題であると言えます。
ロボットコンテスト、いわゆるロボコンなどを通じて高等専門学校はある程度認識されていますが、5年間という変則的なカリキュラムであることも相まって、学習内容や専門性のイメージが湧きづらいといえます。
高等専門学校(高専)は人間関係が濃くなりがち
高等専門学校(高専)は学年次が低いうちは横断的なクラス編成が行われることがありますが、基本的には学科単位でクラスが編成されます。そのため、人間関係が固定化されやすく、濃くなりがちであると言えます。
相性が合って居心地が良い場合には、深みのある人間関係を形成することができますが、馴染めない場合には逆に人間関係が苦痛になってしまう恐れがあります。
高等専門学校(高専)の5年間というカリキュラムは変則的
高等専門学校(高専)は中学を卒業した後に入学し5年間学ぶことになります。中等教育後期である高等学校の3年間と高等教育の短期大学2年間あるいは大学の前半2年間を合わせた期間に相当します。
高等専門学校を卒業した時点は、短期大学を卒業する時点、大学の2年次の終了時点となり、日本の教育制度の中では変則的な位置づけとなります。高等学校を卒業して大学に進学する道とは年数がずれます。
大学に1年次から入学するため大学受験する場合は不利
高等専門学校(高専)に入学した後に、進路変更をして大学に1年次から入学したいと考えた場合には、高等専門学校を中退して高等学校卒業程度認定試験を受けるか、通信制・定時制高校を卒業するか、高等専門学校3年次修了によって高卒資格を得るかなどして、大学受験をすることになります。
高等専門学校を在学しながら大学受験をすることは通常想定されていないため、在学中は大学受験の準備をしづらく、周りの友人にも打ち明けづらいと考えられます。また高等専門学校の科目編成(カリキュラム)は通常の高等学校等は異なっていて、専門科目もあることから、大学受験に対応しづらくなっています。
そのため、高等専門学校に入学すると、1年次から大学に入学するために大学受験を行う場合に不利です。
高等専門学校(高専)で学んだ専門性が仕事と結びつかない可能性がある
技術の発展による求められる専門性の変化、学んだ内容と関係が薄い職業への就職、細分化された専門性などの要因によって、高等専門学校で学んだ専門性が、将来の仕事と結びつかず直接的に役立てることが難しい場合があります。
また、仕事で必要な知識や技能などは研修や仕事による実体験などを通じて学ぶことができるため、就職前に専門性が高まっていなくても、働き始めれば専門性を身に付けることができるため、就職前の段階では幅広い分野の知識や技能を身に付けた方が良いという考え方があります。
まとめ
- 高等専門学校(高専)のメリットは、専門的な職業教育を受けることができるということ、就職を希望した人の就職率が良いということなどが挙げられます。
- 一方で、高等専門学校(高専)に入学すると15歳の時点で専門を決めることになるため、視野が十分に広がらないまま、職業や進学の選択肢を狭めてしまう恐れがあることなどがデメリットです。また、高等専門学校(高専)の修業年限が5年と変則的であることもデメリットとなることがあります。