大学院修士課程・博士課程の中退理由(退学理由)
記事作成日:2017年11月27日
大学院を中退する理由(中途退学する理由)についてです。大学院の修士課程や博士課程を中退する理由として多いのは就職するためです。研究活動を続けているうちに、大学院で研究を続けるよりも、就職した方がいいと考えるようになるためとみられます。また、経済的理由や学業の不振、他の大学院などへの転学も理由として挙げられています。
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大学院修士課程(博士課程前期)の中退理由(退学理由)
文部科学省の学生の中途退学や休学等の状況についてによると、2012年度の大学院の修士課程(博士課程前期)における大学院生の中退理由は、国立、公立、私立別で次のようになっています。
理由 | 国立 | 公立 | 私立 | 合計 |
---|---|---|---|---|
学業不振 | 7.0% | 5.3% | 8.6% | 7.6% |
学校生活不適応 | 0.7% | 1.1% | 2.5% | 1.5% |
就職 | 34.3% | 17.3% | 17.7% | 26.1% |
転学 | 5.9% | 4.2% | 5.0% | 5.4% |
海外留学 | 0.6% | 0.4% | 1.0% | 0.7% |
病気・けが・死亡 | 6.2% | 7.4% | 9.0% | 7.5% |
経済的理由 | 10.2% | 14.1% | 15.4% | 12.7% |
その他 | 35.2% | 50.4% | 40.8% | 38.5% |
合計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(注)国立・公立・私立・合計の各列は列全体(上下)を足すと100%となるように作成。
(出典)文部科学省の学生の中途退学や休学等の状況についてを基にfromportal.comの担当者が加工して作成
大学院修士課程の中退理由は就職が多い
「その他」を除くと、最も中退理由(退学理由)として多く挙げられているのが就職です。大学院修士課程全体では中退理由の約4分の1を占めています。特に国立の大学院で割合が高くなっています。
大学院に進学したけれど、研究が自分に合わないと感じる、研究よりも働きたい、研究職以外の職種に就きたいと考えるような場合は、大学院の途中で退学して就職するということが考えられます。
就職したいと考えているのに、大学院にとどまり続けると年齢が上がってしまい、就職先の選択肢が狭まってしまうので、純粋に研究を続けたいわけでなければ中退して就職した方が就職活動がしやすい場合があります。これは理系・文系を問わず当てはまります。
大学院修士課程の中退理由として経済的理由も多い
大学院を中退する理由として経済的理由も多く挙げられています。大学院修士課程全体では、中退理由の1割強となっています。私立でやや経済的理由の割合が多くなっています。
大学院で学ぶためには授業料などで少なくとも数十万円の学費の支払いが必要となります。
大学院の修士では既に大学4年間の学費を支払っているため、学費負担は相当なものになっています。大学院になるとお金が足りなくなる、負担に耐え切れなくなるというようなこともあり、お金がないからやむを得ず中退するということが考えられます。
大学院修士課程の中退理由では学業不振も比較的多い
大学院修士課程を中退する理由として学業不振も比較的回答があり、1割弱となっています。大学生としての学生生活と、大学院生としての学生生活は性格が大きく異なっていて、大学院生は研究という色彩が強くなります。そして、より高い専門性が求められるようになります。
大学院に進学したけれど、内容が高度・専門的でついていけないと感じる、難しいと感じる、研究で成果を出せそうにないといったように感じることがあります。大学の学部生の感覚で大学院に進学すると研究室での研究活動についていけないということがあるとみられます。
修士課程の中退理由としても病気やけがも一定の割合で存在
大学院修士課程を中退する理由として学業不振と同じ1割弱程度、病気やけががあります。純粋な病気やけがの場合もあると考えられますが、大学院の研究室での人間関係や研究生活で、精神的に滅入ってしまうというような場合もあると考えられます。大学院の研究室での人間関係や研究活動は独特な場合があり、馴染めないと感じるようなことがあるからです。
大学院での研究生活では、教授と意見が合わず対立してしまうと、研究室内での研究活動に支障が出たり、人間関係の面で孤立してしまったりする場合があります。合ってはならないことですが、研究成果を他の人に取られてしまうというようなこともあります。
通常の病気やけがでない場合で、大学院を中退せざるを得なくなるリスクがありますが、研究活動や研究室が居心地よいかどうかということも大学院に入学する前に十分調べておくことが重要です。
修士課程で他の大学院などに転学する人もいる
大学院修士課程を中退する理由として、転学も百分率で1桁台半ばですが、一定の割合で存在します。研究内容が合わなかった、教授と合わなかった、別にやりたいことが見つかった、などの場合が考えられます。
大学院での研究内容は細分化されていて、一見自分がやりたいことだと思っていたけれど実は全然違うことだったということも珍しくありません。
大学院に進学する前に、研究室の研究分野についてよく確認しておくことで、研究内容のミスマッチ(不一致)は防ぐことができます。また、研究室の教授などカギになる人物とよく話して人となりと確認しておくことが大切です。
大学院博士課程(博士課程後期)の中退理由(退学理由)
修士の場合と同様に文部科学省の学生の中途退学や休学等の状況についてによると、2012年度の大学院の博士課程(博士課程後期)における大学院生の中退理由は、国立、公立、私立別で次のようになっています。
理由 | 国立 | 公立 | 私立 | 合計 |
---|---|---|---|---|
学業不振 | 7.0% | 5.3% | 8.6% | 7.6% |
学校生活不適応 | 0.7% | 1.1% | 2.5% | 1.5% |
就職 | 34.3% | 17.3% | 17.7% | 26.1% |
転学 | 5.9% | 4.2% | 5.0% | 5.4% |
海外留学 | 0.6% | 0.4% | 1.0% | 0.7% |
病気・けが・死亡 | 6.2% | 7.4% | 9.0% | 7.5% |
経済的理由 | 10.2% | 14.1% | 15.4% | 12.7% |
その他 | 35.2% | 50.4% | 40.8% | 38.5% |
合計 | 100.0% | 100.0% | 100.0% | 100.0% |
(注)国立・公立・私立・合計の各列は列全体(上下)を足すと100%となるように作成。
(出典)文部科学省の学生の中途退学や休学等の状況についてを基にfromportal.comの担当者が加工して作成
大学院博士課程の中退理由も修士と同様に就職が多い
その他を除くと、博士課程の中退理由(退学理由)として最も多く挙げられているのが就職です。大学院博士課程全体では中退理由の2割強となっています。特に国立の大学院で割合が高くなっています。
修士課程を修了して修士号を取得しているため、民間企業で研究者として働くための十分な素質があると考えられます。博士課程で中退しても、修士号があるため専門的な人材であると評価されるため、研究などに関する仕事に就きやすいと考えられます。
また、研究に関する仕事以外の仕事に就職した場合には、年齢が上がるほど不利になることがあるため、研究を続けたいという意欲が失われてしまった場合は、できるだけ早く中退して就職した方が希望する仕事に就ける可能性が高まります。
大学院博士課程の中退理由として経済的理由も多い
修士課程と同様に博士課程においても、大学院中退する理由として経済的理由が1割弱挙げられています。
大学院の博士課程に在籍している間の収入源としては、日本学術振興会の特別研究員制度による研究奨励金(いわゆる学振)、TA(ティーチングアシスタント)やRA(リサーチアシスタント)、アルバイト、奨学金(貸与型の場合は借金)などがありますが、大学(通常4年)、大学院修士課程(通常2年)と続いて更に博士課程となると金銭的な負担も重くなってきます。
年齢も24歳~27歳前後となりますが、親の支援を受けるとしても、親にとっての負担は重くなります。
そして、博士号は博士課程の標準的な取得期間とされる3年間で取得できるとは限らず、研究成果の状況によっては、4年以上取得まで時間が必要な場合もあります。その場合は更に負担が高まります。
世界的には博士号取得者は高度な専門性を有する人として、仕事においても高く評価される場合が多いのですが、日本では博士号は民間企業ではあまり評価されない場合があります。奨学金を借り過ぎてしまうと、博士号取得後に収入が安定しない、低収入となってしまうなどの事情により返済で苦しむ可能性があります。
博士課程では学業不振や学校生活不適応の理由は修士より少ない
大学院博士課程の中退理由として学業不振や学校生活不適応を挙げる人は修士の場合よりも少なくなります。修士課程で研究生活を送ってきた人で、研究をさらに続けたいと思う人が博士課程に進むので、当然と言えば当然の結果となります。
中退理由にはその他の理由も多い
大学院博士課程の中退理由としてその他の回答も多くなっています。様々な要因が考えられますが、研究に興味を失ってしまった、教授や研究室の人との人間関係が悪かった、論文をかける気がしなかった、博士号を取るまで長期間かかると感じてしまった、他にやりたいことができた、家族など個人的な事情などが考えられます。
まとめ
- 大学院の修士課程を中退する理由(退学する理由)として多いのは、就職するためです。他には経済的理由、学業不振などがあります。大学院を中退しても大学は卒業しているので研究職以外にも就職しやすいことが背景にあるとみられます。
- 大学院の博士課程を中退する理由(退学する理由)として多いのは、修士と同様に就職するためです。