冠婚葬祭互助会が成り立つ仕組みとリスク
記事作成日:2016年10月25日
婚礼や葬儀のサービスを割安に受けることができるとされている冠婚葬祭互助会がなぜ成り立つのかということを冷静に考えてみれば互助会に入るべきかどうか検討の参考になります。互助会を運営している業者はなぜ互助会を運営しているのでしょうか?純粋な助け合いの精神と言える場合もあるのかもしれませんが、原則として運営することで経済的なメリットがあるからです。経済的に損をするのであれば、互助会という仕組みは徐々に無くなっていくはずです。助け合いの精神というものが前提にあったとしても、業者は利益を上げられなければ市場から淘汰されていってしまいます。
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互助会は運営業者にとってどのような経済的な利益があるのか
互助会に入会すると、利用者がの側には婚礼や葬儀費用が割安で提供を受けられるというメリットがあるとされています。しかし、互助会を提供している業者が受け取った掛け金以上の割引を提供すると損が発生するため、経済的に互助会が成り立たなくなります。
そのため、業者は何らかの形で互助会を運営することによる利益をひねり出すことになります。考えられる仕組みには次のようなものが考えられます。(なお、実際に行われているという訳ではなく、仕組みの可能性です。)多くの互助会は、まっとうな経営努力によって運営されていると考えられますが、互助会の解約金などではトラブルが発生していることもあるため注意が必要です。
互助会で得た掛け金を資産運用して運用益を得る
互助会で得た掛け金は銀行の預金などとは違って婚礼や葬儀の前払い金なので、利息を付けて支払う必要がなく、役務を提供するまで資産運用を行うことができます。
掛け金を運用して運用益を得ることで運用益の範囲内で婚礼や葬儀を割引することができます。多くの互助会は資産運用の利益が互助会の運営にとって重要な資金源になっているとみられます。しかし、運用が失敗すれば互助会の運営が苦しくなります。
物価下落が発生すればより安くサービスを提供できる
互助会は前払い金である掛け金を支払った時点と、サービス(役務)を受ける時点がずれています。先に業者が掛け金を受け取って、その後に業者がサービスを提供します。
掛け金を支払う時点では20万円かかった費用が、物価下落によってサービス提供時に15万円で提供できるようになっていれば、物価下落分だけ安く提供できるため、割安にサービスを提供できます。しかし、物価は業者がコントロールできるものではないですし、物価が上がるとその分互助会の運営が苦しくなります。
計画的な業務運営で割安にしている
互助会で割安なサービスを提供できる仕組みとして業者が説明している例として、互助会によって安定的に婚礼や葬儀を行う人が出てくることになるため、仕入れや業務運営が効率化できるようになり、割安出来るというものがあります。
確かに互助会によって婚礼や葬儀の顧客の囲い込みが可能で、母数が集まれば婚礼や葬儀は一定範囲内の確率で発生するようになるため、業務の繁閑・凹凸を抑えて安定的に仕事(婚礼・葬儀)を受けることができます。
割引を考慮しても利益が出る価格設定にしている
互助会で割安と言っていても、実は割安ではないという可能性もあります。もちろん、業者が割引をしないのではなく、もともとの表示価格が高めに設定されているので、互助会の特典として割引をしても元が取れるような価格設定にしているということが考えられます。
婚礼や葬儀の価格は分かりづらく、「一式」の形でどんぶり勘定のような場合もあるため、価格設定が妥当なのかどうか判断が非常に難しく、利用者には分からない部分があります。単純にサービスの価格を他と比較して高くても、サービスの質が高いということであれば高い料金設定も合理的である場合もあります。
オプションや追加料金で元を取る
互助会が提供する婚礼や葬儀は実際に割安で提供されていても、互助会の掛け金で提供される以外の役務(サービス)で元を取る方法も考えられます。
互助会のプランでは最低限の部分しか用意せず、営業努力などによってオプションを選んでもらったり、互助会で賄われない部分について追加料金を請求したりして、トータルの金額で元を取るような場合もあります。
解約手数料で元を取る
互助会に入会していても、実際の婚礼や葬儀は別の業者で行いたいと考えて互助会を解約する人も一定数います。会員の引き留め方の強弱によっても解約率は変化すると考えられますが、どのような取引でも一定のキャンセルは付き物で、互助会でも一定の確率で解約が発生しています。
解約の時に解約金や解約手数料などを徴収することで、割安な役務の提供に充てていることも考えられます。解約金の範囲内で残っている会員に割安なサービスを提供すれば、互助会の元が取ることも可能です。
しかし、実際には互助会の解約の比率はそれほど高くないとみられること、高額な解約金や解約手数料を徴収するのは合理性を欠く場合があり難しくなっていることから、解約手数料をあてにした仕組みは機能しづらいと考えられます。
掛け金を流用する自転車操業状態
互助会の特典として割安な婚礼や葬儀を提供しているけれど、実際には業者が損をしてしまっているような場合、新規の会員の入会を促し、受け取った掛け金で割安な婚礼や葬儀を提供していることも考えられます。要は自転車操業状態です。
方式の1つとしては考えられますが、継続性がないため意図的に行っているようなところはないと考えられます。ただし、互助会の運営が苦しくなってきている時は、意図して行うわけではなくても、結果的に自転車操業のようになってしまう場合があるかもしれません。
実際はどうやって互助会が成り立っているのか?
互助会を取り巻く環境は厳しくなっており、倫理的に問題がある行為を行えば世間の非難を受けることになります。そのため、多くの互助会では正当な経営努力による運営が行われていると考えられ、掛け金による資産運用や業務効率化による経費削減で互助会の特典が提供されていると考えられます。しかし、資産運用に失敗し、運営が厳しくなっている互助会もあるとみられます。
冠婚葬祭互助会が抱えるリスク
冠婚葬祭互助会は婚礼や葬儀が割安になるなど何らかの形で会員に特典を提供しています。そして、特典を提供するために、資産運用を行ったり、業務運営の効率化を図ったりしています。しかし、資産運用に失敗したり、物価が上昇したりすると、特典を提供するための余力がなくなったり、コストが上昇したりして、互助会の運営が厳しくなる可能性があります。
特に資産運用を行うことが重要な資金確保の手段となっているような互助会は、資産運用の結果次第で運営が苦しくなることがあります。互助会は様々な会員保護の仕組みがありますが、リスクが無いわけではないため注意が必要です。
まとめ
- 冠婚葬祭互助会は業者の活動の一環として行われるため、運営する業者に何らかの利益がないと、やがて淘汰され消えていくと考えられます。
- 冠婚葬祭互助会では、顧客の囲い込みによる業務の効率的な運営や、預かった掛け金の資産運用などで、婚礼や葬儀が割安になる特典を提供しているとみられますが、資産運用に失敗すると互助会の運営が苦しくなることがあるため注意しましょう。