中等教育学校とは・特徴とメリットやデメリット
記事作成日:2018年5月6日
中等教育学校とは、中学校と高等学校の各3年間、合計6年間の教育を一貫した教育課程・学習環境で行う中高一貫教育を実施するための形態の1つです。中等教育学校は、中学校と高等学校を別々の学校ではなく1つの学校としたことが特徴で、中学校と高等学校で行われる教育を1つの学校として実施します。なお、中等教育とは初等教育と高等教育の間に行われる教育で日本では中学校と高等学校で行われる教育が相当します。
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中等教育学校の特徴
中高一貫教育が行われる
中等教育学校は、中学校と高等学校の教育を一貫して行うことが特徴です。中高一貫教育では、高校受験に追われず6年間ゆとりをもって学ぶことができること、6年間で計画的・継続的な教育カリキュラムを編成できること、6年間継続的に生徒の状態を把握し指導できること、6年の異学年での交流ができることが特徴です。
中等教育学校の目的と目標
中等教育学校の目的と目標については学校教育法に定めがありますが、基本的に中学校と高等学校の目的及び目標と同じものとなっています。ただし「一貫して施すこと」というところが中学校や高等学校と異なっています。中学校と高等学校の教育を一貫して行うということが中等教育学校の特徴なのです。
- 学校教育法第63条 中等教育学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達及び進路に応じて、義務教育として行われる普通教育並びに高度な普通教育及び専門教育を一貫して施すことを目的とする。
- 学校教育法第64条 中等教育学校における教育は、前条に規定する目的を実現するため、次に掲げる目標を達成するよう行われるものとする。
- 一 豊かな人間性、創造性及び健やかな身体を養い、国家及び社会の形成者として必要な資質を養うこと。
- 二 社会において果たさなければならない使命の自覚に基づき、個性に応じて将来の進路を決定させ、一般的な教養を高め、専門的な知識、技術及び技能を習得させること。
- 三 個性の確立に努めるとともに、社会について、広く深い理解と健全な批判力を養い、社会の発展に寄与する態度を養うこと。
(出典)学校教育法より数値の表記を一部変更するなどして引用
中等教育学校の教育内容
中等教育学校の教育課程については、前半3年間の前期課程は中学校の基準を、後半3年間の後期課程は高等学校の基準をそれぞれ準用することになっています。前期課程は中学校学習指導要領、後期課程は高等学校学習指導要領に基づく教育を行うことになります。
ただし、中学校と高等学校の6年間を活かして、計画的・継続的な指導を行うことになっています。また、6年間の期間を活かして特色がある教育を実施できるように、教育課程の基準の特例があります。
中等教育学校の教育の特例
中等教育学校では、中学校と高等学校の教育内容をお互いに移行したり入れ替えたりすること、中学校段階(前期課程)の特定の学年の指導内容を他の学年の指導内容に移行することができます。
また、中学校段階(前期課程)での選択教科の授業時数を増やしたり、高等学校段階(後期課程)の普通科の学校設定教科・科目の単位数を拡大したりすることができます。
前期課程を修了すると中学校卒業資格が得られる
中等教育学校は中学校や高等学校の制度と合わせる関係から、前半の3年間を前期課程、後半の3年間を後期課程と呼び、前期課程を修了すると中学校を卒業したの同じことになり、中学校卒業資格が得られます。そして、後期課程を修了し、中等教育学校を卒業すると高等学校を卒業したのと同じこととなり、高等学校卒業資格が得られます。
外部から途中で入学する生徒がほとんどいない
中等教育学校は中学校と高等学校を1つにした学校です。中学校と高等学校が分かれている中高一貫校は高等学校からでも生徒を受け入れることが多いですが、中等教育学校は基本的に途中での生徒の募集を行いません。設立直後で生徒がいない場合、限られた数の編入生を受け入れる場合は途中で入学する生徒がいますが、入学してからほとんど生徒の構成が変わらないのです。
高校受験がない
中等教育学校は1つの学校であるため中学校から高等学校に進学する時に行われる高校受験がありません。高校受験をしなくても中等教育学校の前期課程から後期課程に上がることができます。高校受験に追われることがないため、前半の3年間は高校受験を意識することなく、落ち着いて学ぶことができるのです。
学年段階の区切りを3-3年以外にできる
中学校と高等学校に分かれていると、学年の大きな区切りは必然的に中学校と高等学校の3年-3年になります。しかし、中等教育学校では中学校と高等学校が分かれていないため、独自の大きな区切りを設けて、効果的な教育課程を組み生徒の指導を行うことが可能です。
学校行事や生徒会活動などは基本的に全校合同で実施
学校行事や生徒会活動など、学校に関することは同じ1つの学校なので。前期課程の生徒(中学生に相当)と後期課程の生徒(高校生に相当)の全校合同で行われることになります。そのため、異学年の交流が図られ、社会性を身に付けやすくなる効果があります。特に高学年の生徒は成人に近くなるため精神的にも安定してくるため、精神的な教育効果があると考えられます。
中等教育学校のメリット
学力の面、生活環境の面、人間関係の面で中等教育学校にはメリットがあります。
高校受験の必要がない
中等教育学校のメリットの1つとして、高校受験が必要ないことが挙げられます。まず、高校受験がないことで高校受験に追われないで学校生活を送ることができます。じっくり学べますし、学業以外のことに打ち込むこともできます。人間関係も高校受験を機に変化することはありません。また、高校受験のための塾通いなどにお金や時間を割かなくてもよくなります。
特徴・特色ある教育が行われる
中等教育学校は途中で高校受験がなく6年間を活用して教育が行えるため、特徴・特色ある教育を行いやすくなります。
最も多くみられるのが、力向上についてで、先取り学習をしたり、理解度別に丁寧な指導をしたり、授業時数を工夫したりして、大学受験に対応しやすい指導を行う例が多くみられます。
また、授業内容においても本質的な理解が得られるよう丁寧に時間を割いて説明したり、実験・実習など体験型の学習を多く取り入れたり、学校行事を充実させたり、科学(サイエンス)教育や理数教育に力を入れたり、職業に関する理解などキャリア教育に力を入れたり、国際教育として語学などに力を入れたりしている場合もあります。
優秀な生徒が集まっている
中等教育学校は入学試験や適性検査などによって、入学者の選抜が行われます。公立の中等教育学校は学力検査ではなく適性検査となっていますが、学力がないと基準に達しないため、一定の学力水準にある生徒が集まることになります。そのため、恵まれた学習環境が形成されやすくなり、素行不良な生徒などがいる可能性が下がるということになります。
独自のカリキュラムや教材を活用して高度な授業が行われる
中等教育学校では、一定水準の学力の生徒が集まっていること、6年間で計画的・継続的な教育指導ができることから、高度な内容を指導しやすく、大学受験を意識した独自のカリキュラム・教材を用いた高度な授業が行われる傾向があります。通常の検定教科書だけではなく、難易度が高い教材や学校が独自に作成した教材を活用して授業が行われます。
また、先取り学習が行わることも多くみられます。例えば、中学3年生には高校1年生の内容を学習しはじめ、高校2年生の頃には高校の内容の学習をほぼ終え、高校3年生では大学受験対策中心の授業が行われることがあります。
大学への進学実績が期待できる
中等教育学校は、優秀な生徒が集められていて、生徒の多くが大学受験を意識しながら勉強に励むことなどから、大学受験に向けた意欲が高まりやすい環境です。また、中高一貫教育によって大学受験に対応した指導が行われます。そのため、大学への進学実績が良くなることが期待されます。ただし、学校間の差はあります。
6年間を使って継続的な生徒指導が行われる
中等教育学校は中学校と高等学校の間の断絶がないため、6年間で継続的な生徒の指導が可能となります。生徒が悩みや問題を抱えていても先生が把握しやすくなりますし、学年が変わっても先生の間で情報交換・情報共有がしやすいため、継続的できめ細かな生徒への指導が可能となります。
精神的に落ち着く高学年の生徒の良い影響を受けやすい
中等教育学校は前期課程の生徒(中学生に相当)と後期課程の生徒(高校生に相当)が同じ学校で過ごします。
前期課程(中学生に相当)の時期は反抗期・思春期と呼ばれることもあり、精神的に生徒が落ち着かない時期となりますが、後期課程(高校生に相当)の後半は成人に近づいているため、精神的に落ち着きが出てきます。
中等教育学校では落ち着いている高学年の生徒のよい影響を受けやすく、異学年交流によって社会性を養いやすいというメリットがあります。
6年間同じ環境で過ごすことができる
中等教育学校は6年間同じ環境で過ごすことになります。途中で学校や生徒の構成などが変わると環境が大きく変わることになり、環境変化に対応・適応することにもエネルギーが必要となります。
人間関係を新たに構築しなおすことは新しい出会いもありますが、ストレスや悩みの原因になることもあります。しかし、中等教育学校は6年間同じ環境で過ごせるため、落ち着きやすいのです。
高校受験がないため仲の良い友人ができやすい
中等教育学校は6年間同じ学校で過ごしますが、人生の多感な時期を同じ学校で過ごすことになるため、仲が良い友人を作りやすいと言えます。高校受験があると受験勉強で忙しくなりますし、精神的にも落ち着きません。また、高校が別になると人間関係が変わる可能性が高いです。しかし、中等教育学校であれば6年間で人間関係を築くことができるのです。
中等教育学校のデメリット
中等教育学校のデメリットは6年間同じ学校で過ごすため、合わない場合、馴染めない場合に苦労するということです。
授業や学校生活が合わない場合は苦労する
中等教育学校は基本的に6年間継続して通うことになります。もちろん、前期課程を修了した時点で外部の高等学校に入学することもできますし、途中の学年でも他の中等教育学校や中学校、高等学校などへの転校(転学・編入学)は可能ですが、特殊な進路となってしまいます。
そのため、学校生活に馴染めない、校風が合わない、授業についていけないなどの問題が生じてしまうと6年間苦労するか、外部に出ることに労力を割かなければいけなくなってしまいます。
人間関係が固定化しやすい
中等教育学校は中学校から高等学校までの時期の6年間同じ生徒が同じ学校で過ごします。クラス替えなどはありますが、途中で生徒の出入りがほとんどないため、人間関係が固定されやすいと言えます。そのため、人間関係の構築が上手くできないとなかなか新しい友人・人間関係ができないことがあります。
人間関係が上手くいっている人にとっては居心地が良くなりますが、上手くいかないと肩身が狭い6年間を送ることにもなりかねません。
学年が低いうちは委縮してしまうことがある
中等教育学校は身体的・精神的な発達段階が異なる6学年の生徒が同じ場所で様々な活動を行うため、異学年の交流などにおいては学年が低い生徒、前期課程の生徒は委縮してしまうことがあります。学年間の上下関係を意識するような場面も出てくるため、居心地の悪さを感じることがあるかもしれません。
受験が大変で小学校生活を犠牲にする場合も
中等教育学校に入学するためには入学試験(公立では学力検査ではなく適性検査と呼ばれる選抜)が行われますが、受験のための勉強に時間や労力、お金を割かなければいけなくなります。特に国立・私立の中等教育学校の受験では小学校での学習だけでは合格が難しいことも多く、固有のノウハウ(解法など)を身に付けるため塾通いをしなければいけないことがあります。
塾通いや家庭学習のために小学校の後半は勉強一色となってしまうことがあり、小学校生活が犠牲になることもあります。
まとめ
- 中等教育学校は、中学校と高等学校を1つの学校にして、中学校と高等学校の教育を一貫して行うことが特徴です。
- 中等教育学校のメリットとして、中高一貫教育により高い学力が養われる、安定した学習環境が得られる、人間関係を築きやすい、高校受験がないなどがあります。デメリットは6年間同じ環境のため合わない場合は苦労するということです。