高校の専門学科とは・特徴やメリットとデメリット
記事作成日:2019年5月14日
高校(高等学校)の専門学科とは、農業・工業・商業などの専門教科を中心に学び、専門教育を主に行う学科のことを意味します。高校の学科とは、学ぶ分野ごとに組織される学校の組織単位のことで、高校では普通科、専門学科、総合学科があります。専門学科では、国語や数学など普通教科に加えて、農業・工業・商業などの専門教科を学ぶことで職業教育が行われることが特徴です。例えば、工業の専門学科がある高校は工業高校、商業の専門学科がある高校は商業高校と呼ばれることがあります。
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高校の専門学科とは
専門学科とは、高等学校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部の後期中等教育で、国語、数学などの普通教科に加えて、農業、工業、商業などの専門教科を多く学ぶ専門教育を行っている学科を意味します。高等学校設置基準では専門教育を主とする学科
とされていて、略すと専門学科となります。
高等学校と中等教育学校後期課程に関しては、文部科学省の学習指導要領の高等学校学習指導要領では専門教科として、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉、理数、体育、音楽、美術、英語が挙げられています。
高等学校などの学科は普通科・専門学科・総合学科の3つ
高等学校や中等教育学校後期課程の後期中等教育に当たる学校の学科には、国語、地理歴史、公民、数学、理科などのいわゆる普通教科を中心に学ぶ普通教育を行う「普通科」、普通教科に加えて専門教科を多く学ぶ専門教育が中心の「専門学科」、普通科と専門学科の中間的な位置づけを持ち普通教育と専門教育を総合的に行う「総合学科」があります。
後期中等教育に該当する特別支援学校高等部は「総合学科」は置かれませんが、「普通科」か「専門学科」が置かれます。
専門学科の生徒数の割合
文部科学省の「学校基本調査」によると、2018年度の高等学校の全日制・定時制の本科で学科別の生徒数の割合は、普通科が圧倒的に多くなっていて7割を超えています。続いて専門学科が多く、全体の約2割となっています。
専門学科全体を100%として、専門の分野別に生徒数の割合を見ると、機械・電気・電子・情報・建築・土木・化学・自動車・造船・航空・材料・デザイン・インテリアなどを学ぶ工業の専門学科が約3分の1となっていて一番多くなっています。続いて商業が多くなっていて、続いて農業、家庭の順番となっています。
分野 | 生徒数 | 割合 |
---|---|---|
農業 | 79,616 | 11.5% |
工業 | 245,978 | 35.4% |
商業 | 190,675 | 27.4% |
水産 | 8,834 | 1.3% |
家庭 | 38,701 | 5.6% |
看護 | 13,965 | 2.0% |
情報 | 2,899 | 0.4% |
福祉 | 8,534 | 1.2% |
理数 | 26,651 | 3.8% |
外国語 | 12,001 | 1.7% |
音楽・芸術 | 11,522 | 1.7% |
体育 | 9,297 | 1.3% |
その他 | 46,642 | 6.7% |
(備考)2018年度の全日制・定時制の本科の生徒数のデータです。割合は専門学科全体を100%とした場合の割合です。
(出典)文部科学省「学校基本調査」を基にfromportal.comの担当者が作成
職業に関する専門学科(職業学科)とは
専門学科のうち、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉を中心に学ぶ学科を、職業に関する専門学科(職業学科)と位置付けられることがあります。文部科学省は専門高校パンフレットの中で、職業に関する専門学科(職業学科)について高等学校のうち、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉の職業に関する専門学科(以下「職業学科」という)
と説明しています。
専門学科を置く高校
専門学校を置く高校のうち、特に職業に関する専門学科(職業学科)を置く高校は、専門高校(専門高等学校)、職業高校(職業高等学校)、実業高校(実業高等学校)と呼ばれる場合があります。ただし、専門学科がない場合でも名称に「実業」が入っている場合もあるため注意が必要です。
農業の専門学科がある高校は農業高校(農業高等学校)、工業の専門学科がある高校は工業高校(工業高等学校)、商業の専門学科がある高校は商業高校(商業高等学校)、水産の専門学科がある高校は水産高校(水産高等学校)という名称がついていることがあります。
高校の専門学科の特徴やメリット
高校の専門学科の特徴やメリットとして、専門教科の学習が多くなるため、仕事に直接的に役立つことを多く学べる、関係する分野に就職しやすいといったことが挙げられます。
専門教科の学習が多くなる
専門学科は、専門教科を重点的に学ぶ学科です。国語、地理歴史、公民、数学、理科などのいわゆる普通教科も学びますが、普通教科を重点的に学ぶ学科である普通科と比べると、普通教科を学ぶ量は少なくなり、その分だけ専門教科を学ぶことになります。
様々な内容を学習する
専門学科は、国語、地理歴史、公民、数学、理科などのいわゆる普通教科を中心に学ぶ普通科と比べると、学習内容が多岐にわたることになり、新鮮さを感じ、興味を持ちやすく感じることがあります。
実習・演習が多くなる
専門学科は、専門的なことを学ぶという性質上、実習や演習が多くなる傾向があります。席に座って授業を聞く座学だけにとどまらず、実際に手を動かして学ぶことで技能(スキル)が身につくのです。
仕事に役立つ内容が学べる
専門学科のうち、農業、工業、商業、水産、家庭、看護、情報、福祉を中心に学ぶ職業に関する専門学科は、仕事に役立つ内容を学ぶことになるため、将来働く時に直接的に役に立つことがあります。
資格が取得しやすい場合がある
専門学科では、学ぶ内容にもよりますが、学ぶ内容に関する資格が取得しやすい場合があります。ただし、あくまで高校で学習する内容で取得しやすい資格なので、取得してもそれほど有利となる訳ではない資格もあります。
学んだ分野で就職しやすい
専門学科のうち、職業に関する専門学科(職業学科)は、学んだ分野で就職しやすい傾向があります。学んだ内容がそのまま仕事に生きてくるので、就職に結びつきやすいのです。
比較的入学しやすい
高校の専門学科は、高校の普通科と比べると傾向として、受験の競争がそれほど厳しくなく、全体的に入学しやすいという特徴があります。
推薦入試で大学に進学できる場合もある
高校の専門学科は推薦入試で大学に進学できる場合があります。ただし、推薦を受けるためには一定の成績を上げる必要があることが多いため、在学中にしっかりと勉強をして良い成績を残さなければいけません。
一部の大学に専門学科の卒業者を対象とする入試がある
一部の大学には専門学科を卒業した人向けの入試を実施する場合があります。国語や数学など普通教科の学習が十分にできなくても、対応できる選抜内容となっています。
卒業後に就職する人や専門学校に進学する人が多い
専門学科を卒業した人は、学ぶ分野にもよりますが、普通科を卒業した人と比べると学んだ内容を活かして就職する人や専門学校に進学する人が多くなっています。特に就職する人が多くなっています。
学科 | 進学率 | 就職率 | ||
---|---|---|---|---|
大学等 | 専門学校 | |||
普通科 | 63.8% | 14.5% | 8.3% | |
専門 学科 | 農業 | 14.1% | 26.7% | 53.5% |
工業 | 14.5% | 12.7% | 67.9% | |
商業 | 27.3% | 24.5% | 43.0% | |
水産 | 16.7% | 13.2% | 64.0% | |
家庭 | 25.8% | 29.1% | 38.4% | |
看護 | 87.4% | 8.4% | 3.1% | |
情報 | 39.1% | 28.2% | 24.8% | |
福祉 | 19.2% | 25.3% | 49.1% | |
その他 | 68.7% | 9.8% | 5.9% | |
総合学科 | 35.9% | 27.4% | 27.8% |
(備考)全日制・定時制の2018年3月卒業者のデータです。大学等とは大学の学部・通信教育部・別科、短期大学の本科・通信教育部・別科、高等学校・特別支援学校高等部の専攻科を指します。
(出典)文部科学省「学校基本調査」を基にfromportal.comの担当者が作成
男女比に偏りがある場合がある
高校の専門学科によっては生徒の男女比に偏りがある場合があります。男性が多い一方で女性が少ない、女性が多い一方で男性が少ないという分野もあります。これはメリットになる場合もありますし、デメリットになる場合もあります。
学科 | 男性 | 女性 | |
---|---|---|---|
普通科 | 49.4% | 50.6% | |
専門 学科 | 農業 | 50.8% | 49.2% |
工業 | 89.1% | 10.9% | |
商業 | 36.9% | 63.1% | |
水産 | 77.5% | 22.5% | |
家庭 | 13.3% | 86.7% | |
看護 | 6.2% | 93.8% | |
情報 | 65.0% | 35.0% | |
福祉 | 22.0% | 78.0% | |
理数 | 62.3% | 37.7% | |
外国語 | 23.0% | 77.0% | |
音楽・芸術 | 16.7% | 83.3% | |
体育 | 71.2% | 28.8% | |
その他 | 42.1% | 57.9% | |
総合学科 | 42.9% | 57.1% |
(備考)2018年度の全日制・定時制の本科の生徒数のデータです。
(出典)文部科学省「学校基本調査」を基にfromportal.comの担当者が作成
高校の専門学科のデメリット
高校の専門学科のデメリットとして、普通教科の学習時間が少なくなるため大学の一般入試では不利になりやすい、高卒で就職すると待遇や業務内容で不利になりやすいなどが挙げられます。
大学の一般入試では不利になりやすい
専門学科は、国語や数学などの普通教科を学ぶ普通科と比較すると、大学入試で問われる科目の学習時間が少なくなり、学習内容も狭くなるため、大学の一般入試では不利になりやすくなります。一般の大学受験をする場合は勉強量が多くなります。
途中での進路変更が大変になる
専門学科に入学後、途中で違うことを学びたい、別の進路に進みたいと考えた場合は、進路を変更することが大変になります。普通科と同じように大学進学を目指す場合は普通教科を学び直さなければいけませんし、専門を変えたい場合も大変です。
高卒での就職は待遇や業務内容の面で不利になりやすい
高校の専門学科を卒業後に就職する場合、高卒で就職するということになりますが、大卒などと比較すると給料などの待遇面、担当する業務内容などで不利になりやすい傾向があります。生涯賃金が低くなりやすい、業務内容が限られるといったことがあります。
定員割れしていて学校に勢いがない場合がある
専門学科に限りませんが、高校の所在地域や学ぶ分野によっては定員割れとなっていて、学校に勢いがない場合があります。もしかすると将来廃校の危機を迎える可能性もあります。
得られる専門性は高校レベルなのでそれほど高くない
高校の専門学科は専門的なことを学ぶことができますが、あくまで中等教育である高等学校レベルの学習内容です。高等教育である大学や専門学校で学ぶ内容と比べると専門性はそれほど高くないと言えます。更に専門性を高めたい場合は大学や専門学校で学ぶか、仕事を通じて専門性を身に付けることになります。
まとめ
- 高校(高等学校)の専門学科とは、農業・工業・商業などの専門教科を中心に学び、専門的な教育を主に行う学科のことを意味します。
- 高校の専門学科は、仕事に結びつきやすい専門的な内容を学べるということがメリットですが、高卒で就職すると待遇などで不利になりやすい、大学の一般入試に対応しづらくなるなどのデメリットもあります。