扶養には所得税等税法上の扶養と健康保険上の扶養の2種類ある
記事作成日:2018年3月28日
扶養とは収入が少ないために自分では生活が困難な人を養うことを意味しますが、扶養家族や扶養親族といった場合の扶養には所得税・住民税の税法上の扶養と健康保険上の扶養の2種類の可能性があることに注意が必要です。税法上の扶養と健康保険上の扶養は直接的には関係がなく、扶養になることの効果も異なります。どちらかに該当するけれど、もう片方には該当しないということもあるため、扶養といった場合には、税法上の扶養と健康保険上の扶養のどちらを指しているのか注意する必要があります。
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所得税・住民税法上の扶養
所得税・住民税法上の扶養とは、所得税法などに定められた扶養親族を満たす場合に、一定の金額の所得控除が受けることができ、所得税や住民税の金額が安くなる可能性がある制度です。
所得税法上の扶養は、納税者と生計を一にしている配偶者以外の16歳以上の一定の親族などが合計所得金額38万円以下(給与収入のみの場合は103万円以下)などの条件を満たす場合に受けることができます。扶養対象者の年齢、同居の有無などによって所得控除の金額が変化します。
ただし、配偶者(納税者の夫あるいは妻)は扶養控除ではなく配偶者控除の制度が設けられており、配偶者控除の対象となる場合に扶養の範囲内と呼ぶ傾向があります。
配偶者控除は納税者の配偶者が合計所得金額が38万円以下などの条件を満たす場合に適用を受けることができます。配偶者の合計所得金額が38万円を超える場合は配偶者控除は受けられませんが、配偶者特別控除を受けられる場合があります。
所得税法上は配偶者については「扶養控除」ではなく「配偶者控除」という呼び方となりますが、給与所得に限る場合、配偶者控除の対象となるのは年収103万円まで、配偶者特別控除で配偶者控除と同額の所得控除を受けられるのが年収150万円までとなり、年収150万円までは扶養範囲内に相当すると考えることができます。
ただし、年収150万円超から201万6千円未満までは所得控除の額は減少しますが配偶者特別控除の適用があるため、年収201万6千円未満も限定的な扶養の範囲内に相当すると考えることができます。
なお、税法上の配偶者控除では内縁あるいは事実婚の夫・妻は認められないという特徴があります。
健康保険上の扶養
健康保険上の扶養とは、健康保険の被保険者(会社員などの加入者)の一定の親族等が被扶養者に該当した場合、保険料の追加負担なしに被保険者と同じ健康保険に加入することができ、被保険者とほぼ同様の健康保険の給付が行われる制度です。
保険料の追加負担がないにもかかわらず、健康保険給付を受けられるため、家族が被扶養者に該当すると非常にお得なのです。
健康保険上の扶養は、協会けんぽの健康保険の場合、年間収入の見込み額が130万円以下(60歳以上または障害者の場合は180万円以下)で、被保険者(扶養者)と被扶養者と同居の場合は被扶養者の収入が被保険者の収入の半分未満などの条件を満たした場合に適用となります。給与所得者の場合、年収130万円は月額108,333円以下となります。
ただし、パートタイム労働者で、従業員501人以上の企業に勤務する人で週の所定労働時間が20時間以上、など一定の条件を満たす場合は給与が月額88,000円(年収では約106万円に相当)となると健康保険に加入することになり、健康保険上の扶養から外れる場合があります。
また、健康保険上の扶養では内縁あるいは事実婚の夫・妻が認められることも特徴です。
所得税等税法上の扶養と健康保険上の扶養は無関係
扶養の範囲内と言った場合、税法上の扶養なのか、健康保険上の扶養なのか2種類の意味があるため注意する必要があります。税法上の扶養の概念と健康保険上の扶養の概念は直接関係がなく、片方だけ該当して片方は該当しないと場合も普通にあります。税法上は扶養だけれど、健康保険上は扶養ではないということがあるのです。
健康保険上の扶養かどうかは家計への影響が大きく重要
所得税法上の扶養になるかどうかは配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除が受けられるかどうかの分かれ目となりますが、配偶者に限って言うと、年収の増加に伴って段階的に所得控除(配偶者特別控除)が減少していくため、適用の有無の家計への影響は緩やかなものとなります。
しかし、健康保険上の扶養に該当するかしないかは社会保険料(厚生年金保険料と健康保険料)の負担があるかないかにかかわるため、不要になるかならないかの年収を超えるか超えないかによって家計への影響が大きく異なります。
そのため、健康保険上の扶養になるかどうかは重要で、ぎりぎり扶養にならない場合はぎりぎり扶養になる場合よりも手取りが減少する傾向があります。意識して気を付けなければいけないのは、健康保険上の扶養になるかどうかなのです。
家族手当や福利厚生制度のための勤務先独自の扶養
所得税などの税法上の扶養と健康保険上の扶養以外にも扶養の概念が用いられる場合があります。勤務先の企業が家族手当などを支給していたり、扶養家族の人数などに応じて変化する福利厚生制度を提供している場合、税法上の扶養とも健康保険上の扶養とも異なる扶養の概念を位置付けている場合があります。
まとめ
- 制度上の扶養には、所得税・住民税の税法上の扶養と健康保険上の扶養の2種類があります。税法上の扶養と健康保険上の扶養は直接関係がなく、どちらの意味なのか注意する必要があります。
- 税法上の扶養に該当すると所得控除が受けられ所得税や住民税が少なくなる可能性があります。健康保険上の扶養に該当すると、保険料の追加負担なしに家族が健康保険の給付を受けることができます。