退職届と退職願と辞表の違いと使い分け方
記事作成日:2016年6月20日
退職をする時に提出する書類には「退職届」、「退職願(退職願い)」、「辞表」、「辞職願(辞職願い)」などがあります。退職届と退職願については同じようなものだと思うかもしれませんが、書類の記載内容や使われ方によっては退職するまでの法的な扱いが変わってくる場合があるので、違いについて意識しておいた方が良いでしょう。
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自分から退職する主な2つの方法
雇用の期間の定めがない正社員などが自分から退職する場合には、一方的に雇用の契約の解約(民法第627条第1項)をするか、退職を願い出て会社が承諾することによって合意して解約(自由な合意)をするかという2つの方法があります。
- 一方的な雇用契約の解約
- 雇用契約の合意解約
退職届と退職願の違い
一方的な通知か合意解約の申し込みか
退職届は退職する意思を一方的に相手に伝えるもので、退職願(退職願い)は退職を相手に願い出るものです。退職届と退職願は退職の仕方の違いによって使い分けられます。
一般的に、「退職届」は一方的に退職の意思を相手に伝える書類で、会社の承諾を求めず一方的に雇用の契約を解約する場合に用いられます。一方で、「退職願」は会社に雇用の合意解約をするように申し込む書類で、会社との話し合いにより雇用契約の合意解約をする場合に用いられます。退職願により雇用の合意解約をする場合には、退職願に対して会社が承諾をする必要があります。
撤回ができるかできないか
意思表示は口頭でも書面でもできるため、退職の意思表示を口頭で行うこともできますが、言った言わないでトラブルになる恐れが大きいため、通常は書面で意思を示すことが求められます。
退職届と退職願の大きな違いの1つとして撤回できるかどうかの違いがあります。退職届は退職することを一方的に通知するものである一方、退職願は会社の承諾を求めるものなので、「退職届」は受領する権限がある人が受け取った時点で撤回ができなくなり、「退職願」は会社の承諾前であれば撤回ができるとされています。「退職願」によって雇用の合意解約を申し込んだ場合、会社が承諾をするとその時点で合意が成立するため、撤回ができなくなります。
退職することを会社に伝えてから、退職を撤回するということはあまり考えられないような事例だと思うかもしれませんが、実際には後でやっぱり退職したくないという気持ちになってしまうこともあるようで、トラブルになる場合があります。
書類の名称ではなく実態で判断
退職届なのか退職願なのかは、会社に退職の意思を伝える書面の名称ではなく、実態つまり内容で判断されることになります。名称が退職届となっていても、書類の記載内容などから退職届ではなく退職願と扱われる場合もあります。
一般的には退職願を提出
退職届と退職願が厳密に使い分けられていない場合もあるのですが、一般的には円満に退職をする場合には退職願を提出して会社の承諾をもらい退職するという形が多いようです。退職の意思が揺るぎないものであって、会社と退職に関してトラブルを抱えていないのであれば、会社の慣行に従って会社が求める書式で退職願を届けても問題にはならないでしょう。
また、退職願が用いられることが多いのは、会社側としても引き留めを行いたい場合があるからだと考えられます。繁忙期であったり、後任探しに時間がかかったり、優秀な人材であったりする場合には、会社が辞めないよう説得を行うこともあります。
明確な退職の意思を伝えるなら退職届
退職日や引継ぎなどで会社側と揉めている場合は、退職願を提出してもなかなか承諾がもらえず、転職などの機会を逸してしまう場合があります。
退職の意思が明確に固まっていて、撤回するようなことが考えられない場合には、トラブルを回避するという予防的な考え方から、退職の意思を明確に示した退職届を提出することで、不必要な引き留め工作にあうリスクを減らすことができると考えられます。
ただし、会社と不必要に揉める必要はないので、話し合って分かるような場合には、無駄に会社側を刺激するような手段は取らない方が良いでしょう。できるだけ円満な退職を目指した方が後々面倒なリスクを抱える可能性が低くなります。
辞表は退職届と同様に退職の意思の通知
辞表は実際の退職の場面ではあまり使わないのですが、退職届と同様に退職の意思を通知するものとされています。辞表は会社で役員などに就いている人や公務員が提出するものとされています。辞職願という場合もありますが、辞職願の場合は相手の承諾を前提としていると考えられます。
まとめ
- 退職をする時に提出する書類である退職届と退職願は同じようなものと思えるかもしれませんが、法的な扱いが異なってくる場合があります。
- 一般的に、退職届は退職の意思を一方的に伝える場合に、退職願は雇用契約の合意解約を会社側に申し込む場合に使われます。