100万円の壁とは?住民税が発生するかの分かれ目
記事作成日:2016年9月8日
所得税が発生するかどうかや配偶者控除が受けられるかどうかの分かれ目である103万円の壁や、社会保険料が発生するかどうかの分かれ目である130万円の壁はよく知られていますが、住民税が発生するかどうかの分かれ目である100万円の壁はあまり知られていません。地域によって異なりますが、給与収入が100万円を超えると住民税が発生することがあります。
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100万円の壁とは
100万円の壁は住民税が発生するかどうかの壁です。ちなみに、103万円の壁は所得税が発生するどうかの壁です。住民税には所得金額に応じた所得割と一律の金額が課せられる均等割があり、一定の場合には所得割と均等割がともに非課税になります。
東京都23区内の場合
住民税の仕組みは自治体によって異なっているのでここで紹介する事例と違う場合がありますが、東京都の23区内の場合は、控除対象配偶者や扶養親族がいない場合には前年の合計所得金額が35万円以下であれば住民税の所得割と均等割が非課税になります。合計所得金額は、給与収入だけの場合、給与収入から給与所得控除を差し引いた金額になりますが、給与所得控除は給与収入が180万円以下の場合は収入金額×40%ですが、最低でも65万円を差し引きます。
そのため、東京23区に住む扶養家族がいない人は、給与収入が「給与所得控除」65万円+「課税されない合計所得金額の上限」35万円=100万円以下であれば住民税が非課税となります。なお、住民税の基礎控除は33万円ですが、課税されない合計所得金額の上限35万円とは異なっています。
住民税は自治体によって異なる
東京都23区の事例を紹介していますが、住民税はお住まいの地域によって算出方法が異なる場合があります。課税されない合計所得金額の上限は35万円の場合には、100万円の壁は住民税の壁ということができます。ただしお住まいの地域での住民税の課税の条件については確認をお願いします。
100万円には交通費が含まれるか
100万円の壁の100万円は給与収入だけの場合、所得税法上の給与収入をベースに計算されることになります。所得税法上の給与収入には基本的に交通費は入らず、交通費は非課税となります。一定の例外はありますが、常識的な範囲内の交通費はほとんど非課税になりますので、交通費を除いて給与収入が100万円かどうかが重要になります。
100万円の壁を超えないメリット・超えるデメリット
100万円の壁を超えないメリット、超えるデメリットについてですが、世帯全員が住民税非課税になるかどうかの場合を除くと、住民税が発生するかことだけがデメリットになります。
例えば夫婦で働いていて、片方が会社員で収入が多く、片方がパートで収入が少ない場合、パートで働いている人は扶養される側になるため、扶養親族がなく100万円の壁を超えると住民税が発生する場合があります。
扶養家族がいない一定の地域の人が給与収入だけで100万円の壁を超えると住民税の「所得割」と「均等割」が発生して課税されます。ただし、収入が増えるよりも住民税が増えるペースは遅いため、住民税を気にして給与収入を調整するというのはあまり意味がありません。
全員が住民税非課税の住民税非課税世帯となる場合
もし、世帯全員が住民税非課税である住民税非課税世帯になれるような状況であれば、なんとか住民税非課税になるように抑えた方が多くのメリットを得ることができる場合があります。
ただ、夫婦でどちらかが会社員でもう片方がパートとして働いている場合、普通は会社員の側が給与収入だけで100万円をはるかに超えている場合が多いため、通常は住民税非課税世帯となることはありません。しかし、夫が会社員、妻がパートという場合でも例外的に住民税非課税世帯となる場合があります。
譲渡損失の損益通算ができる場合
例えば夫が会社員で給与収入があっても自宅を売却して損失が発生した場合に損益通算の条件を満たしていれば合計所得金額が0になる場合があります。夫は合計所得金額が0ならば住民税が非課税となるため、妻のパート収入で、住民税が非課税になるかならないかが住民税非課税世帯の分かれ目になります。
副業の事業所得や個人事業主の場合
また、夫が会社員で働いていても別に事業をしていて事業所得がある場合や、個人事業主として働いていて事業所得がある場合も、赤字が発生して損益通算などの結果、合計所得金額が0になる場合があります。この場合も妻のパート収入で住民税の非課税世帯になるかが変わってきます。
一時的に夫婦の収入が低い場合
さらに、夫がたまたま失業していて一時的に夫婦がともにアルバイトやパートで生活費を稼ぎ、足りない分は貯金を取り崩して生活していた場合にも住民税非課税世帯になることがあります。
扶養親族分だけ100万円の壁の金額が上がる
これらの場合は、夫と妻の扶養関係によっては100万円の壁ではなくなり、扶養親族がいる分だけ壁の金額が上がる場合もあります。100万円の壁は扶養親族がいない人の給与収入の場合に当てはまります。また、事業所得など給与所得以外の場合には給与所得控除の65万円がありませんので100万円の壁ではないことに注意が必要です。
住民税非課税世帯のメリット
住民税非課税世帯は収入が少ないため、生活が厳しい世帯であると考えられます。そのため、様々な優遇措置が設けられていてメリットがあります。住民税非課税世帯になるためには、世帯全員が住民税非課税になる必要があるため、普通に暮らしているとあまり関係はありませんが、特殊な状況で役に立つことがあります。
国民健康保険の入院時の食事代の自己負担が低くなる
国民健康保険に加入している人が病気やけがで入院して食事代を負担することになった場合には、自己負担額が決められていますが、住民税非課税世帯は自己負担額が低く抑えられています。
国民健康保険の高額療養費の限度額が低くなる
1か月の医療費の自己負担額が一定の金額(限度額)を超えた場合には、限度額を超えた金額が高額療養費として払い戻されます。住民税非課税世帯は自己負担額の限度額が低めになっているため、医療費がかさんでしまっても高額療養費として払い戻されるため、医療費負担が軽くなります。
幼稚園就園奨励補助金が多くなる
子どもが私立幼稚園に就園する場合にもらうことができる幼稚園就園奨励補助金は世帯の住民税の課税状況によってもらえる金額が変わってきます。住民税の課税金額が多いということは収入が多く、住民税の課税金額が少ないということは収入が少く、収入が少ないほど多くの補助がもらえるような仕組みになっています。
住民税非課税世帯でなくなるともらえる補助金の額が10万円以上変わってしまう場合があります。幼稚園に通う年齢の子どもがいる場合に、住民税が非課税になるように意識した方が良い場合があるので注意しましょう。
給付金などがもらえる場合がある
住民税非課税世帯かどうかで給付金などがもらえる場合があります。消費税率を5%から8%に引き上げた際には、住民税非課税世帯(均等割が非課税)に臨時福祉給付金が支給されています。
また、自治体によっては住民税非課税世帯等に対して各種の援助を行っている場合があります。
まとめ
- 所得税の103万円の壁、社会保険の106万円の壁や130万円の壁のほかに、住民税の100万円の壁があります。
- 100万円の壁とは給与収入で住民税が非課税になるかどうかの分かれ目で、扶養親族がいない場合に給与収入が100万円を超えると住民税が発生します。ただし、住民税は自治体によって異なるため、壁の金額が100万でない場合もあります。