103万円の壁とは?所得税・配偶者控除・扶養控除の分かれ目
記事作成日:2016年9月8日
103万円の壁という言葉を聞いたことがある人は多いと思います。103万円の壁には主に所得税が発生するかどうかの分かれ目、配偶者控除が受けられるかどうかの分かれ目、扶養控除が受けられるかどうかの分かれ目の3つの意味があります。また、児童手当や子どもの医療費の助成にも影響する場合があります。
- 所得税
- 配偶者控除(配偶者)
- 扶養控除(配偶者以外)
- 児童手当などの所得制限
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給与収入が103万円を超えると所得税が発生する場合がある
他の人に扶養されている人が、給与収入だけで103万円を超えてしまうと、給与所得控除の65万円と所得税の基礎控除の38万円を超えてしまうため、所得税が発生する可能性が出てきます。
ただし、生命保険料控除など他の所得控除があれば103万円を超えても所得税が発生しない場合があります。また、扶養親族等がいない場合には、社会保険料等控除後の給与が1か月で88,000円以上になると所得税が源泉徴収されることがありますが、103万円の壁を越えなければ年末調整か確定申告で支払った税金は戻ってきます。
しかし、所得税の税額は所得に応じて増えていきますが、給与収入が増えるペースよりも、所得税が増えるペースが遅いため、所得税が発生するかどうかだけを気にして、給与収入が103万円を超えないようにするのはあまり意味がありません。
給与収入が103万円を超えると配偶者控除が受けられなくなる
配偶者控除とは、所得が少ない配偶者がいる場合に扶養している人の税金を少し安くしようという制度です。例えば夫が会社員をしていて、妻がパートタイマーとして働いている場合に、妻の収入が少ない場合には、夫が実質的に扶養していることになるので配偶者控除で少し税金の負担が軽くなります。妻の給与収入が103万円を超えてしまうと、夫が配偶者控除を受けられなくなってしまいます。
配偶者控除を受けるための条件
配偶者控除を受けるための条件は次の4つです。
- 配偶者と民法上の夫婦であること(内縁は対象外)
- 配偶者と生計を一にしていること
- 配偶者の合計所得金額が38万円以下(給与収入なら103万円以下)
- 配偶者が青色申告者・白色申告者の事業専従者でないこと
配偶者控除の効果
配偶者控除を受けるための条件を満たしている控除対象配偶者がいる場合、通常38万円の所得控除を受けることができます。妻がパートで働いていて控除対象配偶者となる場合、夫の所得が38万円差し引かれることになります。所得税の税率が10%なら38万円×10%=3.8万円分税負担が軽くなります。
配偶者控除がなくても配偶者特別控除を受けられる場合がある
配偶者控除が適用されない場合でも、配偶者の給与収入が141万円未満の場合は配偶者特別控除を受けられる場合があります。
給与収入が103万円を超えると扶養控除が受けられなくなる
配偶者控除は配偶者の話でしたが、配偶者以外で扶養関係にある人についても103万円の壁を超えると扶養控除に該当しなくなるという問題があります。例えば、父親が子供を扶養していて、子供がアルバイトで頑張って働いて103万円を超えると、父親が扶養控除を受けられなくなってしまいます。
扶養控除を受けるための条件
扶養控除を受けるための条件は扶養の対象となっている人が次の条件を満たしている必要があります(扶養親族)。
- その年の12月31日現在の年齢が16歳以上であること
- 扶養控除を受けようとする人の配偶者以外の親族であること(他にも対象となる場合があります)
- 扶養控除を受けようとする人と生計を一にしていること
- 合計所得金額が38万円以下(給与収入なら103万円以下)であること
- 青色申告者・白色申告者の事業専従者でないこと
扶養控除の効果
扶養控除の対象となる扶養親族がいる場合には、扶養親族1人につき通常38万円の所得控除を受けられますが、扶養している人の年齢がその年の12月31日現在で19歳以上23歳未満の場合には63万円の所得控除になるほか、70歳以上の人を扶養している場合は48万円か58万円の所得控除を受けることができます。
配偶者控除と扶養控除の違い
扶養控除は配偶者控除と違って配偶者特別控除のように所得によって段階的に控除が無くなっていくのではなく、一気にすべてなくなります。そのため、扶養控除の対象となる扶養親族の人は103万円をちょっと超えるくらいだと、家族全体では損をする可能性があります。
扶養控除の対象となっていた人の収入が103万円を超えた時の注意点
扶養控除の対象となっていた人の収入が103万円を超えた場合は扶養控除を受けている人に扶養控除が受けられなくなることを伝えることが必要です。扶養控除を受けるための条件の生計を一にするというのは同居でも別居でも大丈夫なので、別居している場合は親が知らないまま扶養控除を受けようとしてしまう恐れがあります。
103万円の壁は児童手当や子どもの医療費の所得制限限度額に影響
103万円の壁は所得税が発生するかどうかの壁ですが、実は児童手当や子どもの医療費の助成にも関わってきます。
児童手当や子どもの医療費は所得制限がある場合も
児童手当や子どもの医療費の助成を受ける際には、所得額が所得制限限度額を超えるかどうかでもらえる金額が変わってきます。児童手当の場合は所得が所得制限限度額未満であれば、子どもの年齢等に応じて1人当たり毎月10,000円か15,000円がもらえますが、所得制限限度額以上であれば、1人当たり毎月5,000円に減額されます。
また、子供の医療費については所得制限限度額が児童手当と同じ形で設定されている場合があり、所得制限に引っかかってしまうと全く補助が受けられなくなってしまう場合があります。
所得制限は扶養親族の数で変化する
同じ収入でも扶養している人が多い人と少ない人では援助の必要性が変わってきます。同じ収入であっても扶養している人が多ければその分生活に余裕がなくなります。そのため、児童手当や子どもの医療費助成の所得制限では、扶養親族等の数が増えると所得制限が緩くなるようになっています。
児童手当では扶養親族等の数は、税法上の控除対象配偶者や扶養親族などが含まれますが、控除対象配偶者は給与収入で103万円以下が条件となるので、103万円を超えると所得税法上の控除対象配偶者でなくなります。配偶者が控除対象配偶者でなくなると、児童手当や子供の医療費の所得制限限度額を計算するための扶養親族等の数が減ってしまい、所得制限が厳しくなるのです。
配偶者が103万円の壁を超えると児童手当や子ども医療費の助成が減る場合も
ちょうどぎりぎり所得制限に当てはまるかどうかの給与水準の人は、配偶者の給与収入が103万円を超えているかどうかで、児童手当や子ども医療費助成の所得制限に引っかかるかどうかが変わってしまう人がいます。
大体給与収入が800万円台半ば~1,000万円位ある人が影響を受ける可能性があります。年収が800万円もあれば高収入だと思うかもしれませんが、子どもの数や住居費の高さ次第ではそれほど生活にゆとりがない場合もあり、家計に大きく影響する場合があります。
103万円の壁は勤務先の家族手当など各種手当や福利厚生制度に影響する場合も
103万円の壁が夫の家族手当や福利厚生に影響してしまう場合があります。企業によっては、妻や子供を扶養している場合などに家族手当として給与を増額している場合や各種の福利厚生を優遇している場合があります。
夫が会社員で、妻がパートタイマーの場合で、妻が103万円の壁を越えてしまうと、夫の勤務先で家族手当などの各種手当が減額されたり、受けられる福利厚生制度が少なくなってしまったりする場合があります。
家族手当などの各種手当や福利厚生制度は企業が独自に定めるものですが、手当などの基準として税法上の控除対象配偶者であるかどうかということを用いている場合があり、影響が出る場合があるのです。
もちろん、勤務している企業などによって手当の条件は異なりますので、よく確認しましょう。
103万円には交通費が含まれるか
103万円の壁の103万円は給与収入だけの場合、所得税法上の給与収入をベースに計算されることになります。所得税法上の給与収入には基本的に交通費は入らず、交通費は非課税となります。一定の例外はありますが、常識的な範囲内の交通費は多くが非課税になるので、交通費を除いて給与収入が103万円かどうかがということになります。
103万円の壁は超えてもいいの?
103万円の壁は所得税の面からはあまり気にする必要がありません。税金が増えるよりも収入が増えるメリットの方が大きいからです。ただし、130万円の壁を超えると手取りが減る場合があるので注意が必要です。
また、103万円の壁は所得税以外に影響する場合があることに注意が必要です。夫の配偶者控除、親の扶養控除、児童手当や子ども医療費の所得制限、夫の勤務先での各種手当などに影響する可能性があるため、所得税以外のデメリットから103万円の壁を超えない方が良い場合もあります。
まとめ
- 103万円の壁とは所得税が発生するかどうかの分かれ目です。103万円の壁を超えて所得税が発生しても、収入が増えるよりも税金が増えるペースが遅いため、所得税の面からは103万円の壁はあまり気にする必要がありません。
- しかし、103万円の壁を超えた場合に、配偶者控除や扶養控除が受けられなくなる、児童手当などの所得制限が変化する、夫の勤務先の手当てが変化する可能性があるなど、所得税以外にも影響が出ることがあるので注意しましょう。