パートの社会保険の106万円の壁(105.6万円・月収88,000円)とは?
記事作成日:2016年9月11日
2016年10月から厚生年金保険・健康保険の社会保険の加入対象者が拡大することになり、月収が88,000円(年間収入換算で105.6万円≒106万円)以上の収入が見込まれる場合で勤務先の社会保険の加入者が501人以上などの条件を満たしていると、厚生年金保険や健康保険の加入対象になります。厚生年金保険や健康保険に加入することには大きなメリットがあるのですが、一方で社会保険料が発生し手取りが減るというデメリットがあります。
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106万円の壁(105.6万円の壁)とは?大企業勤務のパートの社会保険加入の分かれ目
2016年9月までの社会保険料の壁は130万円だけ
年間給与が130万円以上になると社会保険での被扶養者とはならなくなるため、会社員の夫が加入する健康保険などで被扶養者とされていたパートの妻は自分自身が被保険者となり社会保険に加入することになっています。
ただし、パートタイマーでも勤務先で厚生年金保険や健康保険に加入することができる場合と、加入できずに国民年金や国民健康保険に加入することになる場合があります。
厚生年金保険や健康保険に加入できない例としては勤務先が厚生年金保険や健康保険の適用事業者ではない場合(一部の個人事業)や、雇用期間が短いため適用を除外される場合があります。また、アルバイトやパートタイマーなど労働時間や労働日数が短い人も社会保険に加入しない場合があります。
パートでも労働時間が週30時間(正社員の4分の3)以上なら社会保険に加入
年間の収入が130万円以上となって社会保険で被扶養者とならなくなった場合、厚生年金保険や健康保険が適用される事業所に勤務しているパートタイマーの人は、所定労働時間と所定労働日数がパートタイマーではない通常の労働者の人の所定労働時間と所定労働日数のおおむね4分の3以上なら厚生年金保険や健康保険の加入対象者となることになっています。
正社員の人の1週間の所定労働時間が40時間であれば、週30時間以上働いている人は働く日数次第で加入対象となります。
大企業の場合は週20時間・月収88,000円から社会保険に加入
2016年10月からは厚生年金保険や健康保険に加入する人を拡大するために適用範囲が拡大されます。勤務先で社会保険の対象となる従業員数が501人以上の場合には、1週間の労働時間が残業を含まないで20時間以上で、月収が88,000円以上等の条件を満たすと、厚生年金保険や健康保険の加入対象になります。具体的には次のような条件です。
月収88,000円で厚生年金保険・健康保険に加入となる条件
- 学生ではない
- 雇用期間が1年以上の予定(更新含む)
- 75歳未満である
- 勤務先の社会保険の対象となる従業員数が501人以上
- 1週間の労働時間が残業を除いて20時間以上
- 1か月の賃金が88,000円以上(賞与・残業代・通勤手当は含まない)
106万円の壁を超えると社会保険料の負担で手取りが大きく減少
106万円の壁(月収88,000円の壁)によって厚生年金保険や健康保険の加入対象者になると厚生年金保険料と健康保険料の負担が発生し、手取りが大きく減少してしまうことになります。
手取りが元の水準に戻るのは130万円台前半
計算条件にもよりますが、月収88,000円(年間給与105.6万円)で社会保険料の負担が発生すると、夫の配偶者控除による減税効果なども考慮すると、おおむね年間給与が130万円台前半くらいにならないと手取りが元の水準に戻らないため、手取りを確保したいなら更に収入を増やす努力が必要になります。
厚生年金保険や健康保険に加入するメリット
厚生年金保険や健康保険に加入することになると、新たに社会保険料を負担しなければいけないことがデメリットですが、メリットもあります。
厚生年金に加入すると将来の年金が増える
厚生年金に加入することができると、老後の将来もらえる年金(老齢厚生年金)が増えることになります。また、厚生年金に加入すると、障害を負った場合には障害厚生年金を、死亡した場合には遺族が遺族厚生年金を受け取ることができる場合があります。国民年金の第3号被保険者から第1号被保険者になる場合には、厚生年金には加入しませんので、厚生年金のメリットは得られません。
健康保険に加入すると傷病手当金や出産手当金が受けられる
健康保険に加入することができると、業務外での病気やけがによって働くことができなくなった場合に傷病手当金を受け取れる可能性がありますし、出産のために働かなかった期間は出産手当金を受け取れる可能性があります。国民健康保険の場合は基本的に傷病手当金や出産手当金は受け取ることができません。
国民健康保険料・国民年金保険料より安くなる場合も
既に130万円の壁に該当している場合で、厚生年金保険や健康保険の加入対象にならず、国民健康保険料や国民年金保険料を支払っている場合には、厚生年金保険料・健康保険料の方が安くなる場合もあります。厚生年金保険料や健康保険料は勤務先の事業主が半額を負担することになっており、安くなる場合もあるのです。
106万円の壁(105.6万円・月収88,000円の壁)は超えてもいい?
106万円の壁(105.6万円・月収88,000円の壁)には当てはまると手取りが減少します。しかし、厚生年金保険や健康保険に加入できるため、必ずしもデメリットばかりではなく、メリットもあります。そのため、国民健康保険や国民年金になる可能性がある130万円の壁と違って、手取りが減ったとしても単純な損にはならないので、超えてもいい壁だと考えられます。
まとめ
- 2016年10月からはパートタイマーで月収が88,000円以上になると自分自身が被保険者となり厚生年金保険や健康保険に加入する場合がでてきます。いわゆる106万円の壁です。
- 月収88,000円で厚生年金保険や健康保険に加入することになると、社会保険料負担が発生しますが、厚生年金保険や健康保険の被保険者になることのメリットもあるため、あえて収入を抑える必要はないと考えられます。