リストラとは何か・リストラの意味と対処法や備え
記事作成日:2017年12月7日
リストラの意味・リストラとは何かについてです。リストラとは英語の「restructure」あるいは「restructuring」を日本語にしたもので、元々の意味は再構築する、構造改革をするという意味になります。必ずしもマイナスの意味だけでなく、プラスの意味も含まれます。しかし、日本語のリストラには、(整理)解雇をする、退職勧奨をする、首切りをする、希望退職を募るといったようなネガティブ意味で使われることが多く、ポジティブな意味ではほとんど使われていません。
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リストラとは何か・リストラの意味
リストラとは事業の再構築のことです。日本ではリストラというと(整理)解雇・首切りや希望退職の募集といったイメージがありますが、必ずしも解雇・首切りや希望退職を伴うものではありません。人員削減がない事業の再構築の場合もリストラと呼ぶことがあります。
そもそものリストラの意味は再構築なので、リストラ=人員削減に限られません。例えば、人件費以外の経費削減、業務の効率化、組織の再編などもリストラに含まれます。ただし、日本ではリストラ=整理解雇・希望退職のようになってしまっています。
リストラ(再構築)・人件費削減のプロセス
業績が不振となった場合の人件費削減という観点からみたリストラの順序・方法はおおむね次のようになります。後の方法ほど働いている人への影響が大きくなります。人件費を削減する場合、整理解雇は最後の手段となっています。
非正規社員の活用
業績が伸び悩むようになると、正社員の募集ではなく契約社員・パートタイマー・アルバイトなどの非正規社員の募集を行ったり、派遣社員を活用したりして、人件費の増加を抑えることになります。
新規採用の抑制や停止・配置転換の促進
業務量が落ち込んでいて人員に余裕がある場合には、新規採用を抑制・停止します。部門・部署ごとに人員の余剰・不足に差がある場合には配置転換を進めていきます。
労働時間の抑制
業績が振るわず人件費の抑制が必要になった場合には、労働時間の抑制が行われます。残業の制限、休日出勤の禁止などによって超過勤務を抑制します。
賞与減額やカット・定期昇給の停止
人件費の抑制が足りない場合には、賞与の減額や支給停止、定期昇給の停止など既に働いている労働者に対する支払いを抑えていくことになります。
一時帰休・出向や転籍の実施・非正規の契約更新見送り
それでも事態が好転しない場合には、労働者を一時的に休業させる一時帰休、出向・転籍の促進、契約社員や派遣社員などの非正規社員の契約更新の見送りなどを実施します。
毎月の給料の削減・退職勧奨実施や希望退職募集
更に余裕がなくなってきた場合には、毎月の給料の削減に踏み込むことがあります。また、退職を勧める退職勧奨や希望退職の募集が行われることがあります。
最後の手段としての整理解雇
人員削減がやむを得ないような状況になると整理解雇に踏み切ることがあります。日本のリストラはこの整理解雇を指す場合があります。
解雇の種類
解雇には、懲戒解雇、諭旨解雇、普通解雇、整理解雇があります。重大な犯罪行為や金品の横領、長期間にわたる無断欠勤など労働者側に重大な問題がある場合に行われるのが懲戒解雇、懲戒解雇に相当するような重大な問題が労働者側にあるものの反省の意思を示すなど情状酌量の余地があり処分を軽減した形で行われるのが諭旨解雇です。
また、欠勤や遅刻が多いなど勤務態度に重大な問題がある、業務怠慢が著しい、怪我や病気で勤務が困難であるなどの場合に行われるのが普通解雇です。
懲戒解雇、諭旨解雇、普通解雇は労働者側に問題がある場合に行われる解雇ですが、整理解雇は労働者側に非がなく、会社側の都合で行われる人員削減・人員整理を目的とする解雇です。
会社側の都合で行われる整理解雇は4要件が求められる
整理解雇を行う場合には、会社側の都合で行われることになるため、人員を削減する必要性があったか、解雇を回避する努力をしたかどうか、解雇をする対象の人は合理的かつ公平に選ばれたかどうか、解雇に至る手続きは妥当なものであるかといういわゆる整理解雇の4要件が問題となり、厳格な手順を踏むことが求められます。
もし、4つの要件に当てはまらない場合には、整理解雇が認められない場合があります。
リストラの対象となりやすい人
リストラで整理解雇が行われる場合に対象となりやすい要注意な場合には次のような人が考えられます。
不採算部門に所属している人
リストラは将来を見据えて業績が好調なうちに行われる場合もありますが、不採算部門を立て直す場合に行われることも多いです。人件費などのコストが負担になっている、余剰人員を抱えている、稼働率が低い、生産性が低いといったような場合には、人員整理の対象となりやすくなります。
縮小・撤退を予定している事業部門に所属している人
リストラは縮小・撤退を予定している事業部門を中心に行われることがあります。将来縮小・撤退する事業では、業務量が少なくなるか、全くなくなるため、所属している人の能力や技能などを活かしづらくなってしまうためです。
年齢が高い人
リストラは年齢が高い人に対して行われることがあります。年齢が高い人は給与水準が高い一方で、新たな業務を習得しづらい、習得しても長期間働くことができないといったことがあるためです。
人事評価が低い人
リストラを行う場合は、会社の業績に貢献してくれているという意味で優秀な人を避けて行われることがあります。会社での人事評価が低い人を整理解雇の対象とすることで、業務への影響を最小限にとどめようとします。欠勤など勤務成績が良くない人、業務で成果を上げていない人は整理解雇の対象となりやすいです。
リストラの対処方法・対応策
リストラに直面した場合にどうしたらよいか、対処方法・対応策についてです。リストラに遭った場合には、会社に残り続けようとするのか、会社から去る(退職)するのかの判断が求められることになります。そもそも残る選択肢がない場合もあります。
会社の行く末について情報を集め予測する
リストラを行う会社の行く末について情報を集めて、将来を予測することが大切です。もし、リストラを行っても業績の改善が難しい、先行きは暗いという場合には、出来るだけ早く会社から出るということも選択肢になりえます。
一般的に、リストラで希望退職などが行われる場合には、最初の募集ほど労働者にとって条件が良く、後になればなるほど条件が悪くなることがあるからです。
また、いつ倒産してもおかしくないような会社にいて不安な日々を過ごすよりも、早めに違う人生を歩んだ方が人生の貴重な時間を無駄にしなくても済みます。
もし、リストラによる厳しい状況が一時的だという場合には、リストラが始まっても会社に残る道を模索することも選択肢となります。
自分のキャリアプランを考え会社に残るか会社から去るか決める
リストラに直面しそうな時には、自分の今後の働き方、キャリアプラン(職務経歴の計画)について考えることが大切です。何としてでも今の会社での勤務を続けたいのか、別の道を歩んでも良いのか考えることが大切です。もし、会社に残ることが厳しい場合には、今後の仕事についてどうするか考えておく必要があります。
会社から去るつもりなのであれば、転職や起業について一刻も情報収集を始めることが重要になります。転職の求人情報を集めたり、転職エージェントと面談して適性を見きわめたりして、転職の準備を進めておきましょう。
もし、退職金などを活用して起業する場合には、起業が現実的なものかどうか、売上の見通しは付くのかなど、実現性について慎重に検討することが大切です。
会社を去る場合には出来るだけ良い条件になるよう努力する
会社を去る覚悟を決めた場合には、出来るだけ良い条件で退職できるように努力しましょう。希望退職が行われる場合には条件が良いうちに応募して退職金の上乗せなどを狙うことが大切です。もし、転職や起業の準備ができていないのであれば、時間を稼ぐことも大切です。
希望退職に応じる代わりに、在籍中に転職活動を行っても良いと許可を受けたり、退職時期を先延ばししてもらったりするなどの良い条件を引き出すことも大切です。
会社に残りたいなら安易に退職勧奨に応じてはいけない
会社に残りたいと思うのであれば、退職を勧める退職勧奨に応じてはいけません。整理解雇の対象となってしまった場合、残りたいのであれば整理解雇の是非を争うことになる可能性が高くなりますが、退職勧奨はあくまで退職の勧めなので望まないのであれば断ることができます。
会社に残りたいと思うのであれば、強い言葉で退職を勧められても、自分から退職すると言い出さないことが重要となることがあります。会社は、自主的に退職するということを待っているのです。あまりにひどい場合には退職の強要となるため、弁護士などの専門家に相談した方が良い場合があります。
リストラへの備え
リストラに遭っても大丈夫なように、あらかじめ準備をしておくことが大切です。リストラで慌てないためには、他の会社や仕事でも通用するような能力・技能(スキル)を身に付けておくということが大切です。
リストラはある時突然やってくる
業績が徐々に悪化してリストラが行われることがある程度予測できる場合もありますが、景気後退や金融危機の発生などによってリストラはある時突然やってくることがあります。
十分に考える時間や準備する時間があれば、リストラに対してどうするのかという判断が下しやすいですが、突然やってきた場合には考える時間や準備する時間がないため、悩み、迷うだけで時間を使ってしまい、正常な状態で判断を下せなくなってしまうことがあります。
リストラは業績が好調な場合に行われることもあります。人工知能(AI)に仕事が奪われると言われることがありますが、社会や産業の構造は変わっていくため自分の仕事がなくなることもあります。
いつ突然リストラに直面しても動揺しなくていいように、リストラに対する備えを常日頃から意識しておくことが大切です。
スキルアップを行う
今の会社でしか通用しない知識・能力・技能・業務経験しかないと、リストラに直面した時に途方に暮れてしまうことになります。その会社でしか通用しない固有なスキルだけではなく、同業他社や異業種でも通用するようにスキルアップを行うことが大切です。
自分の業務の専門性を深めておく、他の業務に関する知識や技能を身に付けておく、他の会社や他の業種の情報収集を行っておく、社外に人脈を構築しておくなどの方法が考えられます。
雇用保険や労働法について知っておく
労働者として働く場合には、失業した場合の雇用保険、労働者としてどのような権利が保障されているのかということについて規定されている労働法について知っておくことが大切です。
失業した場合には、いつから、どのくらいの期間、いくらくらい失業手当(基本手当)がもらえるのかということが把握できていると失業後の生活を考える上で役に立ちます。また、退職が自己都合なのか会社都合なのかが大事な理由も分かります。
労働基準法や労働契約法などの労働法について知識を持っておくことで、会社から受けている扱いが、不当な扱いを受けているのか、やむをえない扱いなのかを自分で推測できるようになります。
もし不当な扱いを受けているのであれば、不当な扱いを言われるがまま受け入れるのではなく拒否することもできるようになりますし、弁護士などの専門家に相談しやすくなります。
副業を行う・共働きになる
収入源を分散しておくこともリストラへの対策として効果的です。就業規則等の確認が必要になりますが、副業を行えるような場合には、副業を行っておき、本業以外の収入を作ることでリストラされた場合でも完全に収入が途絶えることを防げます。
また、副業を行うことで、本業とは異なる技能(スキル)が身に付いたり、人脈が出来たりするなど、スキルアップの面でも効果があります。
夫婦の場合、夫か妻のどちらかが専業主夫・専業主婦となっているのであれば共働きになることで収入源を増やすことができます。夫婦のどちらか片方がリストラで失業しても、もう片方の収入は維持されます。
貯金をする
リストラに遭った時に金銭的に余裕があるのとないのとでは、精神状態に大きな差が出てきます。もし十分な貯金があれば、慌てずに次の就職先を探すことができますが、お金に余裕がないと慌てて就職先を探すことになるため、条件が合わない場合でも就職してしまう場合があります。
リストラに遭った場合には、失業保険(雇用保険)の給付を受けることができる場合も多いと考えられますが、失業保険だけでは心許ないため、いざという時のための蓄えをしておくことが重要です。
生活水準を上げず節約を心掛ける
給与水準が上がると生活水準を上げてしまうことがあります。例えば、高級な住宅を買って過度な負担の住宅ローンを負ってしまう、子どもの教育費にお金をかけてしまう、などといったことが考えられます。
リストラに遭うと今までの給与水準が維持できなくなることがあります。もし生活水準を上げてしまうと、今までの給与水準が維持できるような再就職先を探すことになりますが、条件が良い仕事は見つかりづらいため、苦境に陥ってしまう場合があります。
逆に生活水準を上げていなければ、給与水準が多少下がっても生活水準を変えなくて済むことがあるため、再就職先を見つけやすくなります。
まとめ
- リストラとは事業の再構築という意味ですが、日本では整理解雇、首切り、希望退職の募集といった意味で使われることが多くなっています。
- リストラに遭遇した場合には、会社に残るのか、会社から去るのか判断する必要があります。また、リストラはいつ遭うか分からないので、他の会社でも通用するように備えをしておくことが大切です。