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無期雇用転換の5年ルールとは

記事作成日:2018年12月19日

労働契約法の改正によって雇用期間の定めがある有期雇用の労働者であっても、有期労働契約を更新し同じ使用者と通算して5年を超える有期労働契約を結んだ場合、無期労働契約への転換の申し込みができる権利が発生するようになりました。無期雇用に転換されることによって、定年まで働き続けることができるため雇用の安定につながるほか、長期的な視点に立ったキャリア形成などが可能になります。

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労働契約法の無期雇用転換の5年ルールとは

無期雇用転換の5年ルール(1年更新の場合)

労働契約法で定められた無期雇用への転換の5年ルールとは、2013年4月1日以降の有期労働契約について、同一の使用者と結んだ2つ以上の有期労働契約を通算して5年を超える場合に、労働者に無期労働契約(期間の定めのない労働契約)への転換の申し込みを行う権利が発生するというルールです。申し込みがあった場合、使用者は転換を拒否できません。

有期労働契約の無期雇用転換の5年ルールのポイント

有期労働契約を無期労働契約の無期雇用に転換する5年ルールのポイントは次の通りです。

  • 2013年4月1日以降の有期労働契約が対象
  • 同一の使用者との2つ以上の有期労働契約が対象(=1度は更新が必要)
  • 契約期間が通算して5年を超える(=ちょうど5年は対象外)
  • 労働者から使用者に申し込みが必要(=自動的には転換されない)
  • 契約の間に契約がない場合があると通算できないことがある
  • 使用者側は条件を満たす場合無期雇用への転換を拒否できない

労働契約法第18条第1項 同一の使用者との間で締結された二以上の有期労働契約(中略)の契約期間を通算した期間(中略)が五年を超える労働者が、当該使用者に対し、現に締結している有期労働契約の契約期間が満了する日までの間に、当該満了する日の翌日から労務が提供される期間の定めのない労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者は当該申込みを承諾したものとみなす。この場合において、当該申込みに係る期間の定めのない労働契約の内容である労働条件は、現に締結している有期労働契約の内容である労働条件(契約期間を除く。)と同一の労働条件(当該労働条件(契約期間を除く。)について別段の定めがある部分を除く。)とする。

(出典)労働契約法より一部を省略して引用

契約の空白期間があると通算できない場合がある(クーリング)

有期労働契約と有期労働契約の間に契約がない期間があると、前の有期労働契約を通算できない(クーリング)場合があります。契約がない期間(空白期間)の前の有期労働契約期間が通算して1年以上の場合は、空白期間が6か月以上あると、前の有期労働契約が通算できません。

契約がない期間(空白期間)の前の有期労働契約が通算して1年未満の時は、前の有期労働契約の通算期間に応じて以下の空白期間があると前の有期労働契約が通算できません。

空白期間(無契約期間)と期間の通算の可否
空白の前の契約期間通算できなくなる空白期間
2か月以下1か月以上
2か月超4か月以下2か月以上
4か月超6か月以下3か月以上
6か月超8か月以下4か月以上
8か月超10か月以下5か月以上
10か月超12か月未満6か月以上
(1年(12か月)以上)(6か月以上)

(出典)労働契約法労働契約法第十八条第一項の通算契約期間に関する基準を定める省令を基にfromportal.comの担当者が作成

契約期間が通算で5年を超える契約期間中に申し込みができる

無期雇用転換の5年ルール(3年更新の場合)

有期労働契約が通算で5年を超える契約期間中であれば、いつでも無期雇用転換の申し込みができます。例えば、3年の有期労働契約を結んだ後、期間満了後間を置かずに有期労働契約を更新して3年の有期労働契約を結んだ場合、3年の開始時点は4年目にあたりますが、契約期間自体は6年目まであるため、4年目の時点でも無期雇用転換への申し込みができます。

申し込み後すぐに無期雇用になるのではなく現在の期間終了後に転換する

無期労働契約への転換を申し込むと、現在の有期労働契約がそのまま無期労働契約に変わるのではなく、有期労働契約が終了してから無期労働契約となるという扱いになっています。

無期雇用への転換の申し込みをしないで有期雇用のままでもいられる

無期雇用への転換の5年ルールは自動的に適用されるものではなく、申し込みをすることで効果が発生します。そのため、有期雇用のままでいたいと考える場合には、申し込みをしなければ有期雇用のままでいることができます。強制的に無期雇用になるというルールではありません。

無期転換を申し込まずに次の契約期間になっても申し込みは可能

有期労働契約を更新して通算した契約期間が5年を超えた場合に、その超えた有期労働契約期間中に無期雇用への転換を申し込まなかったとしても、再び有期労働契約が更新された場合には、次の契約期間中であれば無期雇用への転換の申し込みが可能です。契約が更新される限り、再び無期雇用転換を申し込むチャンスがあります。

同じ会社ならば部署や勤務地の変更があっても契約期間は通算可能

無期雇用転換の5年ルールは同一の使用者で2つ以上の有期労働契約が対象となります。同一の使用者とは、法人の場合は事業所単位ではなく法人単位なので、同じ会社内で、部署が変わったり、勤務地が変更になったりしても、契約期間の通算は可能です。個人事業主の場合は同じ個人事業主の下で働き続けていることが条件となります。

有期労働契約であればアルバイトでもパートでも対象

労働契約法に定められた無期労働契約への転換は、有期労働契約を結ぶ労働者であれば、アルバイトでもパートでも条件を満たせば無期労働契約への転換を申し込むことができるようになります。

ただし、高度専門職とされる人(博士の学位を持っている人、公認会計士や医師など一定の資格の人など)や、定年後に有期雇用労働者として継続して雇用されている人は、一定の条件の場合に事業主が都道府県労働局から認定を受けている場合、無期転換の申し込みの権利が発生しないため注意が必要です。

派遣労働者は派遣会社に対して申し込み権が発生する

派遣社員(派遣労働者)は派遣会社と有期労働契約を結んでいる場合は、労働契約法の5年ルールに該当することになります。条件を満たせば、派遣会社に対して無期労働契約の申し込み権が発生することになります。なお、単に派遣会社に登録しているだけで有期労働契約を結んでいない期間は通算されません。

使用者側は条件を満たす場合は無期雇用への転換を拒否できない

有期労働契約の労働者が労働契約法の無期雇用の条件を満たして、使用者に無期雇用転換の申し込みをこなった場合、労働契約法では「使用者は当該申込みを承諾したものとみなす」とされているため、拒否ができないことになっています。

また、労働契約法では無期雇用転換の申し込み権が発生しないように「雇止め」を行おうとすることに対して制約を課しており、5年を超えるのを目前に雇止めが発生するのを防ぐ仕組みが設けられています。

無期雇用転換後の扱い

有期労働契約の労働者が無期労働契約を結んだ場合の無期雇用転換後の扱いについてです。

給与や待遇は有期労働契約のものが引き継がれる

条件を満たして無期雇用への転換を申し込んだ場合、有期労働契約期間が終了した後に無期労働契約となりますが、契約期間以外の給与や待遇などは労働協約や就業規則、個々の労働契約で別段の定めがなければ有期労働契約のものがそのまま引き継がれることになります。特別な決まりごとがないか確認が重要です。

無期雇用に転換しても従来の正社員と同じ扱いとは限らない

無期雇用に転換した契約社員は雇用期間の定めがないという意味では正社員と同じになりますが、職務内容や待遇が通常の正社員と同じになるとは限りません。これまでは「無期雇用=正社員」という扱いでしたが、5年ルールによって有期雇用から無期雇用に転換する労働者が出てくるようになったことで、従来の通常の正社員とは違う扱いの無期雇用の労働者が出てくることになります。

単に「無期雇用が正社員」という定義であれば無期雇用となった契約社員は「正社員」に含まれますが、仕事や待遇がこれまでの「正社員」と同じになるとは限らず、通常の正社員とは異なる扱いをする企業も多いとみられます。そのため、無期雇用であっても通常の「正社員」とは呼ばずに、異なった名称(例えば無期雇用契約社員など)で呼び、呼称や待遇上「正社員」と呼ばれないことも考えられます。

すなわち、無期雇用に転換すると、「正社員」と呼ばれるか、何らかの限定が加わった短時間正社員、勤務地限定正社員、職務限定正社員のような「限定正社員」と呼ばれるか、無期雇用という言葉を付けた「無期雇用契約社員」というように呼ばれるかのいずれかになると考えられます。

無期雇用転換後の扱い

  • 正社員
  • 限定正社員
  • 無期雇用契約社員

(備考)無期雇用=正社員という定義なら「無期雇用契約社員」を含め上記は全て正社員の一種と考えることができます。

無期雇用転換のメリットとデメリット

有期労働契約の労働者が無期労働契約に転換して無期雇用になるメリットとデメリットについてです。

無期雇用転換のメリット

無期雇用に転換するメリットについてです。無期雇用になるため雇用が安定します。

雇用が安定する

無期雇用に転換することによって、労働契約期間の終わりに更新されるかどうかということに悩む必要がなくなります。自分から退職するか、解雇されるかしない限り、定年まで働き続けることができるようになります。雇用が安定することによって、生活設計やキャリアプランを行いやすくなります。

給与や待遇は引き継がれる

例外もありますが、無期雇用に転換しても給与や待遇は引き継がれることになります。そのため、急に扱いが変わってしまうこというようなことはありません。これはメリットでもありますが、デメリットともなりえることに注意が必要です。

派遣の場合は3年の期間制限の対象外となる

派遣社員が派遣会社と無期労働契約を結び無期雇用となり派遣された場合、同一の組織単位に派遣できる期間制限である3年の対象外となります。無期雇用でない派遣労働者は同じ組織単位(同じ課など)に派遣できる期間は3年が上限となっていて、同じ職場で働き続けることができません。しかし、無期雇用の派遣社員はこの3年の制限の対象外となるため、派遣契約が続く限り同じ職場で働き続けることができます。

無期雇用転換のデメリット

無期雇用に転換するデメリットです。待遇の悪さが固定されてしまう恐れがあるということが重要です。

通常の正社員より待遇が悪いことがある

無期雇用に転換しても、通常の正社員と同じような給与や待遇になるとは限りません。無期雇用への転換によって、給与や待遇が良くないまま、契約期間だけが有期から無期に変化する場合、通常の正社員より待遇が悪いままということになります。

酷い場合には、単に扱いが悪いまま、正社員並みに働かされてしまうということさえ起きてしまいます。それなら、本来の通常の正社員になった方が良いことがあります。

残業などが増える可能性がある

無期雇用の労働者となった場合、会社との結びつきが強くなります。いつ会社を去るか分からない有期契約労働者の時とは違って、周囲に気を配らなければいけなくなることがあります。定年まで働き続けることを考えるのであれば、なおさら振る舞いに気を付けなければいけません。そのため、残業や休日出勤を断りづらくなるようなこともあります。

まとめ

  • 無期雇用転換の5年ルールとは、同一の使用者と結んだ2つ以上の有期労働契約を通算して5年を超える場合に、労働者に無期労働契約への転換の申し込みを行う権利が発生するというルールです。申し込みがあった場合、使用者は転換を拒否できません。
  • 無期雇用に転換することによって定年まで働き続けることができるようになるため雇用が安定するというメリットがある一方、通常の正社員と同じ給与・待遇になるとは限らないことがデメリットです。

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【無期雇用転換の5年ルールとはの記事は終わりです】

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