オルタナティブ資産投資の特徴や種類・メリットとデメリット
記事作成日:2017年9月19日
最終更新日:2022年1月25日
オルタナティブ資産(代替資産)とは何か、オルタナティブ資産投資の特徴、種類、メリットとデメリットについてです。オルタナティブとは代替という意味ですが、オルタナティブ資産は株式や債券などの伝統的資産と対比して代替資産と呼ばれます。オルタナティブ資産投資を行うことで分散投資の効果が得られることがメリットですが、仕組みが複雑であったり、取引等に関する手数料などの費用が高くなる傾向があったりすることがデメリットです。
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オルタナティブ資産と伝統的資産
オルタナティブ資産と伝統的資産についてです。
オルタナティブ投資の意味・オルタナティブ投資とは
オルタナティブとは「代替の、代わりの」という意味があり、オルタナティブ資産、オルタナティブ投資とは代替資産、代替投資という意味になります。何の代替かというと、従来型の資産、いわゆる伝統的資産の代わりということになります。つまり、オルタナティブ投資とは、伝統的資産である株式や債券以外の資産に投資をすることを言います。
伝統的資産とは
投資の世界では伝統的な資産とは、株式と債券を意味します。日本では、伝統的資産というと、国内株式、外国株式(海外株式)、国内債券、外国債券(海外債券)の4資産を意味し、伝統4資産、伝統的4資産ということもあります。この場合の株式や債券は先進国の株式や債券を指しています。また、現金(キャッシュ)を伝統的資産に含めることがあります。
伝統的資産への投資の課題
従来の投資では、国内あるいは海外(先進国)の株式・債券に投資が行われてきましたが、伝統的資産への投資では、先進国株式は相互に相関(価格の連動性)が高く、十分な分散投資にならなかったこと、リスク(価格変動)を抑制するためには債券を買うしかなかったことなどから、分散投資やリスクの抑制のために代替的な資産への投資が広がることになりました。
オルタナティブ資産投資の特徴
オルタナティブ資産投資の特徴です。
投資する資産の拡大
オルタナティブ投資では投資対象となる資産が拡大します。オルタナティブ投資では、伝統的資産の株式・債券以外の不動産、コモディティ(商品)、ヘッジファンド、ベンチャーキャピタル・再生ファンドなどの各種ファンド、証券化商品、インフラ投資、金融デリバティブ、未公開株式(プライベートエクイティ)、美術品などに投資します。
未公開株式は、株式の一種ですが、同じ株式という資産クラスの中でも従来は投資されてこなかったという意味で、オルタナティブ投資とされます。
投資手法の多様化
オルタナティブ投資では投資手法も多様化します。従来型の伝統的資産投資では、基本的に「買い」だけで、「売り」の持ち高を持つことはありませんが、オルタナティブ投資では先物取引やオプション取引、スワップ取引といった金融デリバティブを用いて、あらゆる市場の局面で収益機会が得られるように投資手法が多様化されます。
オルタナティブ資産の1つであるヘッジファンドでは、先物取引、オプション取引などの金融デリバティブが活用され、リスクを抑制しつつリターンを高めるような工夫が行われます。
投資する国・地域の拡大
オルタナティブ投資というと投資対象資産の拡大や投資手法の多様化を挙げることができますが、投資する国・地域の拡大を意味することがあります。
伝統的資産では先進国への投資が中心でしたが、オルタナティブ投資として新興国への投資を意味することがあります。既に十分な投資実績がある新興国よりも、これまでほとんど投資されてこなかった新興国への投資を意味することになります。
伝統的資産の株式や債券と値動きが異なる
オルタナティブ投資の対象となる資産は伝統的資産である株式や債券とは異なった価格変動をする資産が多くあります。中にはREITの様に株式に似た価格変動をする資産もありますが、株式や債券とは異なる価格変動をする資産も多くあります。
また、生命保険や損害保険を金融商品化した資産(例:損害保険関連のCATボンド:カタストロフィボンド)のように基本的に株価の変動とはほとんど関係がない資産もあります。
市場の様々な局面で収益の機会がある
株式や債券に「買い」だけの取引を行っていると、基本的に値上がりしないと利益を得ることができません。値下がりしている場合は損失を出すことになります。
しかし、先物取引を活用して「買い」だけではなく「売り」のポジションを持つことで値下がりしている場合でも利益を得ることができます。また、オプション取引を活用すれば、値上がりも値下がりもしない、価格がレンジとなる相場・横ばいとなる相場でも利益を得られるようになります。
オルタナティブ投資では工夫次第で様々な相場の局面で利益が得られるようになるのです。
リスクは高い資産から低い資産まで様々
オルタナティブ投資では、価格変動が小さい資産や大きい資産をより自由に選ぶことができるほか、先物取引やオプション取引などの金融デリバティブによって価格変動リスクを抑制できるため、価格変動のリスク(標準偏差)が高い資産から低い資産までさまざまなものがあります。
換金性や流動性が低い資産がある
オルタナティブ投資では、換金性・流動性が低い資産があります。不動産の場合には換金しようとすると時間がかかる場合があります。ヘッジファンドも解約に制限がある場合があります。取引市場がある資産の場合でも、取引量が少ない場合には流動性が低く、極端な価格変動が生じてしまう場合があります。
商品性が複雑な資産がある
オルタナティブ投資の中には、商品性が非常に複雑な資産があります。特にヘッジファンドや証券化商品の商品性は非常に分かりづらいものになっていることが多いことに注意が必要です。投資手法や投資資産が分かりづらく、どんなリスクが潜んでいるか分かりづらい場合があります。
証券化商品は商品設計の分かりづらさからリスクが見えづらく、2008年の世界金融危機(リーマンショック)の原因となった資産でもあります。
オルタナティブ投資の資産の種類
オルタナティブ投資の資産の種類についてです。
不動産
オルタナティブ投資の資産の代表例の1つが不動産です。不動産投資には、直接アパートやマンションなどの実物不動産に投資する方法、不動産の小口化商品に投資する方法、上場されたREITに投資する方法、不動産に投資する投資信託に投資する方法などがあります。機関投資家の場合は私募REITや私募ファンドに投資する方法もあります。
- 実物不動産(現物不動産)
- 小口化商品
- 上場REIT
- 不動産に投資する投資信託
- 私募REIT
- 私募ファンド
コモディティ(商品)
オルタナティブ投資の資産の例としてコモディティ(商品)があります。金地金の積立投資や金ETFなどへの投資などが有名です。金やプラチナなどの貴金属は金やプラチナ自体に価値があり実物が保有できる資産であることも特徴の1つです。コモディティの種類にはエネルギー、産業用金属、貴金属、農産物、畜産物があります。
- エネルギー(原油、ガソリンなど)
- 産業用金属(アルミニウム、銅、鉛など)
- 貴金属(金、銀、プラチナ(白金)など)
- 農産物(農作物)(小麦、コーン、大豆など)
- 畜産物(牛、豚肉など)
ヘッジファンド
ヘッジファンドとは、先物取引などの金融デリバティブ(金融派生商品)などの取引手法を活用したファンドです。ヘッジファンドの投資戦略は大きく分けると相場見通しに基づいて投資を行う方向性戦略、銘柄間などの相対的な価格差に着目して割安な銘柄を買い割高な銘柄を売る相対価値戦略、企業買収などのイベントに着目して利益を狙うイベントドリブン戦略があります。
- 方向性戦略(ディレクショナル・タクティカル):株式ロングショート、グローバルマクロ、マネージドフューチャーズ(CTA)など
- 相対価値戦略(レラティブバリュー):株式マーケットニュートラル、債券アービトラージ(裁定取引)、転換社債アービトラージ(裁定取引)など
- イベントドリブン戦略:ディストレス(ディストレスト)、M&Aアービトラージ(リスクアービトラージ)、スペシャル・シチュエーションなど
インフラ
インフラ投資とは経済や社会の基盤となるインフラ施設に直接的・間接的に投資することです。インフラ施設には、経済的な基盤となる道路、橋、トンネル、鉄道、河川、港湾、空港、発電所、送配電施設、ダム、ガス・石油のパイプライン、上下水道、ゴミ処理施設、放送・通信施設や社会的な基盤となる学校(教育施設)、病院、介護施設、刑務所などがあります。
- 経済インフラ(道路、橋、トンネル、鉄道、港湾、空港、発電所、送配電施設、パイプライン、ダム、上下水道、放送施設、通信施設、衛星、ケーブル)
- 社会インフラ(学校、病院、刑務所、政府関連施設、軍事施設)
プライベートエクイティファンド(PEファンド)
プライベートエクイティファンドとは未公開株に投資するファンドのことです。ベンチャー企業に投資をするベンチャーキャピタル、企業を買収して高い企業価値を持たせてから売却するバイアウトファンド、経営不振の企業の立て直しを行う企業再生ファンド、経営破綻したあるいは経営破綻しそうな企業の株式を買い取るディストレスファンドなどがあります。
- ベンチャーキャピタル
- バイアウトファンド
- 企業再生ファンド
- ディストレスファンド
- セカンダリーファンド
- メザニンファンド
保険投資(保険のファンド)
保険投資とは生命保険や損害保険に連動する保険リンク証券など保険に投資することです。自然災害の発生状況によって得られる収益が変わってくるCAT債(キャットボンド)などが有名です。再保険・再々保険、証券化の仕組み、金融デリバティブの仕組みなどによって損害保険や生命保険のリスクに投資します。景気動向などにリターンが左右されないことが特徴です。
- 生命保険投資(超過死亡リスクの再保険、長寿リスクの再保険、医療保険の超過支払いリスクの再保険、ライフセトルメント)
- 損害保険投資(CAT債(キャットボンド)、再保険・再々保険、ILW(インダストリー・ロス・ワランティ))
証券化商品
証券化商品とは、不動産、ローン、債権、知的財産権、事業など収入(キャッシュフロー)が見込まれる原資産を裏付けとして発行された証券が商品化したものです。不動産関連ローンを裏付けとするMBS(不動産担保証券)、社債や金融機関の事業会社に対するローンを裏付けとするCDO(債務担保証券)、MBSやCDOに分類されない資産を裏付けとするABS(狭義の資産担保証券)があります。
- ABS(自動車ローン債権、リース料債権、割賦債権、クレジットカード債権、学生ローン債権、消費者ローン債権、売掛金、商業手形、診療報酬債権などが裏付け)
- MBS(RMBS(住宅ローン担保証券)、CMBS(商業不動産担保証券)、CMO(不動産抵当証券担保債券))
- CDO(CBO(社債担保証券)、CLO(ローン担保証券)、CDO(債務担保証券))
金融デリバティブ(金融派生商品)
金融デリバティブ(金融派生商品)とは、株式、債券・金利、為替(通貨)、クレジット、コモディティ(商品)などの原資産から派生した形の取引方法で、先物取引(先渡取引を含む)、オプション取引、スワップ取引があります。また、天候や自然災害などを対象にした金融デリバティブもあります。金融デリバティブはリスクヘッジ・裁定取引・投機などに使われます。
- 先物取引(含む先渡取引)
- オプション取引
- スワップ取引
オルタナティブ資産投資のメリット
オルタナティブ資産投資のメリットを整理すると次のようになります。
分散投資になる
オルタナティブ投資を行うことで投資対象となる資産を増やすことができます。また投資の手法も多様化することができます。投資する国・地域も増えます。
そのため、伝統的な資産である株式や債券に投資している場合よりも投資対象資産が多様化し、分散投資を行うことができます。オルタナティブ投資の対象となる資産は、伝統的な資産である株式や債券とは異なった値動きをします。
利益を得る機会を増やせる
オルタナティブ投資を行うことで投資対象となる資産や投資手法が拡大します。そのため、利益を得る機会を増やすことができます。例えば、買いから入る取引だけしかできない場合には値上がりした際にしか利益が得られませんが、売りから入る取引が出来れば値下がりした場合にも利益が得られます。
オルタナティブ資産投資のデメリット・リスク
オルタナティブ資産投資のデメリット・リスクを整理すると次のようになります。
仕組みが複雑で分かりづらい場合がある
オルタナティブ投資の対象となる資産の中には仕組みが複雑で分かりづらい場合があります。ヘッジファンドなどは高度な手法を用いた取引がありますが、高度であるということは複雑で分かりづらいということでもあります。
価格が変動する要因・理由が分かりづらい場合がある
オルタナティブ投資の対象となる資産の中には、値動きの要因や理由が分かりづらい場合があります。つまり、どういう状況で資産価格が上昇・下落するかということです。特にヘッジファンドは仕組みが複雑でどういう状況で価格が変動するのか分かりづらい場合があります。
妥当な価格の目安となるものがない場合がある
オルタナティブ投資の対象となる資産の中には、妥当な資産価格の目安・水準となるものがない場合があります。株価のPERといったように割安・割高を判断する物差しがないために資産価格の妥当性の判断が難しい場合があります。
取引コストが高い場合がある
オルタナティブ投資の対象となる資産は全般的に伝統的な資産である株式などと比べて売買手数料などの各種手数料や投資信託化されている時の運用管理費用(手数料)等の報酬が高い傾向があります。
流動性・換金性が低い場合がある
オルタナティブ投資の対象となる資産の中には、流動性や換金性が低いため、思ったようなタイミングで売却できない、換金できない資産があります。
個人投資家には投資が難しいものもある
オルタナティブ投資の対象となる資産には個人投資家では投資が難しい資産があります。また、個人投資家が投資できるものであっても、機関投資家に提供されているものよりも手数料などの条件面で悪い商品があります。
まとめ
- オルタナティブ資産とは株式や債券などの伝統的資産の代わりの投資対象となる代替資産という意味です。
- オルタナティブ資産の種類には、不動産、コモディティ(商品)、ヘッジファンド、インフラ、プライベートエクイティファンド(PEファンド)、保険(のファンド)、証券化商品、金融デリバティブ(金融派生商品)などがあります。