金融相場と業績相場とは
記事作成日:2015年8月14日
最終更新日:2022年5月15日
株価が上昇する相場局面として金融相場と業績相場があります。景気が悪くなると金融緩和が行われ、景気が良くなると金融引き締めが行われます。金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場→金融相場という流れで株式の相場局面が変化する傾向があります。金融政策が注目される局面なのか、業績が注目される局面なのかということです。
スポンサーリンク
景気や金融政策と株式相場
景気や金融政策の動向を受けて株式相場は上昇しやすい局面となったり、下落しやすい局面となったり、状況が変わっていきます。一般的には、金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場→金融相場の順に相場環境が変化することになります。
景気循環と金融政策の関係
景気の循環と金融政策の関係についてです。
景気が悪くなると金融緩和
景気が悪化している時は金融緩和によって、企業や家計が低い金利で融資を受けられるようにして、積極的な投資や消費を行うように促すことで景気の回復を狙います。金融緩和により企業や家計の活動が活発になると、景気は底を打ち回復に向かいます。
景気が良くなると金融引き締め
景気が過熱すると、株式や不動産などへの過度な資金流入やインフレが発生するため、金融緩和の解除や金融引き締めが行われます。金利が上昇するため企業や家計の借り入れは鈍り、景気は後退局面に向かうことになります。
株価=EPS×PERの関係式から流れを掴む
金融相場・業績相場の流れと株価を考える上で「株価=EPS×PER」という関係が役に立ちます。EPSとは1株当たり利益のことで純利益など企業利益の指標を発行済み株式数で割ったものです(利益÷株式数)。そしてPERとは株価収益率のことで株価をEPS(1株当たり利益)で割ったものです。時価総額を純利益で割っても同じことになります(株価÷EPS)。そして、EPSとPERを掛けると、EPS×株価÷EPSなので株価となり、株価は「株価=EPS×PER」という形に分解できることが分かります。
EPSは「利益÷株式数」ですが、1株当たりどれだけ利益を上げることが出来たか、業績の良さに関係するため、景気が良く企業業績が改善する時はEPSが増加し、株価を押し上げます。
PERは株価を1株当たり利益で割ったもので、株価が利益の何倍まで買われているか、つまり将来の業績の期待も含めて考えた時の株価の割高・割安感を示す指標です。投資家が将来の業績に楽観的な見方をしているか、悲観的な見方をしているかが反映されます。PERはその時々の投資家心理が反映されやすく、投資家心理の変化はPERに影響することになります。
そのため、単純化して考えると、EPSは業績、PERは投資家心理に主な影響を受けるということになります。「株価=EPS×PER」の視点から金融相場や業績相場との関係を考えます。
金融相場とは
金融相場とは、景気が悪化している時に、金融緩和が行われることによって、金利が低下し、市場に資金供給が行われることで、株価が押し上げられる相場環境を言います。金融緩和により市場の金利が低下するため、企業や家計は低い金利で金融機関から融資を受けられるようになり、投資や消費が活発化します。そのため景気は底を打ち回復局面に向かうため、景気回復を織り込み株価も底を打ち上昇に向かいます。
さらに、金融緩和が進むと市場の金利水準が低下し、金利低下余地も狭まることで金融相場が続くうちに債券の割高感が強まることになります。一方で、金融緩和によって金融市場には低金利で大量の資金が供給されることになるため、市場に溢れたマネーは株式や不動産などのリスク性資産への投資に向かうことになるため、株価の底打ちを後押しすることになります。
金融相場の局面では、景気や企業業績の回復を伴っていなくても、金融緩和によって株価が押し上げられることがあり、不景気の中で株高が起きることになります。「株価=EPS×PER」の式ではどちらかといえばPERの上昇により株価が押し上げられることになります。
リーマンショック以降、世界の主要国では過去に例がないほどの大胆な金融緩和策に踏み込んでいるため、株価にとって金融相場の重要性が増しています。景気が悪化局面から回復局面に向かう場合、株価も底値にあることが多いため、金融相場が本格化する前に株式を購入することが出来れば、大きな収益を上げる可能性が高まります。
業績相場とは
業績相場とは、金融緩和によって景気や企業業績が回復に向かう中で、投資家の注目点が金融緩和の効果から企業業績へと移り、企業業績の改善や拡大に伴って株価が上昇する相場環境を言います。業績相場は金融相場の次の局面になりますが、金融相場と業績相場を分けるのが難しいような状況もあります。
金融政策は緩和的な状況が続くため市場の資金は十分にある一方で、景気や企業業績の回復が本格化すると金融緩和の解除や金融引き締めが意識されるようになります。業績相場の終盤では、低水準にあった金利は底を打って上昇していることもあり、金利の先高観が出ているようなこともあります。そのため債券投資は相対的に魅力が低下します。
金融緩和によって企業や家計の投資や消費が活発化することで景気は回復し、企業業績も改善・拡大に向かいます。株価は企業業績の改善・拡大期待が強まることによって上昇が続く傾向にあります。「株価=EPS×PER」の式ではどちらかといえばEPSの拡大への期待が強まる局面です。
業績相場では企業業績の回復が目に見えて確認できるため、投資家としては株式投資をしやすいように思える時期ですが、業績の改善が始まる前から通常株価は上昇が始まっているため、思ったほど利益を得られないような場合もあります。
逆金融相場とは
逆金融相場とは、景気回復が進み景気が過熱するようになってくると、物価の上昇(インフレ)や株式や不動産などへの過度な資金流入が発生することになるため、金融緩和の解除や金融引き締めが行われるようになり、株価の上昇が止まり天井を打つ相場環境を言います。逆金融相場は金融相場とは逆の状況となり、業績相場の次の局面です。
金融緩和の解除や金融引き締めによって、市場への資金供給が鈍ることになるため、株式や不動産などリスク性資産への投資が弱まることになります。また、金融緩和の解除や金融引き締めによって金利が上昇するため、債券の収益率も悪化する場面があります。
景気や企業業績は金融緩和の解除や金融引き締めですぐに悪くなることはなくても、先行き悪化するだろうとの見方が強まるため、株価は天井を打つことになります。「株価=EPS×PER」の式ではどちらかといえばPERが伸び悩み低下していくことで株価の上昇が転換することになります。
逆金融相場では、金融緩和の解除や金融引き締めが重要なテーマになります。大規模な金融緩和を実施しているほど、金融緩和の解除や金融引き締めの時のショックが大きくなるため、注意が必要です。
逆業績相場とは
逆業績相場とは、金融緩和が解除され金融引き締めが行われると、金利が上昇し企業や家計の経済活動が弱まるため、景気が後退し、企業業績も悪化が続くことで、株価が下落する相場環境を言います。業績相場とは逆の局面となり、逆金融相場の次の局面です。
金融緩和の解除や金融引き締めの効果から景気や企業業績の悪化がみられるようになり、株式の魅力が相対的に薄れる一方で、景気や企業業績の悪化が進めば、金融引き締めの転換が意識されるようになり、金利も低下に向かうことになり、債券の魅力が相対的に高まる場面が訪れます。
企業業績への懸念が強まることになるため、「株価=EPS×PER」の式ではどちらかといえばEPSへの懸念が強まることで株価が調整する形となります。
逆業績相場では、景気後退や企業業績の悪化が目立つことになりますが、事態が深刻になれば経済対策や金融緩和が行われることになるため、景気後退局面は短期間で終わることもあり、金融相場に移っていくタイミングを見極めることが重要になります。
株式の相場環境と投資判断の関係
アセットアロケーションを考える場合に、相場環境に応じて資産運用の比率を調整するなら、金融相場や業績相場の間は株価が上昇する可能性があるので、株式の比率を高くし債券の比率を低くするという戦略が基本的な考え方になります。
逆金融相場と逆業績相場では株価下落の可能性があるので、株式の比率を低くする戦略が基本的な考え方になります。
債券については逆金融相場では収益が悪化する可能性があるため株式の比率を低くした分、比率を高くすることにも問題があります。そのため、株式でも債券でもない銀行預金などリスクがほとんどない資産で運用するという方法も考えられます。
逆業績相場は金利が既に十分上昇しているため、金利水準が高く上昇余地も限られることになる傾向があるため債券でも収益が得られる可能性があり、債券の比率を高くするという戦略でも問題がない場合もあります。
まとめ
- 景気が悪くなると金融緩和が行われ、景気が良くなると金融引き締めが行われます。
- 金融相場→業績相場→逆金融相場→逆業績相場→金融相場という流れで株式の相場局面が変化する傾向があります。