投資は買いから入るだけでなく売りもできるようにする
記事作成日:2016年7月16日
最終更新日:2022年5月14日
投資といえば投資対象の資産を「買い」、値上がりを待って「売る」ことが一般的ですが、先に「買い」しかできないと値上がりをしないと利益が出ないことになります。しかし株式など投資の対象となる資産は一方的に値上がりを続けることはほとんどなく、値上がりしたり、値下がりしたり、上下の価格変動をします。もし、先に「買い」しかできないのであれば、価格下落局面では儲けることができなくなってしまいます。
スポンサーリンク
信用売り・空売りで売りから入る
個人投資家の場合、株式やFXでは信用売り・空売り・ショートによって「売り」から取引に入ることができます。株式では主に信用売りや空売りと呼ばれ、FXでは主に空売りやショートと呼ばれます。
株式や通貨を持っていなくても先に売りから入ることができるため、価格が下落すると思った場合でも「売り」で利益をあげることができます。
どちらの言葉も「売りから入る」点ではほぼ同じ意味で、株式の場合は株式を借りてきて売る、FXの場合は証拠金を払うことによって差金取引により通貨を先に売ることができます。FXの場合は、原則として買値と売値の差額を受け渡しすることで取引が完結することになるので、株式の場合とは少し仕組みが違っています(差金決済取引)。
売りなら相場下落局面でも利益を得ることができる
信用売り・空売り・ショートにより売りから取引に入るメリットは価格が下落している局面でも利益を得られることです。もし、買いからしか取引に入れないと、価格が上昇する局面でしか利益が得られません。相場は上下の変動を繰り返すので、利益を得られる機会が減ってしまうのです。
売りから取引に入れるようになれれば、相場が下落していても上昇していても利益を得られる機会があります。ただし、相場が上下の変動をあまりしない、もみ合い、レンジ相場のような場合には収益を得る機会がほとんどなくなってしまいます。
買いから入った時にも売りタイミングが分かるようになる
売りから入る取引の経験を積むと、買いから取引に入った時でも売るべきタイミングが分かるようになります。一般的に「買い」よりも「売り」が難しいと言われていますが、売りから入る取引をすることで、どんな時に価格が上がるかということだけでなく、どんな時に価格が下がるかを意識するようになるので、売るべき場面に敏感になるのです。
信用売り・空売りは悪い事ではない
信用売り・空売り・ショートを悪い事であると考えて回避する人がいますが、信用売り・空売り・ショートは悪い事ではなく、単なる取引の一形態です。信用売り・空売り・ショートには市場に流動性を強化する、市場の価格形成機能を強化するという役割があります。
流動性を供給する
信用売り・空売りによって市場に売り注文が出ることになりますが、信用売り・空売りが活発に行われることによって、市場に流動性が供給されるようになるのです。
もし市場で売り買いの注文が少なければ、わずかな注文で価格が大きく変動してしまいますし、取引が活発でなく売り買いの注文が少ない銘柄は、取引が敬遠されてしまう可能性があります。
信用売り・空売りによって市場に流動性が供給され、取引の厚みが増すのです。他の市場参加者にとってもメリットがあります。
価格形成機能を強化する
信用売り・空売り・ショートは、売り崩して価格を下げるというマイナスイメージがあるかもしれませんが、売り崩すことも時には市場にとってプラスになります。
時に市場は行き過ぎてしまうことがあり、市場参加者が妥当だと思う価格よりも大幅に価格が上昇してしまうことがあります。市場が極端に加熱していて売ろうと思っている人が少ない場合、上昇相場が止まらずバブルの状態になることもあります。
もし、売りから取引に入ることができる人がたくさんいれば、上昇相場は行き過ぎで値を崩すだろうと判断し、極端な上昇になる前に信用売り・空売りを仕掛ける可能性が高まります。
信用売り・空売り・ショートがあることで極端な価格形成が防止されやすくなります。また、取引参加者が増えることも歪んだ価格形成を防ぐことになります。極端な価格の形成がされなくなることで、他の市場参加者は安全な取引がしやすくなります。
なお、投資家が信用売り・空売り・ショートによって価格を無理に下げようとしても、行き過ぎれば今度は割安感から買いが入ってくることになります。
信用売り・空売りの注意点
信用売り・空売りの注意点についてです。
貸株料・品貸料やスワップポイントを支払うことがある
株式を借りてきて売りから取引に入る場合には、原則として株を借りてきたことに対する手数料である貸株料を支払う必要があります。空売りが増加していて貸し借りされる株式が不足している銘柄は品貸料が追加で課される場合があります。証券会社によっては他にも手数料が生じる場合があります。
FXの場合は、必ず発生するわけではありませんが、金利差によってスワップポイントを支払わなければいけない場合があります。スワップポイントとは異なる2通貨間では通貨の国ごとの金利水準が違っていて金利水準を調整するためにやりとりされるお金のことです。通貨取引は何らかの通貨を売り、何らかの通貨を買うことがセットになります。
例えば円を売ってドルを買う場合、円を借りてきて売り、ドルを買って保有しているとイメージすると分かりやすいでしょう。借りてきた円では借りた金利を支払い、保有しているドルではドルの金利を受け取るようなイメージです。
低金利の通貨を売り、高金利の通貨を買えばスワップポイントは受け取りになりますが、高金利の通貨を売り、低金利の通貨を買えばスワップポイントは支払いとなります。
株式を借りて売る場合は原則として6か月間という期間がある
株式の信用取引で株式を借りて売る場合には、原則として6か月以内に決済をしなければいけないというルールがあります。そのため、売りから取引に入ったけれど、下落する前に決済をしなければいけないということが発生することもあります。
ただし、最近では6か月という期限がなく、無期限となる取引もあります。
売りは理論上損失が無限大となることがある
売りから入る取引は理論上損失が無限大となる可能性があります。例えば、株式を100円で1株売ったとします。手数料などを考慮しなければ、80円に下落すれば20円の利益ですが、120円に上昇すれば20円の損失です。
株価下落の場合は100円から下がっても0円が下限なので利益の上限は100円ですが、株価上昇の場合は理論上天井がありません。どんどん株価が上昇していってしまっても損失の上限がないのです。ただ、現実には無限に株価が上昇するということもないため、怖がり過ぎる必要もなく、適度に警戒しておくことが大切です。
レバレッジをかけるとリスクが高まる
信用売り・空売り・ショートは危ない取引だと感じる人もいるかもしれませんが、レバレッジをかけて証拠金・保証金の何倍もの取引をするようなことがない限りは、通常の買いから入る時とリスクの大きさはそれほど変わりません。
ただし、レバレッジをかけて証拠金・保証金の何倍もの金額の取引をするとリスクが急激に高まるため注意が必要です。深く考えずに取引を行うと過大なリスクを負ってしまい、資産を大きく減らしてしまう可能性があります。
まとめ
- 投資では、買いから入る取引しかできずに価格が上昇する局面でしか利益が上げられないと、利益を得られる機会が少なくなります。
- 売りからも入ることができる資産を取引する場合には、買いだけでなく、売りからも取引に入れるようにしましょう。相場が下落しても、上昇しても利益が得られるチャンスがあります。