ラップ口座やファンドラップ・ラップ型ファンドの違いと特徴や問題点
記事作成日:2015年11月22日
最終更新日:2022年4月16日
ラップ口座やファンドラップ、ラップ型ファンド(ラップ型投資信託)の違いと特徴、問題点などについてです。ラップ口座は金融機関に投資をお任せするサービスですが、毎年高い手数料が発生するものがある、投資対象の選定が不透明な場合がある、といって問題を抱えていることががあります。商品性をよく検討した上で本当に投資してよいか慎重に考えることが必要です。
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ラップ口座とは
ラップ口座とは証券会社や信託銀行といった金融機関と投資一任契約を結び、資産運用を丸ごと金融機関にお任せする金融商品です。ラップ(Wrap)とは包むという意味で、資産運用に関するサービスが包まれた口座というような意味です。
ラップ口座には大きく分けて2つのタイプがあり、SMA(Separately Managed Account:別々に管理された口座)と呼ばれる最低投資金額が5,000万円や1億円以上といったような富裕層向けの口座と、ファンドラップと呼ばれる最低投資金額が300万円~500万円程度の投資信託に投資する口座があります。
また、変則的なサービスでは、投資一任を行わず投資に関するアドバイスが提供されて、最終的な投資判断は自分で行うというようなサービスもあります。
ラップ口座のうち富裕層向けのSMAとは
富裕層向けのSMAと呼ばれるサービスでは、金融機関に投資を一任してお任せしますが、投資信託に限らず株式や債券などを直接保有します。そのため、多額の資金が必要となり、基本的に最低投資金額が5000万円や1億円といった高額に設定されています。
ラップ口座のうちファンドラップとは
ファンドラップは、金融機関と投資一任契約を結び資産運用をお任せしますが、投資信託だけに投資を行います。そのため、300万円や500万円といった比較的少額でも契約することができます。
ラップ口座のSMAとファンドラップの違い
ラップ口座のSMAとファンドラップの違いは、区分が今後曖昧になってくる可能性がありますが、ファンドラップは投資信託に投資を行うのに対して、SMAは投資信託に限らず株式や債券にも投資を行う点です。SMAが投資信託に投資をしないという訳ではありません。
ラップ型ファンドとは
ラップ型ファンド(ラップ型投資信託)とは、ラップ口座のうち主にファンドラップを投資信託の形にしたもので、資産運用比率を専門家が決定して投資を行う投資信託です。
ラップ口座とラップ型ファンドの違い
ラップ口座は口座を開設してその口座の中で株式や債券、投資信託に投資を行います。ラップ型ファンドはその名の通りファンド、つまり投資信託です。
ラップ型ファンドとバランス型ファンドの違い
ラップ型ファンドは、バランス型ファンドの一種であると考えてよいでしょう。ただし、一般的なバランスファンドは投資対象資産の比率が固定されているのに対して、ラップ型ファンドでは基本的に資産運用の比率は固定ではなく変化するようになっています。
ラップ口座の特徴とは
ラップ口座の最も重要な特徴は基本的に投資が全てお任せになることと、資産運用金額に比例して手数料が発生するということです。
投資は全てお任せ
一部変則的なサービスがありますが、基本的にはラップ口座は証券会社や信託銀行と投資一任契約を結び、資産運用を全てお任せすることになります。
リバランスや比率の変更もお任せ
時価の変動によって基本的な資産運用比率から実際の時価の比率が離れた時にはリバランスを行って基本的な資産運用比率に戻したり、相場環境の変化に応じて基本的な資産運用比率の見直しを行ったりします。
個別の希望に応じた運用
SMAとファンドラップではオーダーメードの度合いが異なりますが、お客さんの個別の希望に応じて運用を行います。ファンドラップの場合にはいくつかのパッケージが用意されているだけという場合もあります。
専門家による運用
ラップ口座のメリットとして専門家による運用ということが挙げられています。ただし、運用成績が保証されているわけではありません。
ファンドラップは投資信託に投資
ラップ口座のうちSMAと呼ばれるサービスでは投信信託に限らず、株式や債券に直接投資することもありますが、ファンドラップは投資信託に投資を行います。
分散投資
ラップ口座ではSMAやファンドラップともに基本的には分散投資が行われます。
最低投資金額がある
ラップ口座のうちSMAと呼ばれるサービスでは最低投資金額が5,000万円や1億円などと比較的高額になっている傾向がある一方、ファンドラップでは300万円や500万円から始められるものもありますが、通常は最低投資金額があります。
手数料は資産運用額に比例
ラップ口座の手数料は、基本的に固定報酬型のものと固定報酬と成功報酬が併用した成果報酬併用型のものがあります。ラップ口座の手数料は口座内での売買の都度発生するのではなく、口座の維持管理や、投資対象資産の売買、情報提供に対する対価として、資産運用金額に対する比率、あるいは儲かった金額に対する比率として定められています。固定報酬の部分はラップ口座で資産運用を行っている限り継続して発生することになります。
固定報酬型
固定報酬型では、資産運用金額に対する一定の比率の手数料が定められていて、資産運用額が大きくなるほど手数料負担が少しずつ軽くなるように設計されています。
固定報酬+成果報酬型
固定報酬に成果報酬を併用する成果報酬併用型では、固定報酬部分は固定報酬単独の手数料パターンよりは抑えられていますが、資産運用で儲かった部分に対して一定の比率で定められた成果報酬が別途発生します。
ラップ型ファンドの特徴
ラップ型ファンドの特徴についてです。
ラップ口座を投資信託に
ラップ型ファンドは基本的にはラップ口座の特徴を持っています。投資信託なので当たり前ですが投資は全てお任せであるということ、リバランスや比率が変更されること、専門家による運用であること、分散投資が行われることなどはラップ口座と同じです。
投資信託という点がラップ口座と異なる
ラップ型ファンドがラップ口座と異なる点は投資信託という点です。
投資信託はそもそもパッケージ商品なので、リスクが低いタイプやリスクが高いタイプなど複数のタイプから投資信託を選ぶというくらいしか選択肢がありません。この点はラップ口座とは異なっています。ただし、ラップ口座のうちファンドラップは事実上パッケージ商品と同じような場合があるので、ファンドラップとは同じ場合があります。
また、投資信託なので1万円前後の少額の資金から投資が可能という点もラップ口座とは異なります。報酬体系も通常の投資信託と同じになります。なお、ファミリーファンド方式のものとファンズオブファンズ方式のもの両方存在するため、ファンズオブファンズは信託報酬が二重に発生している場合がある点に注意が必要です。
ラップ口座やラップ型投資信託の問題点
ラップ口座は手数料が高い場合があることが問題点です。ラップ型投資信託も同様ですが、手数料はラップ口座よりも抑えられていることがあります。ラップ口座の方がオーダーメード的な部分があり、管理に手間がかかることなどが手数料の違いに反映されていると考えられます。
継続的な高い手数料が発生する場合がある
第1の問題点は手数料が高くなってしまうことです。SMAなのかファンドラップなのか、ラップ型投資信託なのかによって手数料率は変わってきますが、特にファンドラップではラップ口座の手数料と個別の投資信託の信託報酬が2重で発生する場合があり、年率で1%を大きく超える手数料の負担になってしまう場合もあります。
しかも、この手数料は1回きりのものではなく、毎年資産運用残高に応じて発生します。もし手数料が年率で1~3%程度発生するなら、年間の期待収益率が1~3%程度のリスク回避的な運用を行うとコストが収益を上回る可能性が高くなります。そのため、リスクを選考しなければならず安全型の運用ができないことになります。
投資対象の選定根拠が不透明な場合がある
問題点の2つ目は、金融機関にとって都合が良い投資対象が選定される危険性があることです。一部サービスでは自社商品に限らず多様な投資対象で運用することを謳ったサービスもありますが、ファンドラップやラップ型投資信託では、どのような基準で投資対象が選ばれているのか見えづらいことがあります。
金融機関にとって都合が良い投資対象とは、信託報酬が高い投資信託を組み入れたり、自社のグループや系列の会社の投資信託を組み入れたりして、自社あるいは自社グループの利益をより増やすことができる投資対象商品のことです。バランス型ファンドでも同様の問題があります。
パッケージ的な商品になりがち
第3の問題点としてに個別の希望に応じた運用を行うとしながらも、ファンドラップを中心にあらかじめパッケージされた商品を選ぶ形態のサービスも多いことで本当の意味で個別に応じた運用ができない場合がある点です。またそもそもラップ型投資信託はパッケージ商品です。
資産運用規模が少額の場合には、個別の担当者が時間をかけて一人一人のお客さんの希望を聞いて、資産運用計画を立てていると採算が悪くなってしまうため、あらかじめ作っておいたいくつかのパッケージの中からお客さんの希望に近いものを選ぶという作業にならざるを得なくなります。
ファンドラップを例に挙げれば高い手数料を払ってパッケージ的な商品を買うくらいなら、自分で信託報酬などの手数料が安い投資信託を選んで購入した方が安くつくはずです。金融機関が提案するパッケージだからといっても運用成績が保証されているわけではありません。
ラップ口座は手数料などから慎重に検討した方が良い場合がある
ラップ口座、特にファンドラップやラップ型投資信託は証券会社や信託銀行といった金融機関が、顧客のすそ野を広げるために提供している戦略的な金融商品と位置付け、顧客に強く推奨することがあります。ラップ口座などでは、専門家に投資を任せられるなどの点が見方によってはメリットとなることもありますが、一方で手数料が高いなどの課題を抱えている場合もあります。手数料は確実なマイナスリターンとなるわけですから、投資する立場からは収益を出すことが難しくなるということを意識しなければいけません。
金融機関に高い手数料を支払うことが資産運用なのではなく、自分の資産を増やすことが資産運用です。ラップ口座で手数料が高い場合は投資家の目線からは慎重に検討した方が良いこともあります。ラップ型投資信託も同様の課題を抱える場合がありますが、手数料が安いものは投資家目線では投資しやすい場合があります。もちろん、手数料が全てではありませんが、投資においてマイナスリターンの要因となりうる手数料に対しては厳格に考える必要があります。
まとめ
- ラップ口座は金融機関に投資をお任せするサービスですが、毎年高い手数料が発生すことがある、投資対象の選定根拠が不透明な場合があるなどの問題を抱えている場合があります。
- 高い手数料が継続的に発生するということは、マイナスリターンが継続的に発生するということで、資産運用をより難しくするため、ラップ口座を利用するのではなく、自分で投資をするほうが手数料負担を避けられることがあります。