入札での応札倍率とは・意味と使い方
記事作成日:2018年4月3日
最終更新日:2021年10月25日
応札倍率とは、国債などで行われる競争入札の応札額(応募された金額)を落札額(実際の落札金額)で割った値(倍率)のことを意味します。落札金額に対して応募金額が何倍あったかによって、需要の強さ・弱さ、人気度合いを把握することができます。
日本の財務省の国債発行での価格競争入札、日本銀行の国債買い入れオペ(公開市場操作)の利回り入札方式での買い入れなどで、応札額(入札への応募金額)と落札額(実際に落札された金額)から計算されて利用されることが多いです。
もちろん、国債に限らず、国庫短期証券、社債、CPなどでも利用できる概念です。また、日本の入札に限らず、海外の国債入札などでも応札倍率の計算は可能です。なお、日本銀行の買い入れオペではJ-REITやETFの買い入れもありますが、買い入れ額の公表となっているため、応札倍率は利用されていません。
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応札倍率の計算例
例えば、国債入札で入札予定額(募集額)2,000億円に対して、6,800億円の応札があり(応札額)、1,998億円が落札された(落札額)場合には、応札倍率は6,800÷1,998=3.40340…≒3.403(倍)と計算されます。小数の処理に決まりはないため、小数第1位、小数第2位、小数第3位など様々な表示が行われます。
国債入札では応札倍率が高いほど需要が強く人気がある
財務省などの発行体が国債などを売却する場合、入札への応募は国債の買いになるため、応札倍率が高いほど、国債の需要が強い、人気があるということを意味します。逆に応札倍率が低いほど、国債の需要が弱い、人気がないことを意味します。
一般的に、応札倍率が高いほど「順調な結果」や「強めの結果」、応札倍率が低いほど「低調な結果」や「弱めの結果」というように表現します。
10年物国債入札など重要な国債の入札で応札倍率が高かった場合、国債への買い需要が強い、人気があるということになり、債券価格の上昇要因(債券利回り(金利)の低下要因)となります。
日本銀行の国債買い入れオペは応札倍率が高いほど売り圧力が強い
ただし、日本銀行の国債買い入れオペは応札倍率の高低と需要の関係が逆になるため注意が必要です。日本銀行の国債買い入れオペは、市場から国債を買い入れるオペレーション(公開市場操作)です。そのため、応札するということは「日本銀行が国債を買い入れる=応札者が日本銀行に国債を売る」というということになります。
そのため、日本銀行の国債買い入れオペは応札倍率が高いほど、売りたい人が多い、売り圧力が強いということになるため、日本銀行の国債買い入れオペの応札倍率が高いと、売り圧力の強さから需給の緩みが意識されて、債券価格の下落要因(債券利回り(金利)上昇要因)となります。
応札倍率は基本的に「応札額÷募集額」ではなく「応札額÷落札額」
理論的には、応札倍率は「応札額÷募集額(入札予定額)」でも良さそうですが、実際の落札額を用いて「応札額÷落札額」で計算されます。
なお、例外があり、実際の落札額が募集額(入札予定額、オファー額)に達しなかった場合、例えば100億円の募集額に対して、90億円しか応札がなかった場合、全額落札となると落札額は90億円となります。
ここで「応札額÷落札額」で計算すると、応札額(90億円)÷落札額(90億円)=1.0(倍)となりますが、これは明らかにおかしいため、「応札額<募集額」の場合(「札割れ」といいます)には「応札額÷募集額(入札予定額)」で応札倍率を計算し、上記の例では応札額(90億円)÷募集額(100億円)=0.9(倍)となります。
まとめ
- 応札倍率とは、国債などの価格競争入札において、応札額を落札額で割った値(倍率)で、落札額に対してどれくらいの応札額があったかを意味します。応札倍率の高低で需要の強弱が判断でき、応札倍率が高い場合は需要が強い、低い場合は弱いと判断できます。
- ただし、日本銀行が市場から国債を買い入れる国債買い入れオペでは、応札は市場参加者が国債を売ることを意味するため、応札倍率が高いほど売り圧力が高いことを意味するため注意が必要です。