債券の種類・分類
記事作成日:2016年4月5日
最終更新日:2021年11月20日
債券は様々な観点から分類しての種類分けすることができます。代表的な分け方が発行体による分類で公共債と民間債、外国債があります。また、満期までの期間による分類、利息の有無による分類、募集対象による分類、担保による分類など様々な分け方をすることができます。債券の種類・分類について説明しています。
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発行体による分類
債券は発行主体によって分類できます。発行体の違いは債券の利払いや償還の信用力に関係するため、債券投資を行う上では重要な要素です。
- 公共債:国や地方自治体が発行する債券
- 民間債:民間の事業者が発行する債券
- 外国債:海外の主体が発行する債券
公共債
国や地方自治体などが発行する債券を公共債と言います。国が発行する債券を国債といいます。政府の関係機関が発行する債券を政府機関債といい政府保証債や財投機関債があります。県や市など地方公共団体が発行する債券を地方債といいます。
民間債
一方で、民間の事業者が発行する債券を民間債といい企業が発行するものは通常社債と呼ばれます。特に金融以外の業種の企業が発行するものを一般社債あるいは事業債と呼び、金融機関が発行するものを金融債と呼びます。
外国債
海外の主体が発行する債券を外国債と呼びますが、まず日本円建てか外国通貨建てかで円貨建て外債(円建て外債)か外貨建て外債に分かれます。円建てなのか、外国通貨建てなのかの違いにより、為替変動リスクを負うかどうかが変わります。
サムライ債
円建て外債は日本国内での資金調達を目的に日本で発行される場合、サムライ債と呼ばれます。
ユーロ円債
日本国外での資金調達を目的に日本国外で発行される場合、ユーロ円債と呼ばれます。このユーロは通貨のユーロという意味ではなく、自国以外の市場のことをさすユーロ市場から来ています。
ショーグン債
外貨建て外債のうち、日本国内での資金調達を目的に日本で発行される場合、ショーグン債と呼ばれます。
通常の外国債
日本国外での資金調達を目的に日本国外で発行されるものは普通の外国債券となります。
満期までの期間による分類
債券は満期までの期間によって分類できます。国債で良く用いられる分類で、発行時の満期までの年限で分類することが多いですが、実際の残存年限で分けることもできます。以下は発行時の満期までの年限での分類です。
- 超長期国債:15~40年満期の国債
- 長期国債:10年満期の国債
- 中期国債:2~6年満期の国債
- 短期国債:3か月~1年満期の国債
国債については満期までの期間によって超長期国債、長期国債、中期国債、短期国債と分けられます。分類によっては年数は多少異なるのですが、おおむね満期まで10年を超えると超長期国債、満期まで10年のものを長期国債、満期まで5年前後のものを中期国債、満期まで1年以下のものを短期国債と言います。上の区分は発行時の満期の年数で分類したものですが、残存年限によっても分類は可能です。
利息の有無による分類
債券は利息の有無によって分類ができます。
- 利付債:利息がある債券
- 割引債:利息がない債券
債券は利息の有無によっても分類ができます。利息があるものを利付債、利息がないものを割引債と言います。割引債は表面利率が0%ですが、利率の事をクーポンと言うことからゼロクーポン債とも言います。
利息がない債券って儲からないんじゃないの?と思うかもしれませんが、そんなことはありません。償還金額(額面金額)「よりも安い金額で発行されるので、償還金額と発行金額の差が利益になります。例えば、100円で償還される債券が98円で発行されれば、満期まで持ち切れば差額の2円が利益となります。
ストリップス債とは
利付債のうち、元本部分と利息部分が分離される債券をストリップ債と言います。元本部分は満期までの割引債、利息部分は利払い日を満期とする割引債として投資することになります。
債券の発行方法
債券の発行には、額面金額と同じ金額で発行する平価発行(額面100円の債券を100円で発行)、額面金額よりも低い金額で発行する割引発行(額面100円の債券を98円で発行)、額面金額よりも高い金額で発行する打歩発行(打歩はだふと読みます、額面100円の債券を102円で発行)の3種類があります。
- 平価発行:額面金額で発行
- 割引発行:額面金額より低く発行
- 打歩発行:額面金額より高く発行
平価発行や打歩発行は利息がないと利益が出ません。そのため平価発行や打歩発行は通常利付債になります。ただし、マイナス金利の導入によって、国債などではマイナスの利回りのようなものがみられ、マイナスの利回りで発行される債券もみられるようになりました。マイナスの利回りとは額面金額と発行金額の差と満期までの利息を全て考慮しても利益が出ずに損失になるということですが、特殊な状況では特殊な利回り、価格の債券も発行される場合があります。
募集形態による分類
債券を募集形態で分類することもできます。
- 公募債:広く募集される
- 非公募債:関係者に募集を行う
債券の募集方法で公募債と非公募債(縁故債)に分けることができます。公募債は一般に広く投資家の募集を行う債券で、非公募債は債券を発行する主体と特別な関係にある人に募集を行う債券で、縁故債とも呼ばれます。非公募債(縁故債)の場合には、関係が深い投資家に募集を行うので、債券発行のためのコストが安く済むとされています。
利率の種類による分類
債券の利率が変化するかどうかでも分類できます。
- 固定利付債:利息の利率が固定されている
- 変動利付債:利息の利率が変動する
債券の利付債は通常表面利率は固定されていて利息の支払い時には毎回同じ金額が支払われます。利率が固定されているものを固定利付債、固定金利の債券というように言います。
しかし、一部の債券は利息が固定されておらず変動するものがあります。個人向け国債でも変動金利型のものがありますが、市場の金利の実勢に応じて利率が変動し、利息の金額が毎回変化するようになっています。利率が固定されておらず変動するものを変動利付債、変動金利の債券というように言います。
変動利付債は、市場金利が上昇した場合に利率も上昇するため利息が多くなります。固定利付債の場合には市場金利が上昇しても利率は変わらないので利息の金額は変わりません。そのため、金利が上昇する場面では固定利付債よりも変動利付債が一般的に有利であると考えられます。
物価連動債とは
利率ではなく元本が変動する仕組みを持つ物価連動債があります。日本では物価連動国債が有名です。物価の変動に伴って元本部分が変動する仕組みになっていて、元本が変動するので償還金額が変化するだけでなく、利息も変化します。
物価連動国債は物価が上昇する時に元本や利息が多くなるため、物価上昇による価値の実質的な目減りを防ぐことができ、インフレに強い債券と言えます。
債券(社債)の仕組みによる分類
債券には特殊な仕組みを持つものがあります。通常は社債で当てはまるため社債について説明しています。
- 普通社債:特殊な仕組みがない社債
- 転換社債:株式に転換することができる社債
- 新株予約権付社債:新株予約権が付いた社債
債券のうち社債には株式に転換することができる社債(転換社債)や新株予約権が付いた社債(新株予約権付社債、ワラント債)があります。
仕組み債とは
上記以外に特殊な価格変動をする仕組み債があります。
発行体が満期前に償還する権利を有するコーラブル債、投資家が満期前に償還できる権利が付いたプッタブル債、特定の指数が一定の水準に達すると償還金額などが変わるノックイン条項がついたノックイン債、元本の払い込みと利息の支払いが同じ通貨で元本の償還が異なる通貨のデュアル・カレンシー債(二重通貨建債)、元本の払い込みと元本の償還が同じ通貨で利息の支払いが異なる通貨のリバース・デュアル・カレンシー債(逆二重通貨建債)など様々な仕組みを持った債券があります。
仕組み債は仕組みが分かりづらく、リスクを正確に認識することが難しいため、仕組みが分かりづらい、理解しづらいと感じた場合は、投資対象としない方が無難です。
担保の有無による分類
債券の担保などの有無で分類ができます。
- 担保付債券:担保がついた債券
- 保証付債券:保証がついた債券
- 無担保債券:担保も保証もない債券
債券には、担保や保証がついていない無担保債券のほかに、担保が付いた担保付債券、保証がついた保証付債券があります。
担保付債券は、発行体の財産から優先的に弁済を受けることができる一般担保付のものと特定の財産に担保がつけられている物上担保付きのものがあります。一般担保付債券は電力会社が発行する電力債が有名で、東日本大震災発生以降、一般担保がどうなるのかということで一時話題となりました。
保証付債券は、発行体以外の第三者が元本や利息の支払いを保証している債券で政府関係機関が発行する債券を政府が保証する政府保証債などがあります。子会社の債券を親会社が保証するような場合もあります。
資産担保証券とは
担保の有無と混同しやすいですが、資産担保証券は特定の資産を裏付けとして発行される証券の事を言います。住宅ローン債権、事業用不動産のローン債権、自動車ローン債権、クレジットカード債権などが裏付けとなって証券が発行されます。
まとめ
- 債券には、発行体で分けて公共債と民間債、外国債があります。債券では利払いや償還が確実に行われるために発行体の信用力が重要となります。
- 債券には、利息がある利付債と利息がない割引債があります。