社債投資のメリットとデメリット(個人投資家向け)
記事作成日:2015年11月7日
最終更新日:2021年10月25日
個人投資家が社債投資を行う場合のメリットとデメリットについてです。資産運用を行う場合、投資対象として債券を組み入れると、債券は満期保有の場合には利回りが決まっているためデフォルト等がなければリターンが安定し、ポートフォリオのリスクの分散にもつながります。また、社債は国債よりもリスクが高い分、利回りも高くなるなどのメリットがあります。しかし、社債投資には、銘柄選択の幅が狭い、流動性が低い、個人向けの社債には条件が良くないものがあるなどのデメリットもあります。
スポンサーリンク
社債投資のメリット
社債投資のメリットは国債などと比べると少しだけ利回り(利率、金利)が高いことや、予定通り利払いや償還が行われた時のリターンがあらかじめ決まっているということが挙げられます。
預金や国債よりも利回りが高い
社債は銀行預金や国債と比べると利回りが高いため、より多くのリターンを期待することができます。国債の金利がほとんどゼロだったとしても、社債は少し金利が高いというようなことがあります。そのため、預金や国債ではほとんどリターンが期待できない時、社債が投資対象として相対的に高い魅力度を持つことがあります。
予定通り支払われるなら利回りが決まっている
社債の発行体が債務不履行を起こさず、予定通り利払いや償還が行われる場合は投資のリターンは決まっており、投資成果を予測しやすいということがメリットとなります。株式投資の場合は将来の株価がどうなるか分からないためリターンを事前に確定させることはできませんが、社債の場合は発行体の破綻などがない限り利回りが決まっていることになります(変動金利の場合を除く)。
社債投資のデメリット
社債は機関投資家向けに発行されることが多く、個人投資家が投資しづらい側面があります。特に、銘柄選択の幅が狭いため投資しづらいということがデメリットとして挙げられます。また、流動性が低いこともデメリットです。
買える銘柄の種類が少ない
株式の購入しやすさと比べると社債は購入しづらいです。個人投資家向けに社債を発行している企業はそれほど多くありません。また、購入できる時期も限られています。いつでも自由に購入できるわけではありません。
そのため、タイミングが悪いと社債投資をしようと思っても条件にあう銘柄を見つけられないこともあります。
流動性が低い
社債の流通市場は株式投資の流通市場ほど売買が活発ではありません。銘柄によってはほとんど流動性が期待できないようなものがあります。流動性が低下していると、適切な市場の価格形成を期待することは難しく、価格形成が歪んでしまうことも考えられます。
特にリーマンショックのように金融危機が発生し証券市場全体が混乱している時や、特定の企業の経営危機が報じられ売りたい投資家が殺到した時などには、極端な価格形成が行われる可能性があります。
また、社債は基本的に証券会社との相対取引となるため適正な取引価格よりも高く購入することになったり、安く売ることになったりする可能性がある点も課題です。
まとまった購入資金が必要な場合がある
社債は個人向け国債や投資信託など他の投資対象と比べると最低購入金額が高い場合があります。例えば、最低購入金額が、10万円以上、100万円以上といったような具合です。手元資金の状況によっては気軽に投資できない場合があります。
また、社債投資は途中売却も可能ですが、満期までの持ち切ることもあるため、長期間資金が拘束されます。まとまった資金がないと購入が難しいことがあります。
銘柄分散が難しい
社債のリターンは限られる一方、デフォルトが発生すると損失は大きくなるため社債投資ではデフォルトする銘柄を選ばないことが基本です。特に特定の銘柄にリスクが集中していると万が一デフォルトしてしまった時のダメージが大きくなります。
デフォルト銘柄を基本的には選ばないことが重要ですが、万が一デフォルトしてしまった時にも銘柄を分散していれば損失が軽減されるため、社債投資でも銘柄分散は重要となります。
社債投資を行う場合、銘柄を分散して投資を行いたいところですが、銘柄の分散を行うためには多額の資金が必要となりますし、投資対象の銘柄自体もそれほど多くはありません。また流動性も劣るため株式投資のような機動的な銘柄の組み替えも困難です。
信用力評価が難しい
社債投資で最も重要なことは発行体がデフォルト(債務不履行)するのかどうかという信用力の評価です。格付会社の評価は参考にはなりますが、リーマンショックの時に実際見られたように安全だとされる格付けが付与されていても安全でないというも起きえます。
企業が経営危機に陥る場合には売り上げが不振で徐々に経営が傾いてしまうパターンと、突発的なイベントが発生して経営が傾いてしまうパターンがあります。業界自体が衰退しているとか、徐々に売り上げが減少しているとか比較的予測しやすい状況であれば格付けもある程度有用なのかもしれませんが、突発的なイベントを予測することは困難で格付け会社の格付けは参考にならない場合もあります。ニュースなどで経営不振が明らかになってから後追いの形で格下げが行われることも多く、先回りして格付けが引き下げられ経営危機を予測するのに役立つということばかりではありません。
社債投資では、信用力を評価することが重要ですが、個人で社債の発行体の信用力を調査することには限界があり、信用力の評価はとても難しいです。
個人向け社債は条件が良くない場合も
社債といえば通常は機関投資家が投資を行います。しかし、敢えて個人向け社債を発行するということは何か事情があるとも考えられます。機関投資家では通常投資対象としないような低い格付けの銘柄である、機関投資家が高い利回りを要求するが低い利回りで発行したいなどの事情があると考えられます。
また、個人向けに社債の募集を行うのは機関投資家とは違った手間がかかることからも、敢えて個人向けに発行される社債は、条件が良いとは言えない投資対象である可能性があります。
投資信託はコストがかかりリターンが低い場合も
社債など債券に分散投資をしたいという場合は、投資信託を利用すると便利な場合があります。投資信託であれば個人投資家では投資できないような様々な債券に分散投資をすることができます。しかし、低金利の環境下では社債の利回りが低くなってしまう一方で、信託報酬などのコストはしっかりと発生するため、リターンが低くなり旨味がほとんどなくなってしまうこともあります。
まとめ
- 個人投資家にとっての社債投資のメリットは預金や国債などへの投資と比べると少し高めの投資成果が期待できることです。
- 一方、社債投資は銘柄が少ない、流動性が低い、信用力評価が難しい、条件が良くない場合があるなどのデメリットがあります。