原油価格と金利の関係
記事作成日:2018年4月9日
最終更新日:2022年3月20日
原油価格や原油以外の商品(コモディティ)価格と金利の関係についてです。原油価格等が上昇すると、基本的に金利上昇要因(債券価格下落要因)となります。逆に原油価格等が下落すると、基本的に金利低下要因(債券価格上昇要因)となります。ただし、原油価格等の上昇によるインフレが一時的とみられた場合、原油価格等の上昇によって景気後退の可能性が高まった場合は、原油価格等の上昇が金利上昇要因とならないことがあります。
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原油価格等の上昇は金利上昇要因
原油価格や原油以外の商品(コモディティ)価格(以下「原油価格等」といいます)と金利の関係は、基本的に原油価格等が上昇すると、金利の上昇要因となる傾向があります。景気が良いことを背景に原油価格等が上昇していることがあること、原油価格等の上昇はインフレをもたらすことが理由です。
原油価格等の上昇の背景に景気回復がある場合
原油や原油以外の商品は景気が良くなると需要が高まるため、原油価格等が上昇しているということは、景気が良いという場合があります。景気が良いということは、各国の金融政策において、金融緩和が縮小・停止されたり、金融引き締めが行われたりするため、金利は上昇に向かうことになります。
原油価格等の上昇が各国にインフレをもたらす場合
また、景気回復などを背景としない原油価格等の上昇であっても、原油などは経済活動に幅広く使われるため、原油価格等が上昇すれば、世界的なインフレを招くことになります。物価上昇率が高まれば、各国の金融政策は金融引き締めが行われる、金融緩和が行われなくなる、金融緩和が縮小されるなどの動きがみられるようになるため、金利上昇要因となります。
原油価格等の下落は金利低下要因
逆に原油価格等が下落すると金利低下要因となります。原油価格等の下落が景気悪化を背景とした原油などの需要減少を示している場合があること、原油価格等の下落が各国の物価上昇率を押し下げることが背景です。
原油価格等の下落の背景に景気悪化がある場合
景気が悪くなると、経済活等が停滞するため、原油や原油以外の商品(コモディティ)に対する需要は伸び悩みます。原油などに対する需要が弱くなると、原油価格等は押し下げられていきます。原油価格等が下落しているということが、景気悪化を示唆している場合があるのです。
景気が悪化すると、景気を刺激するため金融緩和が実施される、金融引き締めが中止・転換されるなどの動きが出てくるため、金融政策の変更等を通じて景気の悪化は金利低下要因となります。
原油価格等の下落が各国の物価上昇率を押し下げる場合
原油などの商品(コモディティ)はエネルギー源として活用されたり、各種製品の原材料として活用されたりするなど、経済活動において幅広く利用されています。そのため、原油価格等が下落すると各国の物価上昇率が押し下げられることになります。
物価上昇率が低下すると、中央銀行は金融引き締めの必要がなくなったり、金融緩和の余地が出てくることになるため、金融政策は緩和方向に動き、金利低下要因となります。
一時的なインフレは金融引き締めをもたらさないことも
原油価格等の上昇によって引き起こされるインフレ(原油輸入によってインフレとなることもあるため、輸入インフレともいわれます)は、中央銀行による金融引き締めをもたらさないため、金利への影響が限定的なものとなることがあります。
中央銀行は物価が上昇した場合でも、一時的な上昇だとみなせる場合には、敢えて金融政策による対応を行わず、静観する場合があるからです。
中央銀行が金融引き締めを行ったとしても、価格が高騰した原油の輸入が物価上昇の原因となっている場合、金融引き締めによって物価上昇を止めることができないからです。
過度な原油価格等の上昇は景気後退を招く場合も
過度な原油価格等の上昇は、原材料価格等の上昇を招き、企業業績を圧迫することがあるため景気後退要因となることがあります。急激な原油価格等の上昇があった場合には、基本的には金利上昇要因となるのですが、景気後退の可能性が強く意識された場合は、金利上昇要因とはならないことがあります。
まとめ
- 原油価格等の上昇は基本的に金利上昇要因(債券価格下落要因)に、原油価格等の下落は基本的に金利低下要因(債券価格上昇要因)となります。
- ただし、原油価格等の上昇によるインフレが一時的とみられた場合は原油価格等の上昇が金利に影響を与えない場合もあります。また、原油価格等の上昇によって景気後退の可能性が高まった場合は、原油価格等の上昇が金利上昇要因とならないことがあります。