新興国債券とは
記事作成日:2018年6月14日
最終更新日:2021年11月10日
新興国債券(エマージング債券、エマ債)とは、経済が発展段階の途中にある新興国が発行する債券のことです。通常は国債を指しますが、政府機関債や社債も新興国債券となります。新興国とは、1人当たりの国民総所得(GNI)や国民総生産(GDP)が相対的に低いか中程度の国で、経済が発展段階の途中にあって、高い経済成長が続いている国や潜在的な成長余地が高い国を意味します。新興国債券の固有の特徴やリスクについてです。
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新興国債券はドル建てと現地通貨建てがある
新興国債券はドル建てで発行されているものと、新興国の現地通貨建てで発行されているものがあり、それぞれ次のような特徴があります。
ドル建て新興国債券の特徴
ドル建ての新興国債券は発行国以外の投資家が投資しやすいようにドル建てとなっているため現地通貨建ての新興国債券よりも投資が容易で、取引が活発に行われていることがあります。また、ドル建てなので発行国の通貨の価格変化に直接は影響されず、新興国通貨のリスクを取らなくても済むことが特徴です。
現地通貨建て新興国債券の特徴
現地通貨建ての新興国債券は発行国以外の投資家が投資しづらいことがあります。また、発行国固有の要因によって利回り(価格)の変動が起き易くなっています。発行国となる新興国通貨建ての債券なので新興国債券の価格変動リスクだけでなく、新興国通貨の価格変動のリスクもあります。
新興国債券は利回りが高め
新興国債券は先進国債券よりも利回りが高めになっていることが多く、新興国債券投資は金利変化などによって価格が下落しなければ先進国債券よりも高いリターンを得られる可能性があります。
新興国債券の利回りが高い理由としては、「名目金利水準=潜在成長率+期待インフレ率+リスクプレミアム」のうち、新興国は人口増加率が高いことや経済の成長余地が大きいことから潜在成長率が高いこと、政治・経済・社会的なリスクがあるためリスクプレミアムが大きくなりがちであることなどが影響しています。
新興国のカントリーリスクは高い
新興国では政治・経済・社会情勢が安定していないことがあり、反政府運動の激化、クーデター、内戦の勃発、強権的・独裁的な政治、急激なインフレ、外貨準備の急速な減少、生活物資の不足など相場に重大な影響を及ぼしかねない事件・事象が発生することがしばしばあります。
新興国では先進国ではあまり考えられないようなリスクが顕在化することがあり、カントリーリスクが高いと言えるため注意が必要です。
新興国債券は価格変動リスクが大きい
新興国債券の市場での取引量は先進国債券よりも通常は少ないことから、新興国債券の方が少ない資金の動きで大きな価格変動を起こす可能性があり、価格変動リスクが大きいと言えます。
新興国債券では特定の国で何らかの悪材料が明らかになると、投資家が一斉に投資資金を引き上げる動きとなることがあり、先進国債券では考えられないような急激な価格の下落が発生することがあります。
新興国債券の注意すべき変動要因
新興国債券は債券であるため新興国の変動要因は基本的に先進国債券の変動要因と同じとなりますが、先進国債券とは異なる動きをする場合や注意を要する部分があります。
新興国債券はリスク回避時に売られ利回りが上昇する
新興国債券は先進国債券と異なった利回り・価格の変化をする場合があります。特徴的なのが投資家がリスク回避姿勢を強めた時の動きで、悪材料が出た場合などに投資家がリスク回避姿勢を強めると安全資産に投資資金が集まるため、米国債やドイツ国債、日本国債などの先進国債券が買われて、利回りは低下し、価格は上昇することになります。
しかし、悪い材料が出て、相場環境が良くない場合には、新興国債券はリスクが高い資産であるため、投資家が資金を引き上げるために売却の動きが強まります。そのため、投資家のリスク回避姿勢が強まると新興国債券は売られて、利回りは上昇し、価格は下落する傾向があります。
- 先進国債券(一部除く):安全資産
- 新興国債券:リスク資産
新興国に対する懸念で利回りが急上昇する
新興国債券は債券なので発行体の信用に対する懸念が生じると利回りが急上昇(価格は急落)することがあります。新興国では、経済や社会が先進国よりも不安定であることが多いため、金融危機や通貨危機、債務危機などが発生しやすく、特定の国に対する懸念が強まると投資家が一斉に投資資金を引きあげて新興国資産全般が急落することがあるのです。
新興国債券利回りは「米国債券利回り+対米国債スプレッド」
新興国債券利回りは、米国債券利回りを基準として「米国債利回り+米国債との利回り差(対米国債スプレッド)」という形で表現されることが多くなっています。
新興国債券利回りは、米国の利回り(米国金利)が上昇すれば連動して上昇し、米国金利が低下すれば連動して低下します。一方で、新興国債券に対する投資家の強気・弱気の見方の変化が対米国債スプレッドに反映されることでも新興国債券利回りは変動します。
まとめ
- 新興国債券は利回りが高いことがメリットですが、価格変動リスクも大きいことがデメリットです。
- 投資家のリスク回避姿勢が強まると安全資産である先進国債券は買われて利回りが低下(価格は上昇)しますが、新興国債券は売られて利回りが上昇(価格は下落)する傾向があります。