ジェネリック国債利回り・ジェネリック債券利回りとは
記事作成日:2018年5月4日
最終更新日:2021年10月25日
債券投資において目にするジェネリック日本国債利回り、ジェネリック米国債利回りなどの言葉についてです。通常ジェネリックというと医薬品を想像しますが、債券でジェネリック(generic)国債の利回りとは、その時々で金利指標としてふさわしい国債銘柄の金利(利回り)を時系列につなげたデータということになります。
スポンサーリンク
ジェネリック債券利回り(ジェネリック国債利回り)の例
一番最近に発行された銘柄(カレント銘柄)、1回前の銘柄、2回前の銘柄、3回前の銘柄があったとします。カレント銘柄は現時点で一番最後に発行された銘柄で金利の指標となります。
しかし、カレント銘柄が発行される前は1回前の銘柄がカレント銘柄であり、その時点では最新の銘柄でした。そして、1回前の銘柄が発行される前は2回前の銘柄が、2回前の銘柄が発行される前は3回前の銘柄が最新の金利指標となる銘柄であったことになります。
その時点ごとに、一番指標としてふさわしい銘柄(通常は最新の銘柄)の利回りをつなぎ合わせたものがジェネリック国債(債券)の利回りとなります。このことを図示したものが下記グラフになります。
なお、指標としてふさわしい銘柄として、一番最新の銘柄ではなく、一番発行量が多い銘柄、一番取引が活発な銘柄を採用する例もありますが、基本的には一番最新の銘柄を指標銘柄とするのが最近の考え方です。
同じ債券の金利(利回り)だけでは有用な金利データとならない
なぜ異なる銘柄の金利をつなぎ合わせるのか疑問が生じるかもしれません。
債券は発行されてから時間が経過すると満期までの期間が短くなることによりタームプレミアムが少なくなっていくため利回りが低下していきます(時間経過によってリターンが得られることをロールダウン効果といいます)。一方で、新たな債券が次々と発行されていきます。
もし、ある債券の利回りだけに注目して金利動向を分析しようと思っても、順イールドの状況では時間経過によって金利は低下していくため、市場の金利動向を正確に追っていくことはできません。上記図表でカレント債以外の過去に発行された債券(既発債)は時間経過に伴って利回りが低下していることが確認できます。
最新の債券の利回りをつなぎ合わせたのがジェネリック債券
そのため、その時点ごとに一番最近(最後)に発行された同種の債券(発行時点で残存年限が同じ債券)だけの利回りを時系列につなげるようにしたものがジェネリック債券なのです。新しい債券(新発債)が発行されるたびにデータとして採用する銘柄が変わっていっことが特徴です。
国債などでないとジェネリックにするだけのデータが揃わない
定期的に一定量の債券が発行されないとデータが整ったジェネリック債券のデータが作成できませんが、定期的に一定量発行される債券は通常国債や政府機関債などに限られるため、ジェネリック債券としてジェネリック国債(ジェネリック日本国債やジェネリック米国債)のデータが有名です。
国債は多くの国で一定期間ごとに、一定量発行され、かつ発行される際の残存年限も多様であるため、多数のジェネリックの系列が作成されています。
金利を分析する際は通常ジェネリックの系列を使う
金利動向を分析する際には、ある特定の銘柄の金利だけに注目するのではなく、ジェネリックの系列のデータを利用します。そうしないと、時間経過による金利低下の影響が多く含まれてしまい、市場の金利動向を正確に分析できないのです。
日頃目にする債券の利回りを基にした市場金利のデータは同じ銘柄のデータが継続的に使われているのではなく、途中で銘柄が入れ替わっているのです。
まとめ
- 債券は時間経過に伴って金利(利回り)が低下していくため、同じ銘柄の利回りを市場の金利データとすると大抵の場合常に低下傾向を示してしまい、市場金利の動向が分かりません。
- そのため、その時々で一番指標としてふさわしい最新の銘柄の利回りを時系列につなぎ合わせたジェネリックの系列(ジェネリック国債利回りなど)が市場の金利データとして広く活用されています。