ハイイールド債とは
記事作成日:2019年7月5日
最終更新日:2021年11月9日
ハイイールド債(High yield bond)とは、格付けが低く信用力が低い企業が発行する、利回りが高い債券のことを意味します。
利回りが高い債券が該当するので、新興国債券が含まれても良さそうなのですが、一般的には先進国の格付けが低い事業債などのことを意味します。例えば、売れ行きの低迷などによって財務状況が悪化した企業、設立されてから時間がそれほど経過していない企業、景気の変動などの影響を受けやすく経営が不安定な業界の企業などが挙げられます。米国のハイイールド債が投資対象として有名です。
ハイイールド債は、格付けが低い(ダブルB格以下)非投資適格とされる企業が発行する債券をさし、ジャンク債とも呼ばれます。
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ハイイールド債の利回りは「国債利回り+スプレッド」
ハイイールド債は、信用力が低い分だけ利回りが高くなっています。国債の利回りに信用リスクなどに応じて利回りが上乗せされたものがハイイールド債の利回りです。上乗せ金利(利回り差)のことをスプレッドと呼び、リスクが小さい債券はスプレッドが小さくなり、リスクが大きい債券はスプレッドが大きくなります。
つまり、「ハイイールド債利回り=国債利回り+スプレッド(上乗せ金利)」となります。
ハイイールド債への投資方法
個人投資家は、通常ハイイールド債に直接投資するのではなく、ハイイールド債に投資している投資信託やETFに投資することで、間接的にハイイールド債に投資することが基本となります。
投資信託やETFの場合は、ハイイールド債の銘柄を複数保有することになるため、単一銘柄を持つ場合と比べるとデフォルトリスクによる影響が緩和されていることになります。
ハイイールド債の特徴やメリット
ハイイールド債は相対的に利回りが高いことが大きなメリットの1つです。
ハイイールド債は相対的に利回りが高い
ハイイールド債の魅力の1つが相対的に高い利回りです。投資では高い利回りを求めるのであれば、何らかのリスクを取らなければいけませんが、ハイイールド債は相対的に高い信用リスクが高い利回りにつながっています。
信用リスクが高いと、投資家は低い利回りでは投資の魅力を感じないため、高い利回りで発行され、流通する時も高い利回りでないと売買が成立しないのです。
そのため、ハイイールド債は信用リスクが高い分、利回りも高くなるのです。
景気拡大局面ではハイイールド債の債券価格は上昇する傾向
景気が拡大する局面では企業業績が拡大し、設備投資意欲が高まることで資金需要も高まるため、一般的に金利(国債利回り)は上昇します。
一方で、景気が拡大すると、信用力が低い企業による利息の未払いなどの債務不履行(デフォルト)が起こる可能性が低くなるため、ハイイールド債の上乗せ金利(スプレッド)は縮小する傾向があります。
景気拡大局面では、基本的に国債利回りは上昇するため国債の債券価格は下落します。一方、ハイイールド債は国債利回りの上昇を上乗せ金利(スプレッド)の縮小が補う形になるため、ハイイールド債の債券価格は上昇する傾向があります。
国債とは価格変動の特徴が異なるため分散投資につながる
景気拡大局面では国債価格は利回りの上昇に伴って下落する傾向がありますが、ハイイールド債の価格はスプレッドが縮小するため上昇する傾向があります。逆に景気後退局面では国債価格は利回りの低下に伴って上昇する傾向がありますが、ハイイールド債の価格はスプレッドが拡大するために下落する傾向があります。
つまり、国債とハイイールド債は異なった値動きをするため、相関係数が低く、国債とハイイールド債を組み合わせると分散投資につながることがあります。ただし、ハイイールド債はデフォルトリスクが高いことに注意が必要です。
ハイイールド債のデメリットやリスク
ハイイールド債はデフォルトのリスクが相対的に高い、景気後退時には流動性が低下することがある、といったことがデメリットです。
ハイイールド債は債務不履行(デフォルト)リスクが高い
ハイイールド債は信用力が低い企業が発行する債券なので、信用力が高い企業が発行する債券と比較すると利息(クーポン)の支払いや満期などでの元本の償還が約束通り行われず、債務不履行(デフォルト)となるリスクが高くなります。
個人投資家はハイイールド債に直接投資するのではなく、投資信託やETFを通じてハイイールド債に投資するため、ハイイールド債の単一銘柄のみを持つということは基本的にないと考えられますが、投資信託やETFでも注意が必要です。
ハイイールド債に投資する投資信託やETFでは通常多数のハイイールド債の銘柄を保有しますが、深刻や景気後退時や金融危機の発生時などには、多数のハイイールド債が同じようにデフォルトとなってしまうことがあるからです。
景気後退局面ではハイイールド債の債券価格は下落する傾向
景気が後退する局面では中央銀行が金融緩和を行うこと、投資家による安全資産として国債が買われることなどから国債利回りは低下する傾向があります。
一方で、景気後退局面では企業業績が悪化し、財務の健全性が損なわれるため、信用力が低い企業は債券の利息の支払いなどが滞り、債務不履行(デフォルト)となる危険性が高まります。そのため、国債との利回り差(スプレッド)は拡大する傾向があります。
景気後退局面では、国債利回りは基本的に低下するため国債価格は上昇します。一方、ハイイールド債は国債利回りの低下よりも上乗せ金利(スプレッド)の拡大の方が大きくなるため、ハイイールド債の債券価格は下落する傾向があります。
ハイイールド債は流動性リスクが高まることがある
ハイイールド債は信用力が低い企業の債券であるため、景気後退局面では信用リスクが高まり、買い手が付きづらくなり、流動性が低くなるか、ほとんどなくなることがあります。
市場で売買が困難となって流動性が低下すると、価格変動が大きくなり、本来妥当な価格以上に下落してしまい安値となってしまうことがあります。また、そもそも手放したいと思っても売却が困難となってしまい、売れないでいる間に価格が一層下落してしまうこともあります。
まとめ
- ハイイールド債とは、一般的には信用力が低い企業が発行し利回りが高い債券のことを意味します。
- ハイイールド債は景気拡大局面で、国債との利回り差(スプレッド)が縮小することによって債券価格が上がる傾向があります。逆に景気後退局面ではスプレッド拡大により債券価格が下がる傾向があります。