期待理論(純粋期待仮説)とは
記事作成日:2018年5月9日
最終更新日:2021年10月29日
期待理論(純粋期待仮説)とは、長期金利は将来の投資家が期待(予想)する短期金利の平均であるという考え方です。長期金利の年までの期間を短期間の金利で運用を繰り返した場合の各短期金利の平均値(利回りなので通常幾何平均)であるという理論・仮説です。期待理論(純粋期待仮説)では、投資家の金利の期待によってイールドカーブ(金利の期間構造)が変化するということになります。
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長期金利は将来の短期金利の予想の平均で決まるという考え
長期金利というと通常は10年金利を指しますが、便宜的に5年の金利を例にします。例えば、「現在の5年の金利」は、「現在の1年金利、1年後の1年金利の予想、2年後の1年金利の予想、3年後の1年金利の予想、4年後の1年金利の予想の平均値」に等しくなるということです。
もし、「現在の5年金利」と「現在の1年金利、1年後の1年金利の予想、2年後の1年金利の予想、3年後の1年金利の予想、4年後の1年金利の予想の平均値」に差があるのであれば、両者は同じ期間の投資になるため両者間で裁定が働き同水準になるまで金利が調整されると考えられるためです。
長期金利と短期金利の裁定の考え方の例
例えば、現在の5年金利が1.0%、1年金利が0.5%の場合を考えます。将来の短期金利(将来の予想1年金利)が上昇していくと投資家が予想していて、現在の長期金利(本来は10年金利を指しますが便宜的に5年としています)で運用した場合と、期間中短期金利で繰り返し運用した場合の各短期金利の平均は同じになっていることが確認できます。
もし、長期金利だけで運用した場合と、短期金利を繰り返して運用した場合で運用結果(1年当たりの利回り)に差が出るならば、利回りが高い方に投資家が投資をするため買われて利回りは低下し、低い方は投資家が投資をしないため買われず利回りは上昇し、両者が均衡するはずです。
長期金利で5年運用 | 短期金利で5年運用 | ||
---|---|---|---|
現在の5年金利 | 1.0% | 現在の1年金利 | 0.5% |
1年後の予想1年金利 | 0.8% | ||
2年後の予想1年金利 | 1.0% | ||
3年後の予想1年金利 | 1.2% | ||
4年後の予想1年金利 | 1.5% | ||
利回り | 1.0% | 5年間平均 | 1.0% |
(備考)長期金利は通常10年金利を指しますが、便宜的に5年金利として事例を作成しています。金利は全て年率です。5年間平均は幾何平均です。
(出典)「よい家計」運営者作成
期待理論(純粋期待仮説)とイールドカーブ
実際のイールドカーブ(金利の期間構造)は投資家の期待や思惑に沿って形状が変化するため、期待理論(純粋期待仮説)はイールドカーブの形状変化を引き起こす1つの要因であると考えられます。期待理論(純粋期待仮説)であれば逆イールドを説明しやすいと言えます。
一方で、イールドカーブは通常短期金利よりも長期金利が高い右上がりであって、短期金利が長期金利を上回る右下がりの逆イールドはあまり見られません。仮に期待理論(純粋期待仮説)を前提とするならばほとんどの場合投資家は将来の金利は高くなると期待していることになりますが、やや極端であると考えられます。
イールドカーブがほとんどの場合に順イールドで右上がりになっている要因として、別の右上がりにする要因が関係していると考えるのが妥当です。
まとめ
- 期待理論(純粋期待仮説)とは、金利の期間構造(イールドカーブ)は投資家の金利の期待(予想)に基づいて決定されるという考え方です。長期金利は将来の短期金利の予想の平均であると考えます。
- イールドカーブは、通常右上がりとなるため、短期金利<長期金利となっています。期待理論(純粋期待仮説)では常に投資家は将来の短期金利の上昇を予想していることになるため、実際の金利の期間構造を説明するには不十分で、イールドカーブを決めている要因は他にもあると考えるのが自然です。