債券のGスプレッド・Tスプレッド・名目スプレッド・Iスプレッドとは
記事作成日:2019年3月5日
最終更新日:2021年10月19日
債券のスプレッド(利回り差)には様々なものがありますが、基本的に対象となる国債等の利回りを差し引くことによって比較的簡単に求めることができるのが、Gスプレッド、Tスプレッド、名目スプレッド、Iスプレッドとなります。他にも債券のスプレッドには、Zスプレッド(ゼロボラティリティスプレッド)やOAS(オプション調整後スプレッド)などがあります。
スポンサーリンク
Tスプレッドとは
Tスプレッド(T-spread)とは、「Treasury Bond(米国債)」のTに由来し、社債などの債券と同じ残存年限の国債の利回り差という意味になります。比較対象は原則として実際に存在する国債です。基本的にGスプレッドやNスプレッドと同じ概念のスプレッドとなります。Tスプレッドはbp(ベーシスポイント、0.01%=1bp)で表示されることが多く、スプレッドが30bpの場合、「T+30」といったように表現されます。
例えば、残存5年の社債の利回りが3.5%、同じく残存5年の国債利回りが3.0%であった場合、3.5%-3.0%=0.5%=50bpがTスプレッドとなり、「T+50(bp)」と表現されることがあります。
国債以外の金利が比較対象となることもあります。例えば、国債ではなくLiborが比較対象となる場合はLiborの頭文字を取りLスプレッドと呼ぶことがあり、比較対象とする金利によって呼び方が変わることがあります。
Gスプレッドとは
Gスプレッド(G-spread)とは、「Government Bond(国債)」のGに由来し、社債などの債券と同じ残存年限の国債の利回り差という意味になります。Tスプレッドと基本的に同じ概念のスプレッドとなります。ただし、実際にスプレッドを求めたい債券と同じ残存年限の債券がない場合に、線形補完によってスプレッドを求める場合を意味することがあります。
Gスプレッドはbp(ベーシスポイント、0.01%=1bp)で表示されることが多く、スプレッドが10bpの場合、「G+10」といったように表現されます。
例えば、残存4年の社債の利回りが2.8%の時、残存3年の国債利回りが2.0%、残存5年の国債利回りが3.0%であったとすると、残存4年の国債利回りは線形補完によって(2.0+3.0)÷2=2.5%と推定されるため、2.8%-2.5%=0.3%=30bpがGスプレッドとなり、「G+30(bp)」と表現されることがあります。
TスプレッドとGスプレッドの違い
TスプレッドとGスプレッドは基本的に違いがありませんが、Tスプレッドは実際に存在する国債の利回りを比較対象としていて、Gスプレッドは線形補完によって推計された国債の利回りを比較対象としているという違いがある場合があります。ただし、特に区分される同じ意味で用いられる場合があります。
名目スプレッドとは
名目スプレッドとは、「Nominal Yield Spread」(名目利回りスプレッド)または「Nominal Spread」(名目スプレッド)とも表現され、社債などの債券と同じ残存年限の国債の利回り差という意味になります。基本的にTスプレッドやGスプレッドと同じ意味になります。
例えば、残存10年で利回りが4.5%の債券があり、残存10年の国債利回りが4.0%だった場合、4.5%-4.0%=0.5%=50bpとなり、これが名目スプレッドとなります。
「Nominal Yield Spread」なのでNスプレッド(N spread)とされても良さそうですが、Nスプレッドと言う言葉は一般的ではないようです。
債券の全てのキャッシュフローを対応する各残存年限の国債利回りをパラレルシフトさせた利回りで現在価値に割り戻すことによって求めるZスプレッドと対比する意味で、通常の単に差し引いたスプレッドという意味で名目スプレッドが用いられることがあります。
Iスプレッド
Iスプレッド(I-spread)とは「Interpolated spread」(補完されたスプレッド)に由来し、実際に存在する国債利回りではなく、2つの国債利回りからの線形補完によって求めた利回りと比較することによって求めるスプレッドのことを意味します。「Interpolated」は補完という意味です。
例えば、残存4年の社債の利回りが2.8%の時、残存2年の国債利回りが2.0%、残存5年の国債利回りが2.6%であったとすると、残存4年の国債利回りは線形補完によって2.0+(2.6-2.0)×(2/3)=2.4%と推定されるため、2.8%-2.4%=0.4%=40bpがIスプレッドとなります。
Iスプレッドの比較対象は国債のイールドカーブとされることもありますが、特にスワップカーブを比較対象とした場合をIスプレッドと呼ぶと説明される場合があります。
まとめ
- Tスプレッド、Gスプレッド、名目スプレッドは、基本的には社債などの債券利回りから同じ残存年限の国債利回りを差し引いた利回り差を意味します。
- Iスプレッドは、社債と同じ残存年限の国債利回りを線形補完によって算出した上で、利回り差を求めたスプレッドです。