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債券のZスプレッドとは

記事作成日:2019年3月6日
最終更新日:2021年10月18日

債券のZスプレッドとは

Zスプレッド(Z-spread)とは、その債券の利息(利子、クーポン)と元本の支払いを各支払い時点の「ゼロクーポンレート(割引国債利回りなど)+Zスプレッド」で現在価値に割り戻し合計した時に、債券の価格と一致するように求めたスプレッドを意味します。Zスプレッドは各支払い時点のレートに上乗せするスプレッドなので、ゼロクーポンレートのイールドカーブ全体に上乗せする金利を求めることになります。

Zスプレッドはゼロボラティリティスプレッド(Zero-Volatility Spread)、静的スプレッド(static spread、スタティックスプレッド)などとも呼ばれ、名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)とは異なり金利の期間構造が反映されるため、より精緻な分析が可能となる反面、算出に手間がかかります。

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Zスプレッドの計算方法・具体的な計算例

Zスプレッドは、債券等の満期までの利息や償還される元本のキャッシュフローを支払い時点の「ゼロクーポンレート(割引国債利回りなど)+Zスプレッド」で現在価値に割り戻して合計した時に債券の価格と一致するようZスプレッドを試行錯誤して求めます。

Zスプレッドの計算例1(金利の期間構造が右上がり:順イールドの場合)

残存3年の債券があり、1年後、2年後、3年後に各1.5円の利息が支払われ、3年後には元本100円も償還される現在の価格が95.0006円であったとします。

この時、残存1年のゼロクーポンレートは2.16%、残存2年のゼロクーポンレートは2.40%、残存3年のゼロクーポンレートは2.45%であったと仮定し、ZスプレッドをZとすると1~3年の利息・元本のキャッシュフローを現在価値に割り戻す式は次のようになります。

  • 1年後の利息:1.5÷(1+0.0216+Z)1
  • 2年後の利息:1.5÷(1+0.0240+Z)2
  • 3年後の利息:1.5÷(1+0.0245+Z)3
  • 3年後の元本:100÷(1+0.0245+Z)3

債券の市場での価格が95.0006円であるため、上記の現在価値の合計=95.0006となるようにZを求めると、Z≒0.00500=0.500%=50.0bpとなるため、Zスプレッドは50.0bpとなります。

Zスプレッドの計算例2(金利が右下がり:逆イールドの場合)

Zスプレッドのメリットは金利の期間構造をスプレッドに反映させられることです。先程と同じように残存3年の債券があり、1年後、2年後、3年後に各1.5円の利息が支払われ、3年後には元本100円も償還される現在の価格が95.0006円であったとします。

ただし、対応するゼロクーポンレート(割引国債利回りなど)は先程と異なり、残存1年のゼロクーポンレートは3.24%、残存2年のゼロクーポンレートは2.85%、残存3年のゼロクーポンレートは2.45%と右下がりで逆イールドであったとします。この時、ZスプレッドをZとすると1~3年の利息・元本のキャッシュフローを現在価値に割り戻す式は次のようになります。

  • 1年後の利息:1.5÷(1+0.0324+Z)1
  • 2年後の利息:1.5÷(1+0.0285+Z)2
  • 3年後の利息:1.5÷(1+0.0245+Z)3
  • 3年後の元本:100÷(1+0.0245+Z)3

債券の市場での価格が95.0006円であるため、上記の現在価値の合計=95.0006となるようにZを求めると、Z≒0.00490=0.490%=49.0bpとなるため、Zスプレッドは49.0bpとなります。

Zスプレッドは金利の期間構造を反映

上記の計算例1と2ではともに満期3年のゼロクーポンレートは同じ2.45%、同じ利息と元本のキャッシュフロー、同じ債券価格であるにもかかわらず、3年目までの金利の期間構造に差があるためスプレッドに違いが出ました。計算例2では逆イールドであったため満期となる3年までの利回り水準が計算例1よりも高くなっており、その分スプレッドは小さくなりました。

Zスプレッドと名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)との違い

Zスプレッドと名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)との違いは金利の期間構造を反映するかどうかです。金利の期間構造を反映したZスプレッドの方が、より精緻に債券の評価をすることができます。

ただし、Zスプレッドは利息と元本のキャッシュフローと各年限のゼロクーポンレート(割引国債利回り等)から試行錯誤によって求めなければいけないため、計算が面倒です。名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)は同じ残存年限の国債利回りを差し引くだけなので、簡単です。

上記の例となった残存3年の債券(1年後、2年後、3年後に各1.5円の利息が支払われ、3年後には元本100円が償還され、価格が95.0006円)の最終利回りは複利ベースで約2.948%となります。

上記計算例1や2と同じように残存3年のゼロクーポンレートが2.45%であったとすると、名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)は2.948%-2.450%=0.498%=49.8bpとなります。ちなみに名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)の期間構造に関しては、残存期間に対応する国債利回りが全期間固定されているという前提で計算されています。そのため、全期間2.450%となるフラット(平たん)なイールドカーブが想定されて計算されていることになります。

なお、Zスプレッドと名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)はどちらもキャッシュフローの変動を反映していないため、繰上償還の可能性がある債券(コーラブル債)の評価をする場合には、キャッシュフローの変動の影響を反映したOAS(オプション調整後スプレッド)を用います。

Zスプレッドと名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)の共通点

  • 国債などとの利回り差を示す
  • キャッシュフローの変動は反映されていない

Zスプレッドと名目スプレッド(Gスプレッド・Tスプレッド)の違い

  • Zスプレッドは金利の期間構造を反映して算出され、名目スプレッドは反映されない
  • Zスプレッドの計算は複雑になるが、名目スプレッドの計算は簡単

まとめ

  • Zスプレッドとは、債券の利息や元本のキャッシュフローを「各支払い時点に対応するゼロクーポンレート(割引国債利回り等)+Zスプレッド」で現在価値に割り戻して合計した時に、債券価格と一致するように求めたスプレッドを意味します。
  • Zスプレッドを用いると金利の期間構造が反映されるため債券の精緻な分析が可能となりますが、Zスプレッドの計算は手間がかかります。また、キャッシュフローの変動を反映していないため、満期前に繰上償還の可能性がある債券の評価には向いていません。

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【債券のZスプレッドとはの記事は終わりです】

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