米ドルと金価格は逆方向に動きやすい関係
記事作成日:2017年8月22日
最終更新日:2022年1月8日
米ドルと金価格の関係についてです。米ドルと金価格は逆の方向に動きやすい逆相関の関係があります。もちろん、米ドルと金価格が同時に上昇する局面もあるのですが、米ドルと金価格が逆方向の値動きをする局面も多く見られます。米ドルと金価格の逆相関の背景・理由には、米ドルが変化すると米ドル以外の通貨建ての金価格が変化すること、米ドルと金が代替資産の関係にあることなどがあります。
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米ドルと金価格が逆向きの動きとなりやすい理由
米ドルと金価格が逆向きの動き、逆相関になりやすい理由についてです。
米ドルが変化すると米ドル以外の通貨建ての金価格が変化するため
米ドルと金価格が逆の値動きとなりやすい理由の1つに米ドルが変化すると米ドル以外の通貨建ての金価格が変化することが挙げられます。
米ドルが安くなるとドル以外の通貨建てで金が買いやすくなる
金は通常米ドル建てで取引が行われます。米ドル建ての金は1トロイオンス(金の取引単位)で何ドルというような価格となります。ドルが安くなると、ドル以外の通貨を持っている投資家にとって自国通貨建てでの金価格が下がるため買いやすくなり、金が買われやすくなり価格が上昇することがあります。逆にドルが上がるとドル以外の通貨で金を買いづらくなります。
ドル安・ドル高と金価格の関係
例えば金1トロイオンス=1,500ドルとします。円を保有している主体が金を購入する場合を想定します。1ドル=100円の場合には、金1トロイオンス=1,500ドル=150,000円となります。
ドル安の場合は他の通貨建ての金価格が下落
1ドル=80円の円高ドル安になると、金1トロイオンス=1,500ドル=120,000円となり、円高ドル安になったことで円建ての金価格が下がりました。150,000円と比べると120,000円はとても買いやすくなったことが分かります。一般的には価格が下がると需要が増加しますが、円建てでの金価格が下落することで、金に対する需要が増加し買われます。
ドル高の場合は他の通貨建ての金価格が上昇
逆に、1ドル=120円の円安ドル高になると、金1トロイオンス=1,500ドル=180,000円となり、円安ドル高となったことで円建ての金価格が上がりました。150,000円と比べると180,000円はとても買いづらくなったことが分かります。一般的に価格が上がると需要が減少するため、金が買われなくなり、価格が下落します。
価格面からドル上昇=金価格下落でドル下落=金価格上昇
金は米ドルの通貨圏以外の地域・国からの需要も大きいため、ドルが上昇・下落することによって、他通貨での価格が変動し需要の増減を通じて価格に影響することになります。
価格面から、ドルが上昇すると金価格は需要の減少から下落する傾向があり、ドルが下落すると金価格は需要の増加から上昇する傾向があります。
他のドル建て商品(コモディティ)でも同じ関係がある
金に限らず、ドル建てで取引される商品はドルと商品価格に逆の関係があります。ただし、ドル保有主体とドル以外の保有主体の需要の違い、価格に対する需要の変化の度合い(需要の価格弾力性)などによっても関係の強さが変わってきます。
価格が変化しても需要があまり変わらないような、生活や産業に必須の商品であれば、ドル価格がどのように変化しても買わざるを得ないため、需要の変化が少ないといったこともあります。
米ドルと金が代替資産の関係があるため
米ドルと金価格が逆の値動きとなりやすいもう1つの理由に米ドルと金が代替資産の関係にあると認識されていることが挙げられます。
昔から金は貴重な価値を持っていた
金は、希少な金属で昔から貴重な価値を持つ資産であると認識されてきました。戦前から戦後にかけて、金が貨幣(紙幣・硬貨)の価値の裏付けとなる金本位制が採用されていた時期がありました。現在では金と貨幣との直接的な関係性はありませんが、現在でも金の価値に対する信頼感は非常に高いものとなっています。
金かドルか
そのため、世界で信頼が高い通貨であるドルと実物資産である金は、金かドルかという代替的な関係に至っているのです。
何らかの事情でドルに対する信頼が揺らぐ場合、リスク回避的な局面においては現物の資産である金を資金の逃避先として拠り所にします。逆にドルに対する信頼が高まる場合、リスク選好的な局面では金からドルに資金が移動するのです。
「金はドルと並ぶ通貨」や「金はドルの代替資産」といったような表現がされますが、ドルと金が代替関係にあることから、ドルと金の価格が逆の動きをすることがあるのです。
まとめ
- 米ドルと金価格は逆の値動きをすることがありますが、理由の1つに米ドルの価格が変わると、米ドル以外の通貨建てでの金価格が変化することが挙げられます。米ドルが下落すると、米ドル以外の通貨建てでの金価格が下落し、金が買われるようになるため金価格が上昇します。
- 米ドルと金価格の逆相関のもう1つの理由に、米ドルと金が代替資産の関係にあるということが挙げられます。リスク回避的な場合には金が買われ、リスク選好的な場合にはドルが買われるため、ドルと金が逆の動きをするのです。