貿易収支と為替レートの関係
記事作成日:2015年8月26日
最終更新日:2022年2月16日
貿易収支と為替レートの関係についてです。海外との貿易取引で輸出と輸入のどちらが多いかということを示す貿易収支は為替レートにも影響を与えます。通貨が異なる2国間で貿易取引が行われた場合、どちらかの国の通貨建ての取引となりますが、通貨を交換する場面が出てくるためです。貿易収支が黒字なら自国通貨高、赤字なら自国通貨安の要因となります。
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貿易収支とは
貿易収支とは輸出金額から輸入金額を差し引いたものです。プラスなら貿易黒字、マイナスなら貿易赤字です。貿易黒字の国は輸出金額が輸入金額よりも多く、貿易赤字の国は輸入金額が輸出金額よりも多くなります。
貿易取引に使われる通貨
貿易取引で使われる通貨は取引相手や商習慣によって異なりますが、ドルやユーロ、円、人民元などが利用されます。日本の場合は、財務省「貿易取引通貨別比率」によると輸出取引と輸入取引ともにドルの比率が最も高くなっています。2021年下半期の輸出取引では49.5%がドル建て、輸入取引では69.4%がドル建てとなっています。日本円も使われることがありますが、外貨建て取引も多く、自国通貨建て取引、相手国通貨建て取引の両面から貿易収支と為替レートの関係を考える必要があります。
輸出取引の場合
輸出取引の場合の為替レートについてです。
相手国通貨建て取引
自国から他国へ輸出をする場合、相手国通貨建ての場合は輸出業者が受け取った相手国の通貨を自国通貨に替えて国内に持ち込むと自国通貨高要因になります。
日本の例ではドル建て取引で輸出をするとドルで代金を受け取ります。ドルを売って円を買うと円高要因です。
自国通貨建て取引
自国通貨建て取引の場合は取引相手が支払いのため取引相手の国の通貨を売って輸出業者の国の通貨を買うため、やはり自国通貨高要因になります。
日本の例では円建て取引で輸出をすると円で代金を受け取ります。この円は取引相手がドルを売って円を買い調達したもので、円高要因になります。
輸入取引の場合
輸入取引の場合の為替レートについてです。
相手国通貨建て取引
他国から自国に輸入をする場合、相手国通貨建ての場合は輸入業者が代金を支払うため自国通貨を売って相手国通貨を買うので、自国通貨安要因になります。
日本の例ではドル建て取引で輸入をするとドルで代金を支払うため、円を売ってドルを買うため円安要因となります。
自国通貨建て取引
自国通貨建て取引の場合は輸入業者が代金を自国通貨で支払います。取引相手は受け取った通貨を売り相手国通貨を買うため、やはり自国通貨安要因になります。
日本の例では円建て取引で輸入をすると円で代金を支払います。円を受けとった取引相手は円を売ってドルを買うことになり、円安要因になります。
貿易黒字は通貨高、貿易赤字は通貨安要因
貿易取引では輸出取引は自国通貨高要因、輸入取引は自国通貨安要因となります。輸出が輸入より多い貿易黒字の場合には、相手国通貨を売って自国通貨を買う量が多くなるため、自国通貨高要因が強くなります。
逆に輸出より輸入が多い貿易赤字の場合には、自国通貨を売って相手国通貨を買う量が多くなるため、自国通貨安要因が強くなります。
実際の為替レートは実需以外の要素でも動く
貿易活動など実際の経済活動に伴って発生する通貨取引需要を実需と言いますが、実需以外の投資・投機的な動きによる取引も多いため、実際の為替レートは実需以外の要素でも動きます。
まとめ
- 貿易取引を行うと通貨を自国通貨か相手国通貨に交換する場面があるため通貨の売買が発生します。
- 輸出取引は自国通貨高要因、輸入取引は自国通貨安要因となり、貿易収支が黒字なら自国通貨高、赤字なら自国通貨安の要因となります。