バリアンススワップ・ボラティリティスワップとは
記事作成日:2020年10月25日
最終更新日:2021年10月13日
バリアンススワップ・ボラティリティスワップとは、特定の想定元本に対する株価などの価格変動の大きさを交換するスワップ取引です。バリアンスは価格変動の分散、ボラティリティは分散の平方根(標準偏差)となります。
バリアンススワップは、特定の想定元本に対する、現在から将来の特定の時点までに実現したバリアンス(分散)と取引開始時点での固定バリアンス(バリアンススワップレート、分散のストライク(権利行使する値))を交換するスワップ取引です。
ボラティリティスワップは、特定の想定元本に対する、現在から将来の特定の時点までに実現したボラティリティと取引開始時点での固定ボラティリティ(ボラティリティスワップレート、ボラティリティのストライク)を交換するスワップ取引です。
バリアンススワップやボラティリティスワップは、価格変動の大きさを直接的に取引対象としたい場合に用いられます。
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バリアンススワップやボラティリティスワップの取引の流れ
バリアンススワップやボラティリティスワップは、一定の想定元本に基づく将来の実現バリアンスまたは実現ボラティリティと、取引開始当初に定めた固定バリアンス(バリアンススワップレート、分散のストライク)または固定ボラティリティ(ボラティリティスワップレート、ボラティリティのストライク)を交換する取引です。
しかし、実際の取引では取引終了時に「想定元本×(実現バリアンス-固定バリアンス)」あるいは「想定元本×(実現ボラティリティ-固定ボラティリティ)」による差金決済によって、1度だけ取引当事者のどちらかの支払いが行われて取引が終了することが一般的で、通常のお互いに支払いを行うスワップ取引とは取引の流れが違うことが特徴です。なお、調整のため途中で何らかの支払いが行われる場合もあります。
バリアンススワップのリターン(将来の実現バリアンスの受け手側)
想定元本×(実現バリアンス-固定バリアンス)
※価格変動が大きくなると利益となり、変動が小さいと損失となります。
ボラティリティスワップのリターン(将来の実現ボラティリティの受け手側)
想定元本×(実現ボラティリティ-固定ボラティリティ)
※価格変動が大きくなると利益となり、変動が小さいと損失となります。
バリアンススワップやボラティリティスワップとオプションとの違い
株価などのボラティリティに投資を考える場合、現時点から大きく株価などが変動すると考えると、オプションの合成戦略であるロングストラドル、ロングストラングル、ショートバタフライスプレッドを構築することが考えられます。株価などが大きく動いた場合は利益を得ることができます。
逆に株価などの価格に大きな変動がないと考える場合は、ショートストラドル、ショートストラングル、ロングバタフライスプレッドなどを構築することが考えられます。株価などの変動が小さかった場合、利益を得ることができます。
また、単純なバニラオプションもボラティリティが価格構成要素となっています。
そのため、合成オプション戦略やバニラオプションでボラティリティに投資することも可能であると言えますが、これらの手法にはボラティリティ以外の要素が含まれおり、ボラティリティのみに投資しているとは言い難い面があります。
一方、バリアンススワップやボラティリティスワップは基本的にボラティリティのみに投資していると考えられるため、ボラティリティに投資したいと考えている投資家にとって有益であると考えられます。
バリアンススワップとボラティリティスワップの違い
バリアンス(分散)の平方根(√分散)がボラティリティとなります。バリアンススワップのリターンは「想定元本×(実現バリアンス-固定バリアンス)」となり、バリアンスの変動に対して線形の関数で表現できます。大雑把に表現するとバリアンスオプションのリターンを示す関数をF(x)とすると「F(x)=a×(分散)+b」のようなイメージになるのです。
一方、ボラティリティは分散の平方根で示されますが、ボラティリティスワップのリターンは「想定元本×(実現ボラティリティ-固定ボラティリティ)」となり、分散の変動に関して線形の関数とはなりません。
単純に価値が算出できない場合のスワップの価値の評価は、何らかの複製されるポートフォリオの価値を評価することによって行うことができると考えられますが、分散は比較的簡単に複製が可能であるとされるため、分散の線形関数となるバリアンススワップは価格評価が容易であると考えられる一方、線形関数とはならないボラティリティスワップはバリアンススワップと比べると価格評価が容易ではないと考えられます。
つまり、バリアンススワップやボラティリティスワップの違いは、バリアンス(分散)に連動するかボラティリティに連動するかという違いのほかに、実務的に価値評価がしやすいかどうかということが挙げられます。また実務的には、バリアンススワップやボラティリティスワップは、その時々によって取引のしやすさが違うということもあります。
まとめ
- バリアンススワップ・ボラティリティスワップとは、特定の想定元本に対する株価などの価格変動の大きさを交換するスワップ取引です。バリアンスは価格変動の分散、ボラティリティは分散の平方根(標準偏差)となります。
- バリアンススワップやボラティリティスワップは、価格変動の大きさを直接的に取引対象としたい場合に用いられます。