不動産投資(実物不動産・現物不動産)とREIT投資の比較
記事作成日:2017年8月13日
最終更新日:2022年1月24日
不動産投資(実物不動産・現物不動産)とREIT投資(上場しているREIT、日本ではJ-REIT、を想定しています)の比較についてです。実物不動産投資は経営の側面があり、投資家自身で物件の選定や維持管理が必要で、分散投資がしづらいものの、取得時に融資を受けられるという特徴があります。一方、REITは投資家が物件の選定や維持管理をする必要がなく、REITが分散して不動産に投資しますが、価格変動が大きいという特徴があります。
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実物不動産投資とREIT投資の比較
実物不動産投資とREIT投資の特徴を比較すると次のようになります。
相違点 | 実物不動産投資 (現物不動産) | 上場REIT投資 (不動産投資信託) |
---|---|---|
性質 | 経営 | 投資 |
投資対象 | 小規模の不動産中心 | 大規模な不動産中心 |
物件選定 | 投資家自身 | REIT |
維持管理 | 投資家自身 | REIT |
分散投資 | しづらい | しやすい |
投資金額 | 数百万円~ | 数万円~ |
融資 | 可能 | 基本的になし |
費用 | 諸費用+税金 | 売買手数料+税金 |
節税 | 所得税・相続税対策も可能 | 難しい |
流動性 | 低い | 高い |
価格変動 | 小さい | 大きい |
利回り | 大きい場合も | 相対的に低い傾向 |
不動産投資は経営でREITは投資
実物不動産投資は投資というよりも実態は経営になります。一方でREITは不動産の取得や維持管理などは全てREIT任せになるため投資になります。企業に投資するために株式を買うのと同じように、不動産に投資するためにREITを買うという感じになります。
投資対象
実物不動産投資は、どのくらいの規模でやるかによっても異なりますが、集合住宅の1室の場合もあれば、戸建て、アパート1棟などもあります。しかし、個人では大規模な不動産投資は難しいため、中小規模の物件が中心になります。
REITは大規模な物件への投資も可能で、オフィスビル、商業ビル、物流施設、ホテル、ヘルスケア施設、住居などへの投資を行います。
物件の選定
実物不動産投資では、物件の選定が重要になります。不動産投資に関して専門的な知識・経験が要求されます。
REITの場合には、REITの銘柄を選定する必要はありますが、物件選択は自ら行う必要はありません。REITが物件を選定します。
物件の維持管理
実物不動産投資では、物件の維持管理は自ら行う必要があります。管理会社に委託することもできますが、委託する手続きは自分で行う必要があります。
REITでは、自ら物件の維持管理を行う必要はありません。REITが対応することになります。
分散投資
実物不動産投資では、複数の不動産に投資することも可能ですが、分散投資を行いづらいことがデメリットです。
REITの場合は、複数の不動産に分散して投資するため、REITを購入した時点で不動産の分散投資が行われていることになります。
投資金額
実物不動産投資では、数百万から数千万、億円単位の投資になります。ただし、融資を受けることになるため、自己資金は少なくても投資が可能です。
REITは数万から十数万円の銘柄が中心となりますが、相場状況によって価格帯は変化します。REITは小口投資が可能であるということがメリットになります。
融資・レバレッジ
実物不動産投資では、銀行などの金融機関から融資を受けて投資を行うことが可能です。そのため、レバレッジをかけることが可能で、少ない自己資金で大きな利益を得ることも不可能ではありません。
REIT投資の場合には、基本的に融資を受けることはありません。信用取引でレバレッジをかけることが可能ですが、融資を受ける場合よりレバレッジは小さくなります。
費用
実物不動産投資では、不動産投資に関して諸費用が掛かります。仲介手数料、登記費用、リフォーム費用、維持・管理に関する費用、不動産取得税、固定資産税、都市計画税、所得税(不動産所得、事業所得、譲渡所得等)などが発生します。
REIT投資は売買手数料、所得税(分配金・譲渡益課税、NISAなら非課税となる場合も)が必要になりますが、REITの側で不動産投資に関する諸費用が発生しています。
節税
実物不動産投資においては不動産所得や事業所得は給与所得との損益通算可能であるため、所得税の節税につながる場合があります。また、実物不動産投資は現金のままで資産を保有しているよりも、土地や建物として保有した場合の評価額が低くなることがあるため、相続税の節税につながる場合があります。
REITの場合は、株式の売買益などと損益通算が可能な場合がありますが、給与所得との損益通算はできないため、節税の余地は限られています。
流動性・換金性
実物不動産投資は流動性・換金性は低いと言えます。不動産を実際に売却するまでには相当の時間が必要で、希望するタイミングや金額で売却できるとは限りません。
上場しているREITは上場株式と同じように取引所の取引日であれば取引時間内に自由に売買ができ、商いも成立しやすいため、流動性・換金性は高いです。
価格変動
実物不動産の価格変動は基本的に緩やかです。不動産の価格は日々急激に変化するような性質のものではありません。
上場しているREITは、株式と同じように取引所で取引されるため、価格は大きく変動します。REITの方が価格変動リスクは大きいと考えられます。ただし、REITが投資している不動産の価格変動が大きい訳ではありません。
利回り
実物不動産の利回りは工夫や物件選定次第で高めることも可能です。一方、REITは不動産投資に投資法人が介在しているので、その分投資家に回ってくる利益は少なくなります。ただし、REITでは個人の不動産投資では投資が難しいような大規模な不動産に投資できるという部分は利回りのプラス要因になります。
総合的に見ると、工夫次第で実物不動産投資の(実質)利回り>REITの(分配金)利回りということになりやすいです。ただし、REITは市場取引によるREIT価格(投資口価格)自体の変化が大きいため、株式投資の株価上昇のようなキャピタルゲインによる利益が大きくなることがあります。
ただし、REITの投資法人は収益の大部分を投資家に分配金として支払うような制度設計になっているため、REIT価格(投資口価格)の変動は需給的な要因も大きいと考えられます。
まとめ
- 実物不動産投資(現物不動産投資)は実態として経営、REITは投資という性質があります。
- 実物不動産投資(現物不動産投資)は、不動産を取得する際に融資を受けることが可能であることが特徴ですが、REITは分散投資を行いやすいという特徴があります。