REIT(不動産投資信託)価格の変動要因(上昇・下落要因)
記事作成日:2017年8月16日
最終更新日:2022年1月20日
REIT(不動産投資信託)価格の変動要因(上昇要因と下落要因)についてです。REITの裏付けとなる不動産価格、賃料単価、稼働率はREITの価格変動要因となります。金利や金融政策の動向もREIT価格の重要な価格変動要因となります。そのほか、REITは市場で売買が行われるため、REITの需給や投資家心理も価格変動要因として重要になります。
スポンサーリンク
REIT(不動産投資信託)価格の変動要因と影響
REITの価格変動要因とその影響についてまとめた表が次の表になります。ただし、複数の要因が影響する場合や、要因が価格に影響するまでの期間が違う場合もあり、要因と価格変化の影響の関係が明確に分からない場合もあります。
変動要因 | REIT価格への影響 | |
---|---|---|
不動産価格 | 上昇 | ↑上昇 |
低下 | ↓下落 | |
賃料単価 | 上昇 | ↑上昇 |
低下 | ↓下落 | |
不動産稼働率 | 上昇 | ↑上昇 |
低下 | ↓下落 | |
金利 | 上昇 | ↓下落 |
低下 | ↑上昇 | |
金融政策 | 緩和 | ↑上昇 |
引き締め | ↓下落 | |
景気 | 回復 | ↑上昇 |
後退 | ↓下落 | |
物価 | 上昇 | ↑上昇 |
下落 | ↓下落 | |
株価 | 上昇 | ↑上昇 |
下落 | ↓下落 | |
住宅政策 | 取得促進 | ↑上昇 |
取得抑制 | ↓下落 | |
海外REIT | 上昇 | ↑上昇 |
低下 | ↓下落 | |
投資家心理 | リスク選好 | ↑上昇 |
リスク回避 | ↓下落 | |
REIT需給 | 需要強い (供給弱い) | ↑上昇 |
需要弱い (供給強い) | ↓下落 |
不動産価格
REITの投資対象となっている不動産価格(土地価格・建物価格)が上昇するとREITの含み益が増加することになるため、投資法人の純資産額が増加することになります。そのため、REIT価格の上昇要因となります。
逆に不動産価格が下落すると、REITの資産の価値が減少することから、REITの下落要因となります。
賃料単価
REITの重要な収入源である賃料の単価が上昇すると、賃料収入の増加により投資家に配分可能な利益が増加することになるため、REITの価格上昇要因になります。地域の不動産の空室率が下がると賃料が上がりやすくなります。
一方で、賃料の単価が下落すると、賃料収入の減少により投資家に配分可能な利益が減少することになるため、REITの価格下落要因になります。地域の不動産の空室率が上がると賃料が下がりやすくなります。
不動産稼働率
REITの投資している不動産への入居者が増えて、不動産の空室が減って稼働率が上がると、賃料収入の増加につながるためREITの価格上昇要因となります。不動産の供給が減少すると空室率が下がり、稼働率が上がることがあります。
一方で、不動産への入居者が減る、あるいは退去者が増えることによって稼働率が下がると、賃料収入の減少につながるためREITの価格下落要因となります。不動産の供給が増加すると入居者の奪い合いとなるため、空室率が上がり、稼働率が下がることがあります。
金利
金利が上昇すると、REITの資金調達コストが増加すること、相対的に債券の魅力が高まり、REITの魅力が低下することからREITの価格下落要因になります。
金利が上昇すると、REITの資金調達コストが減少すること、相対的にREITの魅力が高まり、債券の魅力が低下することからREITの価格の上昇要因になります。
金融政策
金融緩和が行われると、金利低下につながることから、REITの価格上昇要因になります。
金融引き締めが行われると、金利上昇につながることから、REITの価格下落要因になります。金融緩和の縮小も金融引き締めと同様の効果があります。
日本の場合には日本銀行がJ-REITを買い入れているため、J-REITの保有方針がREIT価格に影響を与えることがあります。
景気
景気が回復に向かうと、不動産市場も回復に向かうこと、物価も上昇すること、株価が上昇し投資家マインドが好転することなどがREIT価格の上昇要因となります。一方で、金利が上昇したり、金融引き締めが行われたりすると下落要因となります。
景気回復局面の初期には、上昇要因が勝りREIT価格の上昇につながる傾向がありますが、景気回復局面の後半に金利上昇が顕著になるとREIT価格下落につながります。
景気が後退に向かうと、不動産市場が悪化すること、物価が弱含むこと、株価が下落し投資家マインドが悪化することなどがREIT価格の下落要因になります。一方で、金利が低下したり、金融緩和が行われたりするとREIT価格の上昇要因となります。
景気後退局面の初期には下落要因の影響が強くなりますが、景気後退から回復に向かう局面では金融緩和などがREIT価格の上昇につながる場合があります。
物価
物価が上昇すると不動産価格や賃料単価の上昇に結びついてREIT価格の上昇要因となることがあります。物価が下落すると不動産価格や賃料単価の下落に結びついてREIT価格の下落要因となることがあります。
ただし、物価とREIT価格の関係は影響が表れるまで時間がかかる場合もあり、明確には確認できないこともあります。
株価
株価が上昇すると、株式と同様に市場で売買されるREITも買われて上昇要因となることがあります。逆に株価が下落すると、株式と同様にREITも売られて下落要因となることがあります。
住宅政策
政府の住宅政策で住宅取得を促すような場合、住宅取得以外の政策に関する理由で不動産需要が強まるような場合には、不動産市場の改善につながるため、REIT価格の上昇要因となります。
政府が住宅政策を縮小したり、住宅取得を抑制したり、住宅取得以外の政策に関する理由で不動産需要が弱まる場合には、不動産市場の悪化につながるため、REIT価格の下落要因となります。
海外REIT
海外REITの価格が上昇すると、国内のREITもつられて上昇する場合があります。世界的にREIT市場に対して強気の見方から買われるような場合があることや、上昇に出遅れても国際的な割安感から買いが入ることがあることなどが背景です。
海外REITの価格が下落すると、国内のREITもつられる形で下落する場合があります。世界的にREIT市場に対して弱気の見方が強まり売られるような場合と、相対的にREITが高い国で利益確定売りなどが出やすくなることなどが背景です。
投資家心理
上昇しているREITは証券取引所で株式と同じように売買されるため、投資家心理の状況も重要な価格変動要因となります。投資家心理がリスク選好的な局面ではリスク資産であるREITは買われて上昇する傾向があります。
逆に投資家心理がリスク回避的な局面ではリスク資産であるREITは売られて下落する傾向があります。
REIT需給
REITの需要が強まるあるいは供給が弱まると、市場では買いが優勢となりREITの価格は上昇します。需要が弱まるあるいは供給が強まると、市場では売りが優勢となりREITの価格は下落します。
REITの需給に影響を与える要因には次のようなものがあります。
REITの投資法人の増資
REITの投資法人が増資を行うと、REIT市場ではREITの供給が増えることになります。
REITの新規上場
REITの新規上場が相次ぐと、REIT市場ではREITの供給が増えることになります。
REITの上場廃止
REITが破綻など何らかの理由で上場廃止となった場合には、供給が減ることになります。ただし、REITが破綻するような局面では供給が減っても、経済環境が悪いことが想定されるため別の要因で価格下落につながる可能性が高いと考えられます。
投資家のREIT売却
投資家が保有しているREITを売却すると供給が増えることになります。海外投資家がREITを売却するような場合、日本銀行が保有しているREITの売却をするような場合、J-REITに投資する投資信託がJ-REITを手放す場合などが想定されます。
投資家のREIT購入
投資家のREIT購入意欲が高まると需要が強まることになります。日本銀行が金融政策の一環としてREITを買い増すような場合、投資信託などがREITの購入を行う場合、個人投資家の間でREIT人気が高まるような場合などが想定されます。
まとめ
- REITの価格変動要因には、REITが投資している不動産の価格・賃料単価・稼働率、金利、金融政策、景気、物価、株価、住宅政策、海外REIT、投資家心理、REITの需給などがあります。
- ただし、REITの価格変動においては、複数の要因が影響すること、要因が価格に影響するまでの期間も異なることなどから、変動要因と影響の関係が明確に分からない場合もあります。