バイアンドホールドとは
記事作成日:2019年9月26日
最終更新日:2021年6月17日
バイアンドホールド(buy and hold)とは、一度株式などを購入したら長期間保有を継続する投資戦略のことを意味します。長期保有によって企業の業績の拡大による値上がり益を得られることや売買を小刻みに重ねてもタイミングをなかなか効率的には行えないということ、繰り返し売買を行うと手数料や税金の負担が相対的に重くなることなどがバイアンドホールド戦略の背景にあります。
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バイアンドホールドと効率的市場仮説
バイアンドホールドの考え方の背景には効率的市場仮説があるとされています。効率的市場仮説とは、市場には十分な情報が流れていて、投資家は合理的に売買を行うので、株価など市場の価格は高くもなく安くもなく適切な値付けがされているので、割安・割高な銘柄を選ぶことや、割安・割高なタイミングを見極めることで利益を上げようとしても上手くいかないというような考え方です。
バイアンドホールドに当てはまると、割安・割高な銘柄の選別やタイミングの見極めを行っても、その時々で適切な価格なのだから、企業利益が増えていくかどうかという点に注目して投資を行い、企業利益の拡大による株価の上昇を期待すべき、ということになります。
効率的市場仮説はある程度は現実の市場価格に当てはまりますが、実際には市場価格の形成にしばしば歪みが生じることがあり、銘柄選択や売買タイミングを工夫することで利益を上げることができます。そのため、バイアンドホールドはある程度妥当な考え方ですが、市場にはバイアンドホールドでは拾い切れない投資機会が存在することになります。
バイアンドホールド投資戦略のメリット
バイアンドホールドのメリットは、経済成長が続けば長期間の保有がプラスのリターンをもたらしやすい場合があること、売買手数料や税金のコストを抑えられる場合があることなどがあります。
経済成長が続けば長期的には株式や債券のリターンはプラスになりやすい
バイアンドホールドは、一度買ったら長期間保有して値上がりを狙う投資戦略です。株価はEPS(1株当たり利益)×PER(株価収益率:株価は利益の何倍か)で決まるため、経済成長が続いていて、企業業績の拡大が続いている限り、EPSは増えていくため、長期的に見れば株価は上昇しやすいと言えます。同様に債券も、最終利回りがマイナスでなく、経済成長が続く中で発行体の破綻などがなければ、リターンはプラスになります。
経済成長を前提にして、株式や債券を発行している企業や組織などが健全な財務内容を維持し、業績の拡大が続くのであれば、バイアンドホールはプラスの利益を得やすいということになります。つまり、ファンダメンタルズに投資するということになります。
ただし、日本ではバブル崩壊後、株価が長期低迷したこともあり、長期間持てば必ず上昇するということはありませんし、株価は長期的に必ず上昇するとは限りません。
売買手数料や税金などのコストが少ない場合がある
投資では売買を行うたびに売買手数料などの取引コストがかかってきます。また、一定期間ごとの売買によって生じた利益などに対して税金が発生します。そのため、同じ利益を得る場合でも頻繁に売買を行って積み上げた場合と、少ない取引回数で実現した場合では少ない取引回数で利益を実現した方が手数料や税金などのコストが相対的に小さくなることがあります。同じ利益を実現するにしても100回の売買で実現するより、1回の売買で実現した方がコストは小さくなることが多いのです。
忙しくてあまり相場に関わることができなくても実践できる
バイアンドホールドは頻繁には売買を行わず、一度買ったら後は価格変化を定期的にチェックすれば最低限の対処はできるので、忙しい人でも実践しやすいことがメリットです。
極端な場合、一度買ってしまったら、しばらく買ったこと自体を忘れてしまっていても問題ないのです。思い出した時に大きく値上がりしていることすらあります。もちろん、損失が拡大しないように損切りラインを設定し、価格が一定程度下落したら、投資していたことを思い出せるような仕組みを用意しておくことは必要です。
バイアンドホールド戦略のデメリット
バイアンドホールドは長期間保有して長期間の価格変動を狙うため、短期間の価格変動を利益の源泉とできないことなどがデメリットになります。
バイアンドホールド戦略は短期の価格変動を利益にできない
バイアンドホールドは頻繁に売買を行う戦略ではありません。市場の価格変動は、短期的な価格変動、中期的な価格変動、長期的な価格変動が組み合わさって形成されていて、売買のタイミングが良ければ、短期間で大きな利益を上げられる場合もあります。バイアンドホールドは、短期的な価格変動を狙わないため、売買の機会を一部自ら放棄していると考えることもできます。場合によっては、中期的な価格変動も売買対象とならないことがあります。
売買回数が少ないので資金の効率が悪いことがある
バイアンドホールドは、一度買ったらしばらく継続して保有する投資戦略です。場合によっては保有期間が数年から十数年、数十年になることもあります。そこまで長期間でなくても、バイアンドホールドは頻繁に売買を行う訳ではないため、1年間に売買が1回~数回ということも珍しくありません。全く売買を行わない年もあります。そのため、投資資金が回転せず、同じ銘柄に拘束され続けるため、資金の効率が悪いことがあります。
レバレッジを掛けない場合は大きな利益を上げるのは難しい
バイアンドホールドは、中長期的に成長が見込める企業の株式などを購入し、長期間保有するような投資戦略です。長期間保有すること、頻繁に売買を行う訳ではないこと、相場動向を常に追う訳でもないことなどから、通常はレバレッジを掛けることもありません。一方で、バイアンドホールドは資金の回転は悪く、数年間で数回、少ない場合は1回の取引しか行わないこともあります。そのため、投資した銘柄などが大幅に値上がりしない限り、大きな利益を上げることは難しいのが特徴です。
値上がりして含み益が膨らむと我慢できず売ってしまう
バイアンドホールドは長期間保有し、比較的大きな値上がり益を狙う投資戦略です。しかし、バイアンドホールドに限りませんが、持っている銘柄の株価が上がってくると売りたくなってしまうことがあります。売りたい誘惑に駆られて、まだ売るべき時ではないのに我慢できずに売ってしまい、得られたはずのさらなる値上がり益を逃してしまうことがあります。
もちろん、欲張り過ぎて売るタイミングを逃し、利益が吹き飛んでも良くないのですが、含み益になった時に利益を確定したいと我慢できずに焦ってしまい売ってしまうことも問題なのです。
長期保有になるため保有中に予期せぬイベントが発生して暴落してしまう
長期保有では保有期間中に予期せぬイベントが発生してしまい、株価などが暴落してしまうことがあります。つまり、リスク管理がしづらい側面があります。長い期間保有していれば、保有期間中に1度や2度は市場全体を大きく揺るがすような出来事に遭遇してしまう可能性が高まります。折角含み益になっていたとしても、一瞬にして含み益が全て吹き飛んでしまうようなことさえあります。
損切りができず損失を膨らませてしまう可能性がある
バイアンドホールドは長期間保有する投資手法です。少しくらい値下がりしたとしても、戻ってくるだろうと考えて、保有し続けることがあります。そのため、予想とは逆に株価などが下落を続けた場合に、損切りするかどうか悩んでしまい、迷っている間に損失が拡大し続けてしまうことがあります。結局売り時を逃し塩漬けにしてしまうこともあれば、下がりきったところで売ってしまい損失が大きくなることもあります。
まとめ
- バイアンドホールドとは、一度株式などを購入したら長期間保有を継続する投資戦略です。
- バイアンドホールドは、長い期間で見れば株価などはファンダメンタルズに沿って動く傾向があるため経済成長を前提とすれば上昇しやすいことがメリットですが、短期間の価格変動による値幅を利益にできないことがデメリットです。