キャピタルゲイン・インカムゲインとは
記事作成日:2015年8月19日
最終更新日:2021年9月2日
キャピタルゲインとは、保有している資産を売却した時に得る収益のことを意味します。保有資産の価格変化によってキャピタルゲインが生じます。株式の売却益などが相当します。インカムゲインとは、資産を保有していることによって得られる収益です。株式の配当金、債券の利息などが該当します。キャピタルゲインとインカムゲインは生じる収益に異なる特徴があります。また、キャピタルゲインとインカムゲインは課税の仕組みが異なる場合があります。
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キャピタルゲインの意味
キャピタルゲインとは、保有している資産の価格が変化した場合に売却することで得られる収益のことです。キャピタルゲインはキャピタルリターンと呼ばれる場合があります。資産価格が変化して売却の時に損失が出た場合にはキャピタルロスといいます。
キャピタルゲインの例
株式であれば、株価の値上がりした際に売却して得られた収益がキャピタルリターンです。値下がりで損失が出ればキャピタルロスです。
債券では、取得時から売却時までの債券価格の変化によって得られた収益がキャピタルゲインです。債券価格の変化は市場金利の上下によってもたらされます。そのほかに、償還までの期間が長くなるほど利回りが高くなっているイールドカーブが順イールドの状態の場合には、ロールダウン効果による価格変化が含まれるほか、時間が経過したことによる償還差損益相当分の値上がりもキャピタルゲインの中に入ってきます。
外国通貨を保有している場合やFXの場合は、為替レートの変化による差益がキャピタルゲインとなります。差損となった場合はキャピタルロスです。
不動産の場合は、取得時から売却時までの不動産価格の上昇によって得られた収益がキャピタルゲインです。下落していて損失となればキャピタルロスです。
金やプラチナなどの商品投資の場合は、金やプラチナの取引価格の変化によって得られた収益がキャピタルゲインで、下落して損失を出すとキャピタルロスです
投資信託の場合は基準価額が値上がりした場合にはキャピタルゲイン、値下がりすればキャピタルロスです。
キャピタルゲインの特徴
キャピタルゲインは、資産を売却しないと得られない、取引のタイミングが重要になる、1回限りである、マイナスとなることがある(キャピタルロス)、インカムゲインよりも大きな収益が期待できることがある、不安定である、といった特徴があります。
資産を売却しないと得られない
キャピタルゲインは資産を売却しないと得られません。持っている資産が値上がりしていても、売却によって収益を実現させないとキャピタルゲインとはなりません。
取引のタイミングが重要になる
キャピタルゲインは購入と売却時の価格の差です。そのため、いつ購入して、いつ売却するかということが決定的に重要になります。売買のタイミングが違えばキャピタルゲインの大きさが変わってくるためです。
1回限りである
キャピタルゲインは、分割して売買できる場合などを除いて保有している1つの資産について1回しか発生しません。保有期間が長くなると資金の回転が悪くなってしまうことがあります。長い時間をかけて保有しも、大きな収益になるとは限りません。
マイナスとなることがある
キャピタルゲインを狙ってもプラスの成果が得られるとは限りません。インカムゲインは通常プラスですが、資産を売却したとしても必ずプラスのキャピタルゲインが得られるとは限りません。資産価格は下落することもあるからです。
大きな収益を期待できることがある
キャピタルゲインは資産価格の変化によるため、あらかじめ決まっているわけではありません。逆に、資産価格が大きく動けば大きな値上がり益を得られる可能性があります。インカムゲインより大きな収益を得られる場合があります。
不安定である
インカムゲインは資産価格の動き次第に左右されてしまうため、インカムゲインと比べると不安定です。いつも同じような収益を決まって得られるという訳ではありません。
インカムゲインの意味
インカムゲインとは、資産の価格の変化に関わらず、資産を保有することで得られる収益のことです。インカムゲインはインカムリターンと呼ばれる場合もあります。
なお、インカムゲインは日本語の造語(和製英語)で、インカムゲインは英語で表記すると一応「income gain」ですが、「income gain」という表現は英語で一般的に使われる表現ではありません。利子は「interest」、配当金は「dividend」となります。
インカムゲインの例
株式では、配当金が当てはまります。広い意味で考えれば株主優待も該当します。
債券では、利息(クーポン)が該当します。なお、満期まで保有する場合の償還差損益は期間の経過に従って得られる収益とみなすことができ、利息のような性質もあるためインカムゲインのような性質を有していますが、満期まで保有せず売買する場合の売買差益と同じようにキャピタルゲインとして扱われることが多いです。
FXの場合は、金利差によるスワップポイントがインカムゲインと一般的に考えられています。
銀行などへの預金の場合は利子がインカムゲインに当てはまります。銀行預金はキャピタルゲインはなく、インカムゲインだけとなります。
不動産の場合は、地代、家賃収入がインカムゲインとなります。
金やプラチナなどの商品投資の場合は、金やプラチナ自体はお金を生み出さないのでインカムゲインは基本的にはありません。ただし、購入先によっては一定の条件の下で金やプラチナの重量を増やすサービスがあり、一種のインカムゲインのようなものとなっています。
投資信託の場合は分配金がインカムゲインとなります。
インカムゲインの特徴
インカムゲインは、資産を保有することで得られる、定期的・継続的に得られる、基本的にはプラスである、キャピタルゲインと比べると収益は低い、キャピタルゲインよりは安定感がある、というような特徴があります。ただし、インカムゲインは確実に保証されているわけではありません。
資産を保有することで得られる
インカムゲインは資産を保有していれば得ることが出来ます。売却をして利益を確定させるキャピタルゲインとは異なります。株式は権利を確定させる日に保有していれば配当金を得ることができます。インカムゲインは資産を保有している期間に応じて増えていくため、長く資産を保有するとインカムゲインは増えていくことになります。
定期的・継続的に得られる
株式の配当金や債券の利息(クーポン)などは、毎月、半年ごとに1回、年に1回というように、一定期間ごとに定期的に得ることができます。また、1回限りということはなく、資産を保有している限り、繰り返し、継続的に得ることができます。ただし、満期がある資産は満期までしかインカムゲインを得ることが出来ません。また、配当金や利息は財務状況の悪化などの理由から支払われなくなることもあります。
基本的にはプラスである
インカムゲインは、通常はマイナスになることはありません。株式の配当金、債券の利息(クーポン)、銀行預金の利子、投資信託の分配金は基本的にプラスです。
ただし例外があります。例外の1つがマイナス金利です。一般の人の銀行預金では通常マイナス金利が適用されることはありませんが、マイナス金利が適用される場合、預金がある場合利子を支払わなければいけません。
また、実質的に元本の取り崩しとなることがあるのが投資信託の分配金です。投資信託は基本的には得た利益を分配しますが、利益が得られず元本に相当する部分を取り崩して分配する場合があります。
キャピタルゲインと比べると収益が低い
インカムゲインはキャピタルゲインと比べると収益が低い場合があります。キャピタルゲインは資産価格が大きく動けば大きくなる可能性がありますが、インカムゲインは定期的・継続的に提供する必要があり、大きな金額にはなりづらいことが一般的です。
キャピタルゲインよりは安定感がある
インカムゲインはキャピタルゲインと比べると得られる可能性が相対的に高い傾向があります。キャピタルゲインは資産価格の動向次第ですが、銀行の利子や債券の利息(クーポン)は資産保有時点から金額が決められています(金利が変動する場合はあります)。株式の配当金もある程度安定的に提供されます。ただし、インカムゲインも確実に受け取れるわけではありません。
インカムゲインだから安全とは限らない
インカムゲインは定期的に収入があるので安定しているように見えるからだと考えられます。しかし、インカムゲインだから安全だとは限りませんし、そもそもインカムゲインだけに注目した資産運用にはリスクもあります。
不労所得を得る手段として、利子や家賃収入などインカムゲインを活用するということがよく言われます。不労所得とは働かないで得られる所得のことで、資産を運用した時の収益などのことを指します。
インカムゲインは定期的にお金がもらえるので安心で安全な収入のような気になってしまいますが、インカムゲインも無くなったり減ったりするリスクがあります。
インカムゲインには安全度合いが高いもの、安定しているものがありますが、インカムゲインだから安定しているのではなく、投資している資産の本質的なリスクが小さいから安定しているのです。
また、インカムゲインがあっても、資産価格の値下がりによってキャピタルロスが発生してしまえば、合計するとマイナスになる可能性があります。資産価格の変動が大きければ、インカムゲインが安定しているように見えても、収益全体で見れば不安定です。
インカムゲインのリスク
インカムゲインにも次のようなリスクはあります。
株式のインカムゲインのリスク
株式の配当金は定期的な収益となりますが確実に得られる保証はありません。株式の配当金は企業の業績が悪化すれば減額(減配)や見送り(無配)となることがあります。また、投資家の人気を集めるために高めの配当金を出している場合がありますが、肝心の業績はいまいちで株価が上がらず、トータルの収益は冴えない結果となることもあります。
債券のインカムゲインのリスク
債券の利息は支払額が決まっており簡単に減らせるものではないため、株式の配当金よりは変動しにくいとも考えられますが、発行体の財務状況が悪化した場合、約束通り利息が支払われないことがあります。なお、発行体が国の場合は国家が破綻しない限り利息は支払われるため安全性が高いですが、インカムゲインだから安全、安定という訳ではなく、発行体が国家であるからリスクが小さいのです。
FXのインカムゲインのリスク
FXのスワップポイントは通貨ペアの2か国の金利差や為替レートが影響します。スワップポイントは特に金利差の影響を強く受けますが、どちらも変動する可能性があり、安定した収入とは言い難いです。
不動産のインカムゲインのリスク
不動産投資の家賃であっても、空室が発生すれば収入は得られませんし、家賃相場が下落すれば家賃は減少します。賃借人が支払い不能に陥れば家賃は一部しか回収できない可能性もあります。また、不動産価格には下落リスクもありますし、実物が経年変化で傷んだり汚れたりして価値が下がることもあります。維持・メンテナンスの費用が発生することもあります。家賃収入だけでなく、トータルのリターンで判断する必要があります。
投資信託のインカムゲインのリスク
投資信託の分配金は債券の利息などを原資としていますが、株式や債券、不動産に直接投資した際のインカムゲインが必ずしも安定していないように、分配金だから安定している、安全であるといったようなことはありません。毎月分配型の投資信託は、毎月安定した分配金を出しているからといって収益が良いとは限りません。無理して分配金を出すため元本相当部分を払い戻している状態になっている場合もあります。
銀行預金のインカムゲインのリスク
銀行預金の利子は銀行が破綻しない限りもらえる可能性が高いので比較的安定しています。ただし、預金金利は変動しているので、定期預金で満期まで金利が固定されているような場合でなければ利子は変化します。利子は比較的安定していますが、インカムゲインだから安定しているのではなく、銀行預金のリスクが小さいから安定しているのです。銀行も経営破たんすることはあります。
キャピタルゲインとインカムゲインの違い
キャピタルゲインとインカムゲインの違いなどについてです。
キャピタルゲインとインカムゲインの違い
キャピタルゲインとインカムゲインの違いをまとめると次のようになります。
キャピタル | インカム |
---|---|
売却で発生 | 保有で発生 |
1取引1回 | 繰り返し発生 |
不安定 | 安定的 |
収益は大きめ | 収益は少なめ |
マイナスの場合も | 通常プラス |
キャピタルゲインとインカムゲインの分類例
資産の収益別にキャピタルゲインとインカムゲインを分けると次のようになります。
資産 | キャピタル | インカム |
---|---|---|
株式 | 売却益 | 配当金・株主優待 |
債券 | 売却益※ | クーポン(利息) |
FX | 売却益 | スワップポイント |
不動産 | 売却益 | 地代、家賃 |
投資信託 | 売却益 | 分配金 |
銀行預金 | なし | 利子 |
金 | 売却益 | なし※ |
※債券は、償還差損益、ロールダウンの分を含みます。金は購入先によって保有に応じた特典が用意されている場合もあります。
キャピタルゲインとインカムゲインでどちらがおすすめかではない
キャピタルゲインとインカムゲインには違いがあり、投資する資産によってはキャピタルゲインが大きいもの、インカムゲインが大きいものがあります。
しかし、資産運用では過度にキャピタルゲインとインカムゲインのどちらかに注目してしまうのは望ましいことではありません。キャピタルゲインとインカムゲインどちらがおすすめなのかということを考えるよりは、キャピタルリターンとインカムゲインを合わせたトータルリターンと、トータルリターンの変動の大きさであるリスクを基に投資判断を行うことがより重要だと考えられます。
キャピタルゲインとインカムゲインにはそれぞれ特徴がありますが、預金など一部の資産を除けば片方だけで利益が決まるわけではないからです。安定的な利益を望むのであれば、インカムゲインを選ぶというよりは、キャピタルゲインとインカムゲインを合わせたトータルリターンの変動の大きさ(リスク:標準偏差)が小さい資産を選べばよいからです。結果として、インカムゲインが中心の資産はトータルリターンが安定的でリスクが小さい傾向はありますが、絶対のものではないからです。
例えば、信用力が低い発行体は利率(クーポンレート)が高い債券を発行するため、インカムゲインは大きくなります。しかし、安定的な収益になるかといえば、信用力が低いため予定通り利息(クーポン)が支払われない場合があり、「インカムゲイン=安定」とは限らないのです。
まとめ
- キャピタルゲインとは、保有する資産を売却することによって得られる収益で、資産の価格変化によって生じます。
- インカムゲインとは、資産を保有していることによって得られる収益で、株式の配当金や債券の利息(クーポン)などが該当します。