キャリートレードとは
記事作成日:2021年9月2日
キャリートレード(キャリー取引)とは、金利が低い資産で資金調達を行い、金利が高い資産に投資する取引形態のことをいいます。金利が低い通貨で借りるため支払利息は低くなる一方、金利が高い資産で運用するため受取利息は多くなります。大きな為替変動がなければ金利差を利用して稼ぐことができます。この金利差による利益はFX取引ではスワップポイントに相当するものです。
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円キャリートレードとは
円を低金利通貨として円で資金調達を行い、調達した円で外貨を購入し、外貨建て資産(米国債などの外国債券など)を購入する取引を円キャリートレード(円キャリー取引)といいます。
円キャリートレードでは、円売り外貨買いが発生するため円安外国通貨高となります。円とドルの間で円キャリートレードが行われた場合、円安ドル高要因となります。また、米国債が買われる場合は米国金利低下要因となります。
円キャリートレードが解消される時には、外貨建て資産を売却し、外貨で円を購入します。円とドルであれば、米国債などのドル建て資産が売られて(米国金利上昇要因)、ドルで円が買われるため、円高ドル安要因となります。
キャリートレードのリスク
キャリートレードのリスクとしては、為替変動リスク、金利変動リスクを挙げることができます。特に為替変動リスクは重要なリスク要因となります。キャリートレードでは取引開始時と解消時に為替取引が発生しますが、取引解消までに為替レートが大きく変動した場合、キャリートレードの金利差による収益を帳消しにしてしまう事があります。
また、金利変動によって運用成績が変化しうることもリスクです。資金の調達金利、運用金利はどちらも固定することは不可能ではありませんが、例えば米国債を購入する場合、満期まで持ち切れば確定利回りとなりますが、満期前に市場で売却する場合には、金利水準によって保有期間中の利回り、すなわち運用成績が変化します。
つまり、為替の変動や、金利の変動によっては、思惑通りの利益が得られない可能性があることがキャリートレードのリスクとなります。
キャリートレードが有効な局面
キャリートレードを行うには、資金調達がしやすい低金利通貨と運用先となる高金利通貨が必要です。ある程度の金利差がないとキャリートレードによる利益が得られないため、十分な利益が得られるだけの金利差が必要となります。
そして、キャリートレードを行う2通貨間の為替レートが安定的であるということが重要になります。キャリートレードは為替レートが大きく変動した場合、利益が吹き飛んでしまうことがあるため、為替レートの変動が少ないことが重要となります。また、運用先の金利が安定していることも重要となります。金利の変動が大きいと運用での利益をあまり上げられない可能性があるためです。
つまり、キャリートレードが有効な局面は、為替レートが安定している、運用先の金利が安定している、という相場局面となります。
キャリートレードの巻き戻し
キャリートレードは、2国間の金利差によって引き起こされています。そのため、金利差の縮小が見込まれる場合にはキャリートレードを解消しようとする動き、つまりキャリートレードの巻き戻しが起こる可能性があります。
低金利の側で金融緩和が終了する、金融引き締めが行われるというような場合には金利上昇が見込まれキャリートレードを終わらせる要因となりえます。
また、高金利の側で金融引き締めが終わる、金融緩和が行われるというような場合には金利低下が見込まれ、やはりキャリートレードを終わらせる要因となりえます。
ポジティブキャリーとネガティブキャリー
通貨間の取引に限らず、資金の低金利の調達と高金利での運用の組み合わせをポジティブキャリーと呼ぶことがあります。通常のキャリートレードはポジティブキャリーです。一方、ポジティブキャリーとは逆に資金を高金利で調達し低金利で運用する組み合わせをネガティブキャリーと呼ぶことがあります。ネガティブキャリーは時間が経過するほど金利差で損失が発生するため、特別な理由がなければ行われません。
例えばFX取引でスワップポイントがマイナスとなるような場合はネガティブキャリーですが、この時は投資先の通貨の値上がりを期待しており、金利差以外の何らか要因で収益が見込める場合はネガティブキャリーの取引が行われることがあります。
まとめ
- キャリートレードとは、低金利の通貨で資金調達を行い、高金利の通貨を購入して高金利通貨建ての資産で運用を行う取引形態のことを意味します。
- 円を低金利の資金調達通貨として行うキャリートレードを円キャリートレードと呼びます。