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ESG投資とは

記事作成日:2017年9月23日

ESG投資とは、投資家が企業の業績見通しや財務諸表などの財務情報だけではなく、環境(E:Environment)、社会(S:Social)、企業統治・ガバナンス(G:Governance)への取り組み状況といった非財務情報を考慮して投資を行うことです。株式だけでなく、債券(社債)も投資対象となる可能性があります。

ESG投資は、単に環境・社会・企業統治を良くするという目的で行われるのではありません。企業の環境・社会・企業統治への取り組み状況が、中長期的に企業価値の向上に影響を与える可能性があるため、ESG投資によって企業の環境・社会・企業統治への取り組みを考慮することで、投資家の中長期的なパフォーマンスも改善するメリットがあるという考え方が背景にあります。

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ESG投資で考慮される環境・社会・企業統治の具体例

ESG投資では、企業の環境(E:Environment)、社会(S:Social)、企業統治・ガバナンス(G:Governance)への取り組みを考慮します。環境・社会・企業統治で考慮される項目は次のようなものがあります。

環境(Environment)

環境は、企業が環境保護などに対してどのような取り組みを行っているかが考慮されます。企業の環境保護に関する方針などが公表されている場合には参考になります。

環境については、地球温暖化・気候変動対策のためのCO2(二酸化炭素)排出量の削減、化石燃料利用の抑制、環境に優しいエネルギーの利用、エネルギー利用の効率化、自然環境の保護、生物の多様性の保護、有害な化学物質の利用の抑制、化学物質の安全な管理、環境汚染の防止、水資源の保護、持続可能な資源の活用、などが考慮されます。

環境に対する配慮を怠れば、地球温暖化や気候変動に対応した規制強化に対応できなくなる、環境汚染に対するペナルティを課される可能性がある、持続可能な企業活動が困難になるなどの可能性があり、中長期的な企業価値に影響を受ける可能性があります。

社会(Social)

社会は、企業の社会に対してどのように貢献しているか、社会的な責任を果たしているかが考慮されます。

社会では労働環境、従業員の健康・安全やワークライフバランスへの配慮、人権問題への取り組み、地域社会への貢献、下請け企業などサプライチェーンにおける責任、販売先(顧客)や調達元との関係、女性・障害者・外国人など多様な労働者への配慮などが考慮されます。

過度な長時間労働によって過労死が発生したり、労働災害が多発したり、過酷な労働環境によって労働者の退職が相次いだりした場合には、企業はブラック企業と社会から強い非難を受けることになります。

労働者や顧客の人権への配慮を怠ったり、セクシャルハラスメント、パワーハラスメントの問題を放置したりすることで企業のブランドが毀損する可能性があります。また、労働者が働きたいと思うような企業でなければ企業価値向上を支える人材が流出し、人材が集まらなくなってしまいます。

企業統治・ガバナンス(Governance)

企業統治・ガバナンスでは、企業価値の向上と不正・違法行為や倫理的に問題がある行為の防止という観点から、どのような企業統治が行われているかが考慮されます。

企業統治が機能していない場合には、粉飾決算や不正会計が行われたり、欠陥がある商品・サービスの問題が隠蔽されたり、環境汚染問題が放置されたり、談合・カルテルなど商品の不正な価格操作を行ったり、反社会的勢力と関わりを持ったり、労働者や顧客の人権を侵害したり、横領・背任や汚職事件が発生したりする可能性があります。海外の企業では児童労働が問題となることもあります。

企業統治は、企業の問題がある活動を発見して是正するだけでなく、事前に抑制することによって企業価値の毀損を防ぎます。また、優れた企業統治によって生産的・効率的な企業運営が行われた場合には、企業価値の向上に結びつきます。

企業統治では、取締役・取締役会・監査役・監査役会が求められる役割を果たしているか、内部統制システムが機能しているか、会計監査人などによる会計監査や業務監査が適切に行われているか、企業の情報開示が適切に行われているか、法令遵守(コンプライアンス)の体制はどうなっているか、社外取締役や社外監査役、会計監査人の独立性は確保されているか、などが考慮されます。

ESG投資の手法

ESG投資の手法には国際機関のThe Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)によると、大きく分けて次の7つの方法に分類されます。

  • Negative/exclusionary screening(ネガティブスクリーニング)
  • Positive/best-in-class screening(ポジティブスクリーニング)
  • Norms-based screening(規範によるスクリーニング)
  • Integration of ESG factors(ESG要因の統合)
  • Sustainability themed investing(持続可能なテーマへの投資)
  • Impact/community investing(インパクト・コミュニティ投資)
  • Corporate engagement and shareholder action(エンゲージメント活動)

(出典)The Global Sustainable Investment Alliance(GSIA)"The Global Sustainable Investment Review 2016"より引用、日本語訳はfromportal.comの担当者によります。

ネガティブスクリーニング

ネガティブスクリーニングとは、特定のESG基準を満たさない業種や企業を投資対象から除外する方法です。

ポジティブスクリーニング

ポジティブスクリーニングとは、ESGへの取り組みが評価できる企業に投資を行う、または投資比率を引き上げる方法です。

規範によるスクリーニング

規範によるスクリーニングとは、国際的な規範に基づくビジネス慣行の最低基準を満たさない企業を投資対象から除外する方法です。

ESG要因の統合(インテグレーション)

ESG要因の統合(インテグレーション)とは、財務情報に加えて、ESG(環境・社会・企業統治)の非財務情報を統合して分析することで投資判断を行う方法です。

持続可能なテーマへの投資

持続可能なテーマへの投資は、持続可能性に関する特定のテーマ(地球温暖化・気候変動など)に対して投資を行う方法です。

インパクト・コミュニティ投資

インパクト・コミュニティ投資とは、直接的に社会問題や環境問題の解決を目指して、地域の金融機関やマイクロファイナンス機関、非営利活動機関などを通じて、地域社会や低所得層に投資を行う方法です。

エンゲージメント活動

エンゲージメント活動とは、投資対象企業の議決権の行使や経営陣との対話などの株主としての活動を通じて、ESGに関して企業に働きかける方法です。

ESG投資に必要な情報の収集

ESG投資に必要な非財務情報については、有価証券報告書の財務情報以外の部分、内部統制報告書、アニュアルレポート、CSR報告書、環境報告書、企業の情報開示(各種プレスリリースなど)、企業ウェブサイトの情報などを通じて読み取ることになります。

また、近年ではESG投資に関するインデックスの開発も盛んになっていて、投資の際に参考とすることができます。

ESG投資が注目される背景

環境・社会・企業統治に対する意識が高まっていること

ESG投資が注目される背景の1つに環境問題、社会問題、企業統治への関心・意識の高まりが挙げられます。環境問題に関しては従来からの課題で近年急速に意識されたわけではありませんが、地球温暖化・気候変動、環境保護、持続可能な企業活動への関心は高いと言えます。

労働者の権利保護や人権への配慮は近年重要性が高まっています。日本でも長時間労働の問題への対応が重要な課題となっていて、労働者の健康への配慮、人間的な生活への配慮が求められるようになっています。労働者を大切にしない企業はブラック企業と名指しされ企業価値を毀損する可能性があります。また、女性人材の活用も重要な課題になっています。

企業統治も重要な課題です。日本でも、企業不祥事は後を絶たず、取締役会が十分に機能していないことで不正が見過ごされる事例が相次いでいます。企業統治の機能不全による企業不祥事によって企業イメージは損なわれ企業の存続に関わる事態となってしまう可能性があります。

環境・社会・企業統治に対する意識の高まりがESG投資への関心の高まりになっています。環境・社会・企業統治に対して配慮する企業は、中長期的に企業価値を高める可能性が高いと認識されるようになってきているのです。

国連の責任投資原則への署名が広がったこと

2006年に国連が、機関投資家が受託者責任に反しない範囲でESGに配慮して投資を行うことを内容とする責任投資原則(PRI:Principles for Responsible Investment)を公表しました。

国連の責任投資原則は、機関投資家に署名を求め賛同者を募ることで、機関投資家の投資行動のガイドラインの役割を果たすようになりました。責任投資原則に賛同して署名する海外や国内の機関投資家数は広がっています。

日本では2015年9月、国民年金と厚生年金の積立金の運用を行い巨額の年金資金の運用を行う年金積立管理運用独立行政法人(GPIF)が国連の責任投資原則に署名したことが大きな反響を呼び、責任投資原則への署名を後押しすることになりました。

なお、国連の責任投資原則では次の6つの原則が示されています。

  • 私たちは投資分析と意思決定プロセスにESG課題を組み込みます。
  • 私たちは、活動的な所有者になり所有方針と所有慣習にESG問題を組み入れます。
  • 私たちは、投資対象の主体に対して適切な開示を求めます。
  • 私たちは、資産運用業界において、本原則が受け入れられ、実行に移されるよう働きかけを行います。
  • 私たちは、本原則を実行する際の効果を高めるために、協働します。
  • 私たちは、本原則の実行に関する活動状況や進捗状況に関して報告します。

(出典)責任投資原則協会(PRI Association)より引用

ESGは企業価値の向上に関係する可能性と考えられるようになったこと

ESG(環境・社会・企業統治)は企業価値と関わりがあると考えられるため、ESG(環境・社会・企業統治)に取り組む企業の中長期的な企業価値は向上する可能性があり、結果として投資家もパフォーマンスの改善というメリットがあると考えられるようになったことがESG投資が注目される背景の1つにあります。

また、機関投資家の間ではESG投資の考え方が広がりつつあり、海外や日本の機関投資家がESGを意識した投資行動を行うことによって、ESG(環境・社会・企業統治)に取り組む企業の株価が上昇しやすくなる可能性があります。

ESGへの取り組みが一種のブランド価値につながり、投資対象企業の選別に重要な役割を果たすようになる可能性があります。

ESG投資とSRI(社会責任投資)との違い

ESGに似た概念としてSRI(Socially Responsible Investment:社会的責任投資)があります。SRI(社会的責任投資)はCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)を果たしているかどうかといったことが考慮されて投資が行われています。CSRでは、ESGと同様に環境・社会・企業統治が考慮されるため、非常に似ています。

しかし、SRIでは、企業の社会的責任を果たしている企業に投資して応援する、支援するという色彩が強いものであり、SRIによるパフォーマンスは必ずしも明確ではなく、投資家のパフォーマンス向上という視点は弱いものでした。

一方で、ESG投資では、環境・社会・企業統治に取り組む企業は企業価値が向上し、結果的に投資家のパフォーマンス向上につながるという考え方の下で投資が行われます。

  • SRI:社会的責任を果たす企業に投資して支援、パフォーマンスとの関係は必ずしも明確ではない
  • ESG:環境・社会・企業統治に取り組む企業に投資するとパフォーマンスが改善という考え方

ESG投資の課題

ESG投資によって投資家は中長期的なパフォーマンスが改善する可能性がありますが、どのようにESG(環境・社会・企業統治)を考慮して投資をすれば、パフォーマンスが改善するのか、現状では手探りの状況にあると考えられます。

また、ESG(環境・社会・企業統治)投資と短期的なパフォーマンスの改善は必ずしも結びつかないことがあるため、短期的な投資期間を視野に入れている投資家など投資家の投資方針によっては適合しない可能性もあります。

なお、過度にESGを重視し過ぎてしまうと、一度不祥事を起こした企業は投資対象から外れてしまい、失敗を反省して真摯に再建に取り組む企業への投資を手控えるようになってしまう可能性もあるため、ESG投資においてはバランス感覚も大切になると考えられます。

まとめ

  • ESG投資とは、投資家が企業の業績見通しや財務諸表などの財務情報だけではなく、環境(E:Environment)、社会(S:Social)、企業統治・ガバナンス(G:Governance)への取り組み状況といった非財務情報を考慮して投資を行うことです。
  • 企業の環境・社会・企業統治への取り組みは企業価値の向上につながると考えられるため、企業の環境・社会・企業統治への取り組みを考慮することで、投資家の中長期的なパフォーマンスも改善するという考え方がESG投資の背景にあります。

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【ESG投資とはの記事は終わりです】

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