流動性リスクとは
記事作成日:2017年8月1日
最終更新日:2021年6月29日
流動性リスクは投資の場面で用いられる場合と、企業財務の場面で用いられる場合では意味が異なっています。
投資における流動性リスクとは保有している資産が思うように換金できないリスクを意味し、企業財務における流動性リスクとは債務の返済などのために支払いが必要となった際に、現金や預金など支払いが足りなくなるリスク、つまり流動資産が少なく資金繰りができないリスクを意味します。
スポンサーリンク
投資における流動性リスクとは
投資や資産運用における流動性リスクとは、保有資産の換金が思うようにできないリスクのことを意味します。市場での取引(流動性)が少ないために、希望する時期に取引が成立せず換金が出来なかったり、希望する価格では取引が成立せず不利な価格で取引を強いられたりするリスクのことです。つまり売りたいのに売れないということになります。
実物資産の流動性リスクは高い傾向
一般的に、株式などの金融資産は流動性が高く、不動産や美術品などの実物資産は流動性が低い傾向があります。株式も不動産も取引市場がありますが、株式の方が取引量は圧倒的に多く、不動産は買い手を見つけることに難航する場合があります。美術品も同様です。金地金は専門の業者に売却すれば比較的換金は容易です。
なお、不動産投資でも実物不動産投資ではなく、不動産投資信託(REIT)の場合は換金性が高く、流動性リスクは低いと言えます。
金融資産でも債券や一部の投資信託の流動性リスクは相対的に高め
債券は国債であれば流動性は高めですが、株式と比較すると債券は取引がしづらく流動性リスクは高めになります。国債以外の債券は流動性が低いものがあります。
また、投資信託は基本的に営業日であれば換金はしやすいですが、解約制限が設けられている投資信託があり、換金まで時間が必要なものもあります。
換金性が高い株式でも流動性リスクが高いものも
金融資産において上場株式は取引市場が整備されていて換金性は高く流動性リスクは低いと言えます。ただし、市場での取引量が少ない銘柄の場合には流動性リスクがあります。
自分が売り注文を出しても、なかなか取引相手が現れなかったり、自分の売り注文が相場を崩してしまったりすることもあります。
また、取引所での取引ができない非上場株式は流動性リスクが高いと言えます。
保険は早期に換金すると損をすることがある
金融商品である保険商品は保険事故が発生していなくても解約して換金することができますが、満期となる前の早期に解約すると解約返戻金が全くないかほとんどないことがあり、支払った保険料よりもわずかなお金しか戻って事ないことがあります。
保険をリスクに備えるために契約しているのではなく、貯蓄や投資として契約しているような場合には、保険にも流動性リスクがあると言えます。
市場の急変時には流動性リスクが高まる
金融危機の発生など、金融市場の急変時、異常事態の発生時には、取引が少なくなったり、取引が制限されたりすることがあり、流動性リスクが高まることがあります。
また、個別の銘柄単位でも急激な価格変動により取引が制限される場合があります。例えばストップ安やストップ高の場合における株式の取引や、市場取引におけるサーキットブレーカーと呼ばれる価格変動時の取引制限です。
銀行預金も取り付け騒ぎやシステムトラブルが起きれば流動性リスクがある
銀行預金は普通預金であれば、営業時間内にATMや窓口でいつでも引き出すことができます。そのため、銀行への預金は流動性リスクが極めて低いと考えられます。
しかし、銀行の経営不安が生じるような場合には、預金者が一斉に預金を引き出そうとして取り付け騒ぎが起き、思うようにお金を引き出せなくなる可能性があります。支店やATMの紙幣が不足して支払えないような事態が起こる可能性があります。
また、稀な例ではシステムトラブルが発生して預金が引き出せなくなることも想定されます。実際、日本でもシステムトラブルによって銀行から預金が一時的に引き出せなくなる事態が発生しています。
投資での流動性リスクが高い場合の問題点
投資において流動性リスクが高い資産を保有する場合には次のような問題が生じます。
- 換金に時間がかかる可能性がある
- 希望する価格で換金できない可能性がある
- 最悪の場合、希望する時期に換金できない可能性がある
投資の流動性リスクが高い資産を保有する場合の注意点
資産運用で流動性リスクが高い資産に投資を行う場合に気を付けるべき点についてです。
余裕資金の範囲内で投資する
流動性リスクがある資産を保有する場合には、余裕資金の範囲内で行うことが大原則です。何かの支払いのために流動性リスクがある資産を当てにすると支払いが出来なくなる可能性があるからです。
流動性リスクがある資産を換金して支払いに回さなければいけないような状況が想定されるならば、流動性リスクが高い資産ではなく、流動性リスクが低い資産に投資すべきです。
換金にはゆとりをもって焦らない
流動性リスクがある資産を換金する場合には、時間的にゆとりを持ち、焦って売却しないことが大切です。
代表的な例が実物不動産ですが、換金を急いでしまうと、相場よりも安い値段で売却しなければいけなくなってしまい、買い叩かれてしまって損をする可能性が高まります。適正な相場価格で売却するためには、売却期間を十分に確保することが必要になります。
価格変動リスクが高いことを理解する
流動性リスクがある資産ということは、一般的に市場での取引量が少なく、取引が成立しづらいことを意味しているため、価格変動リスクも大きいことを理解しておく必要があります。取引量が少ないということは、買い手や売り手が少ないということであり、合理的な価格形成が行われない可能性があるからです。
流動性リスクがある資産を換金する場合には、希望する換金額を想定していたとしてもあまりあてにしてはいけません。思うような価格では売れないことがあるのです。
企業財務における流動性リスクとは
企業財務における流動性リスクとは、債務などの支払いが必要になった時に現金や預金など支払い手段となる資産が不足し、資金繰りに行き詰まるリスクのことを意味します。
流動負債に対して流動資産が足りない状態ということになりますが、手持ちの現金や預金が不足すると、債務不履行に陥ったり、不利な条件で急遽株式発行や銀行借り入れなどの資金調達を行わなければいけなくなったりします。債務不履行に陥ると事業の継続が困難になります。
まとめ
- 投資における流動性リスクとは、保有している資産を換金したい時に思うように換金できないリスク、つまり売りたいけれど売れないというリスクです。
- 企業財務における流動性リスクとは、現金や預金の不足により債務などの支払いが出来ないリスク、つまり資金繰りに行き詰ってしまうリスクです。