NSA、SA、SAAR、ARとは
記事作成日:2016年4月15日
最終更新日:2021年6月29日
NSA、SA、SAAR、ARの意味についてです。月次や四半期の統計データや経済指標で、項目の名前にSA、NSA、SAAR、ARといった言葉が付いたデータ・指標を見ることがあります。NSAとは何も加工していない原数値、SAとは季節要因を取り除いた季節調整値、SAARとは季節調整値の年率換算した値、ARとは年率換算した値を意味します。
- NSA:原数値
- SA:季節調整値
- SAAR:季節調整値年率換算
- AR:年率換算
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NSA、SA、SAAR、ARの意味
NSA、SA、SAAR、ARの意味についてです。なお、大文字ではなく、小文字でsa、nsa、saar、arと表記される場合もあります。
NSAの意味
NSAとはNot Seasonally Adjusted(あるいはNo Seasonal Adjustment)のことで、季節調整を行っていない原数値、非季節調整値のことを指しています。つまり、何も加工していない元のデータということになります。「Seasonally」とは「季節的な」、「Adjusted」とは「調整された」という意味です。
SAの意味
SAとはSeasonally Adjusted(あるいはSeasonal Adjustment)のことで季節調整済みの季節調整値のことを指しています。時系列のデータから、季節的な変動要因を取り除いてならしたデータで、前月比、前期比での比較が可能となります。
SAARの意味
SAARとはSeasonally Adjusted Annual Rateのことで、季節調整値年率換算のことで、季節調整した結果を年率に換算した場合の数値を指しています。割合ではなく数値の場合は1か月分の結果を12倍します。1年間の水準の方が分かりやすい場合に換算結果が利用されます。
ARの意味
ARとはAnnual Rate(あるいはAnnualized Rate)のことで、年率あるいは年率換算した数値を指しています。通常は年率換算は季節調整値で行われるため、ARではなく、SAARの方をよく見かけます。
NSA(原数値)の特徴や見方・使い方
NSAは季節調整を行っていない非季節調整値(原数値)ですので、季節性が含まれています。世の中には様々な統計データや経済指標がありますが、ほとんどのものは、理由がよく分かっていないものも含めて何らかの季節性が含まれています。特に季節的な要因に限らず、毎月の日数や曜日並びは異なっているため、日数や曜日並びだけでも月次のデータには本来の動きとは異なった要因による変動が含まれることになります。
NSAの前月比や前期比は季節性を含んでしまう
そのため、月次データあるいは四半期データの原数値(非季節調整値、NSA)を、前月あるいは前四半期と比較するため、前月比や前期比を計算して動きを見ようとしても、季節性が邪魔をして正しい傾向・トレンドを読み取れず、誤解してしまう可能性があります。
NSAを敢えて前月や前期と比較することも
ただし、NSAに季節性が含まれていることを分かった上で敢えて前月比や前期比で数値をみる場合もあります。統計データの数値・水準そのものに意味がある場合、季節調整値では実感がつかみづらいような場合に、原数値を前月や前四半期と比較する場合があり、日本では物価統計で前月比較を行う場合があります。
NSAは前年同月比・前年同期比が原則
原数値は基本的に、前月比や前期比ではなく前年同月比や前年同期比(前年比)で数値を確認します。前の年の同じ月と比較すれば、同じような季節性が含まれているため、ある程度季節性の影響を除去して比較できるためです。ただし、前年と同じ月でも曜日並びは違っているため、前年同月比や前年同期比(前年比)でも多少の季節性が残ります。
SA(季節調整値)の特徴や見方・使い方
SAは季節調整を行った季節調整値ですので、季節的な変動は除去されています。月ごとの日数や曜日並びも通常調整されます。
季節調整とは
季節調整とは、月次や四半期の時系列のデータに含まれる毎年同じように表れる季節的な変動を除去するための統計的手法です。季節的な変動を時系列の統計データから取り除くことで、前月との比較や前期との比較が可能になり、分析や判断がしやすくなります。
時系列データには4つの変動要因がある
時系列データには、一定の期間に一方向に動く傾向的な変動(趨勢的な変動)、景気の循環や設備等の更新の循環、需給の循環など季節的な変動以外の循環による変動、毎年季節に応じて同じように動く季節的な変動(周期的な変動、定期的な変動)、傾向的でも循環的でも季節的でもない不規則な変動(一時的な変動、ランダムな変動)があるとされています。季節調整は季節的な変動を除去する統計的な方法です。
- 傾向的な変動
- 循環的な変動
- 季節的な変動
- 不規則な変動
SAなら前月比や前期比が使える
季節調整値(SA、季節調整済み数値)であれば、時系列データから季節性が取り除かれているため、前月や前四半期と比較しても季節性を傾向と勘違いしてしまうことがなくなり、データの傾向を分析しやすくなります。
SAで前年同月比・前年同期比をする場合もある
日本ではあまり一般的ではありませんが、海外の統計データでは季節調整値だけが公表されていて、季節調整値の前年同月比・前年同期比と前月比・前期比の数値が掲載されている場合があります。
前年同月比・前年同期比は前年から水準がどのくらい増減したか、前月比・前期比は前月・前期から見て短期的な変動はどうなったかを確認することができます。
前年同月比・前年同期比と原数値と季節調整値
季節調整値で前年同月比・前年同期比を計算した場合と、原数値で前年同月比・前年同期比を計算した場合はそれほど結果が変わらないため、原数値と季節調整値のどちらで前年同月比・前年同期比を計算しても分析の上で大きな問題になることはほとんどありません。しかし、それぞれに長所、短所があります。
原数値は曜日並びの影響が残る
理屈から考えると、原数値で前年同月比・前年同期比を計算しても、月によって曜日並びが異なるため曜日並びの影響があり、原数値の前年同月比・前年同期比でもやや不完全な部分が残ることが短所です。
一方、原数値は季節調整を行わなくても良いので簡単に比較できるところが長所です。通常は前年同月比は原数値同士で比較します。
季節調整値は季節調整が完全に正確ではない
前年同月比でも季節調整値同士を比較した方が曜日並びや日数などが調整されることになるため、原数値よりも正しく比較できることが長所です。しかし、季節調整は推計的な要素があり完全ではありませんから、季節調整を行ったことによるデータの歪みが出てしまうことがあるのが短所です。
SAAR(季節調整値年率換算)の特徴や見方・使い方
SAAR(季節調整値年率換算、季節調整済み年率換算)は、年間の水準や年率が重要な場合に用いられます。代表的なものが米国の新車販売台数で、ある月の新車販売台数は年率換算で1,700万台といったような使われ方をします。日本の新築住宅着工戸数でも季節調整済み年率換算値が用いられある月の住宅着工戸数は90万戸といったように使われます。
また、GDP(国内総生産)の伸び率を示す場合に、季節調整値で前期比が+0.4%だった場合に、年率換算すると+1.6%といったような使われ方をする場合があります。GDPなどの伸びは1年間のペースではどのくらいになるのかということの方が便利である場合があるからです。
年率換算の方法
年率換算の方法についてです。水準の値を年率にする場合と、前月比などの割合を年率にする場合では計算が異なります。
水準の年率換算は4倍または12倍
季節調整済み年率換算値がデータの水準を示している場合は、季節調整値を月次データであれば12倍、四半期データであれば4倍すると年率換算値になります。
季節調整値で1か月に10万戸の着工戸数があれば年間では12か月あるので12倍して、10×12=120万戸となるわけです。なお、季節調整済み年率換算値同士で前月比をとると、年率換算をしない季節調整値同士の前月比と通常一致します。年率換算でともに12倍(4倍)しているだけなので、割合を取ると12倍(4倍)の影響がなくなるからです。
前期比・前月比の年率換算は割合を4乗または12乗
季節調整値の前期比を年率換算する場合には、月次データなら「(1+前月比)12」のように割合にしたものを12乗し、1を引いて小数をパーセントに直せば前期比年率換算になります。四半期データなら「(1+前期比)4」のように割合にしたもの4乗し、1を引いてパーセントに直せば前期比年率換算になります。
簡便的に行うなら、月次データなら前月比を12倍、四半期データなら前期比を4倍として計算することもありますが、正確な値からかなりずれてしまう場合があるため、注意が必要です。
まとめ
- SAはSeasonally Adjustedで季節調整値、NSAはNot Seasonally Adjustedで原数値、SAARはSeasonally Adjusted Annual Rateで季節調整値年率換算です。
- NSAは前年同月比・前年同期比(前年比)、SAは前月比・前期比で用いられます。SAARは年率、1年の水準、ペースで見るとどうなるかを示すときに用いられます。