ポジショントークとは
記事作成日:2018年4月29日
最終更新日:2021年9月5日
ポジショントークとは、自分の立場が有利になるようなことを話すこと、自分の立場に沿って話すことを意味します。資産運用・投資の場面においては、例えば株式や投資信託などの営業担当者が、株式や投資信託を購入して欲しいという立場に基づいて、株式や投資信託を購入したときのメリットを強調し、デメリットをほとんど説明しない、というような事例があります。あらゆる営業は当たり前のことかもしれませんが、基本的に何らかのポジショントークが含まれます。相手の話を真に受けるのではなく、有利な点だけを強調しすぎていないか、リスクがないかを冷静に考える必要があります。
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経済や市場環境の説明が会社の立場を踏まえたものに
投資家に株式など有価証券の購入を勧める立場の人は、株式などの有価証券を買ってほしいために、株式を購入することの意義やメリットや購入しないデメリットは熱心に説明するかもしれません。顧客の心を動かして何とか買ってもらおうとするのです。
しかし、株式を購入するデメリット、購入しないメリットについては、説明しないかもしれません。お客さんが買ってくれなくなったら困るからです。
資産運用に関する組織と直接的あるいは間接的な利害関係があるエコノミスト、ストラテジスト、アナリストが経済情勢、市場環境、企業業績について説明を行う場合も同様です。セミナーなどで投資家に向けて講演を行う場合、規模が小さなミーティングなどで説明を行う場合などは、所属する組織、会社の立場に沿った発言を行います。
エコノミスト、ストラテジスト、アナリストは所属する会社の利益に反するような説明はできる限り控えるか、全くしないで、会社の利益になるようなことを説明するのです。
同じ現象でも立場が異なれば解釈は異なる
同じ現象であっても、異なる立場の人が説明したら、解釈は180度変わった正反対のものになることがあります。例えば、株価の下落が続いているとします。
株式を買って欲しい立場の人(例えば売買手数料が得られる証券会社の人や上昇すると利益が得られる人)は「大幅に下落したから、売りたい人はもう手放していて調整はもう完了したのでここから株価は持ち直す」と説明するかもしれません。
株式を売って欲しい立場の人(例えば下落すると利益が得られる人)は、「これだけ株価が下がっているから投資家心理は冷え込んでいてさらに下落する」と説明するかもしれません。
同じ現象であっても、異なる立場の人が解釈・説明をする場合、立場によって解釈・説明が変わってしまうことが良くあるのです。このようなポジショントークは、仕事や生活のどのような場面でもみられますが、資産運用・投資の場面でも多くみられます。
嘘は言わなくても不利なことも言わない
株式などの営業担当者の人がお客さんへの説明で嘘の情報をいうことはないかもしれません。しかし、お客さんにとって不利な情報を積極的にいうこともないかもしれません。
嘘を言ってお客さんに買わせる行為は法に触れる可能性が高い行為であり、通常の株式などの営業担当者が意図的に行う場面は少ないかもしれません。しかし、お客さんの利益ではなく、自らの立場が有利になるように意識するあまり、お客さんに不利な情報は言わないで黙っておくということもよくあることなのです。
お客さんに不利なことは「聞かれなかったから言わなかった」ということで済まされてしまう場合があるのです。まさにポジショントークとなってしまうことがあり、注意が必要なのです。
自分が思ってもいないことを表明する場合もある
会社などの組織に所属する人は組織人として活動している間は組織の考えを離れて自由に意見を表明できない場合があります。組織に所属する人間として立場上、自分が全くそうは思っていなかったことでも、そう思っているように発言を強いられる場合があります。
もちろん、直接的に強制されていなくても、会社の考えに反する言動をとれば懲戒処分を受ける可能性があり、自由な意思の表明ができず、黙示的あるいは間接的な強制を受けていることがあるのです。
会社などの組織に所属する人は多かれ少なかれポジショントークをせざるを得ないことがあるのです。
相手の立場を考慮し真に受けないで聞いておく
どのような人にも立場があります。何らかの利害関係が絡む立場であるならば、利害関係に沿ってポジショントークを行うことがあります。これは当然、当たり前のことなので、資産運用に限りませんが、話は鵜呑みにしてはいけないということになります。
資産運用・投資においては、株式や投資信託などの営業担当者から、資産運用・投資に関する説明を受けることがあるかもしれませんが、あくまで、会社などの立場に立ってポジショントークをしているということを理解しておかなければいけません。
資産運用や投資に関する会社に所属するエコノミスト、ストラテジスト、アナリストなども、会社の利害関係を無視して公平誠実な説明をしている場合だけしかないと考えるのは誤りで、何かの形で会社の立場を踏まえた説明をしていることがあるのです。
資産運用・投資を勧める立場にある会社のレポートを確認してみれば、ポジショントークが顕著である事例を多数確認できます。会社を代表するエコノミスト、ストラテジスト、アナリストなどが発表している投資家向けのレポートが、前向きな内容、明るい内容に偏っていて、不利な情報やリスクに関する情報が少ない場合はポジショントークをしている可能性を強く疑うべきです。
例えば、株価は上昇するだろう、持ち直すだろう、もう底だろう、といったような情報発信ばかり行っている場合には、信用してよいのかどうか、冷静に見極めることが大切です。そのような事例は多数みられます。
インターネットやSNSなどにおいても同様で、自分の利害に絡んでポジショントークをしていないかどうか、慎重に見極めることが大切です。相手の立場を考慮して、真に受けないように参考程度にとどめて、話を聞いておくべき時があるのです。
まとめ
- ポジショントークとは、自分の立場が有利になるようなことを話すこと、自分の立場に沿って話すことです。株式や投資信託の営業などにおいても、営業担当者の立場を踏まえた説明が行われることがあります。エコノミスト、ストラテジスト、アナリストなども所属する会社の意向に沿った説明をしている可能性があります。
- 利害が関係する場合、何らかのポジショントークが混じることは当たり前なことであるため、相手の立場を考えながらポジショントークによって、情報が歪んでいないか、冷静に見極めることが大切です。