利上げとは・利上げの効果と影響
記事作成日:2018年5月4日
最終更新日:2021年9月7日
利上げとは、中央銀行が金融政策の対象としている政策金利(例:米国のFF金利)を引き上げることを意味します。金利を引き上げることから利上げといいます。利上げを行うことを金融引き締めともいいます。中央銀行が利上げを行うことによって、その国の金利水準が全般的に上昇することにつながり、景気を冷やし、物価上昇を抑制する効果があります。
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利上げの効果
利上げには景気を冷ます効果、物価を抑制する効果、バブルの発生を防ぐ効果があります。
利上げの景気抑制効果
利上げが行われると、市場の金利が上昇し、銀行の貸出金利などが上昇します。貸出金利が上昇すると、借入金利が低くないと採算が取れないような設備投資が手控えられるほか、住宅ローン金利も上昇するため住宅の買い控えを見据えて住宅投資も手控えられるようになります。
投資の手控えによって企業活動が停滞することから、やがて企業や個人のマインド(心理)が悪化し、雇用・賃金情勢も厳しくなるため、家計にも波及し個人消費も低迷します。そのため景気が全般的に鈍化・悪化します。
利上げの物価抑制効果
一見、利上げは悪い効果しかないように感じられますが、経済が安定的に成長していくためには必要なものであると言えます。利上げには、景気を冷やすことによって急激な物価上昇を防ぐ効果があります。急激に物価が上昇すると(インフレ)、手持ちのお金の価値が下落し、社会不安を招いてしまう恐れがあるのです。
また、利上げは自国通貨高を招くことから、輸入インフレを防ぐ効果もあります。
利上げのバブル発生防止効果
また、利上げはバブルの発生を未然に防ぐ効果があります。景気が過熱すると、採算が取れない投資でもどんどんと行われてしまう場合があり、やがて不動産価格が暴騰する一方、不良債権が増大してしまう恐れがあります。
景気が過熱する前に利上げによって景気を冷ますことで、不良債権の発生を防ぎ、不動産価格の暴騰と暴落を発生させないようにするのです。利上げは短期的には景気にマイナスとなりますが、長期的にはプラスになると考えられるため、利上げが行われることがあるのです。
利上げによる金融市場への影響
利上げが行われると、金融市場(株価、金利、為替レート)にも影響します。
利上げの株価への影響
利上げが行われると、設備投資や住宅投資が手控えられ、企業部門から家計部門へと影響が波及することから、先行き景気が冷え込み、企業業績が悪くなる可能性が出てくるため、株価の下落要因となります。
利上げの金利への影響
利上げが行われると、利上げの影響が金利市場にも波及し、市場の金利が上昇します。金融機関が資金を調達する金利が上がり貸出金利(借りる側から見ると借入金利)も上昇します。
利上げの為替レートへの影響
相対的に金利が高い国の通貨は買われる傾向があるため、利上げが行われると通貨が買われやすくなるため、自国通貨高となります。日本であれば、利上げが行われれば円高ドル安傾向となります。
利上げは景気を減速させるため慎重に行われる
利上げは、物価の上昇を抑制する効果のほか、バブルの発生を未然に防ぐ効果があり、安定的に経済が拡大するために重要ですが、景気を減速させる効果があるため、慎重に行われる傾向があります。
特に、重要な選挙を控えた政府は中央銀行に利上げをしないように明示的あるいは黙示的に要請することがあり、政府に配慮して中央銀行の利上げが難しくなる場合があります。
しかし、景気への配慮によって、かえって適切な利上げ時期を逃してしまい、利上げの判断が遅れてしまうこともあると考えられています。
中央銀行が利上げを急ぐ場合もある
ただし、中央銀行は、景気が悪化に備えて政策金利の引き下げ余地(利下げ余地)を確保しておきたいという考え、バブルの発生を未然に防いでおきたいという考えから、利上げを急ぐ場合もあります。
政策金利の引き下げ余地の確保とは、もし利上げを十分にできないまま次の景気後退局面を迎えてしまい利下げの必要が生じると、打てる金融政策手段がほとんどなくなってしまうため、利上げできる時に利上げをしておこうという考え方です。
日本では、2000年代の金融緩和の解除(ゼロ金利政策の解除、量的緩和政策の解除)は結果的に急ぎ過ぎであって時期尚早だったのではないかという批判が出たこともあります。利上げは早くても、遅くても批判にさらされることがあるのです。
まとめ
- 利上げとは、中央銀行が政策金利を引き上げることをいいます。
- 利上げは、景気を冷やす効果、物価上昇を抑える効果、バブルの発生を抑える効果があります。金融市場への影響としては、株価の下落要因、金利の上昇要因、自国通貨高要因(日本であれば円高ドル安要因)となります。