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安全資産とは

記事作成日:2017年11月18日
最終更新日:2021年9月1日

安全資産とは

安全資産とは、元本が保証されている資産を含め、価格変動リスクが小さく将来の収益の不確実性が小さい資産のことを意味します。つまり、ほとんどリスクがないとされる「無リスク資産」と「価格変動リスクが相対的に小さい資産(低ボラティリティ資産)」が安全資産になります。銀行預金、自国通貨建ての国債、元本保証型の保険などが安全資産です。

無リスク資産は、収益・利回りがあらかじめ確定しているため、将来得られるお金(キャッシュフロー)があらかじめ分かっていて、その確実性が高く安全です。また、価格変動が少ない資産(低ボラティリティ資産)は値下がりしても限定的なのでリスクが高い資産と比べると相対的に安全です。

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安全資産の例

安全資産には、元本保証の資産や価格変動リスクが小さい資産が含まれますが、次のようなものが安全資産の例になります。

  • 硬貨や紙幣などの現金
  • 金融機関への預貯金
  • 自国の国債など信用力が高い債券
  • MRFやMMF
  • 元本保証の保険・年金

元本が保証されている資産とは

元本とは投資を始める時に出した金額のことです(いわゆる「元手」)。元本が保証されている資産には、大きく分けると確定利回りではないものの元本部分が高い信用力で保証されている資産、当初から利回りが確定しておりその確定利回りが高い信用力で保証されている資産があります。銀行の特殊な仕組みがなくマイナス金利ではない預金や満期保有を前提とした場合の国債などが該当します。

なお、元本が保証されていると言っても、その保証の信頼性が低い、信用力がない場合は、元本が保証されているとはいえ安全資産とは考えません。

元本保証と価格変動リスクがある資産は安全資産か

元本保証はされているものの価格変動リスクがある資産もあります。利率が変動するものの確定利回りでは無い資産です。受取金額が変化する保険・年金などが該当しますが、高い信用力を背景に元本が保証されているのであれば、安全資産と考えられます。

なお、満期保有を前提に、市場の金利に応じて保有期間中のクーポン利率が変化する国債(変動利付国債)、元本が物価上昇率に応じて変動するものの元本が保証される国債(一部の物価連動国債)など価格変動リスクがありますが、元本が保証されています。そのため、基本的には安全資産の性質があると考えて良いですが、満期保有を前提とせず市場価格で売買を行う場合は、元本割れリスクがあるため、安全資産とは呼べない場合もあります。

確定利回りの資産でも安全資産ではないことも

満期保有を前提とすると固定利付債券(確定利回り)は、購入時点で満期までのキャッシュフローが確定するため、一見安全資産であるように考えられます。確定利回りの固定利付債券はマイナス金利で元本割れでなければ、自動的に元本保証されているということになります。

しかし、信用力が低い発行体が発行した債券は、保有期間中の利息(クーポン)の支払いや元本の償還が予定通り行われるか分からないというリスクが高くなります。

そのため、信用力が高い発行体が発行する債券、例えば国債(自国通貨建て)や政府関連機関が発行する債券などは安全資産と言えますが、経営状態に不安がある企業が発行する社債は安全資産とは言えません。

社債は保有期間中の途中売却を行わず、満期保有を前提としないのであれば、固定利付の場合で最終利回りがマイナスとならないのであれば、元本保証があることになります。しかし、その元本保証の信用力が弱い場合、安全資産とは言えません。

つまり、確定利回りの資産であっても安全資産ではない場合があるのです。

現金は代表的な安全資産でも紛失などのリスクがある

硬貨や紙幣の現金は現金として保有している限り、突然1000円が100円になるなどのように価格が変動することはありませんし、株式や債券と違って現金が破綻するというようなことはないため、価格変動リスク、破綻(デフォルト)リスクはなく、代表的な安全資産です。しかし、紛失などのリスクやインフレによる減価のリスクがあります。

現金は現物であるために紛失・損傷・盗難リスクがある

現金は実際に手元に現物があるため、落としたり忘れたりして紛失するリスク、火災などによって物理的に損傷するリスク、盗まれてしまう盗難リスクなどがあります。

現物資産特有のリスクですが、タンス預金などは存在自体を本人が忘れてしまうことさえもあります。間違って他の不要なものと一緒にゴミとして捨ててしまうこともあり得るのです。現金と言えども100%安全ということはなく、リスクがあるのです。

現金はインフレに弱い

手元に持っている現金は、金融機関に預けられているわけではないため利子は発生しません。配当金などもありません。現金は厳禁として保有している限り、自分からは勝手に増えてくれないのです。

しかし、物価上昇が起こると、現金の実質的な購買力は落ちてしまうため、資産としての価値は実質的に減少します。多額の現金を長期間保有していると、インフレの発生によって、実質的な資産価値が大幅に減ってしまうリスクがあるのです。

現金以外に価格の値上がりの可能性がある不動産や金などの実物資産はインフレの影響を受けて価格変動する可能性がありますが、現金はインフレによって価値が減るのです。

預金・貯金や保険は安全資産でも金融機関の破綻に注意

金融機関に預けておく預金や貯金は基本的に安全資産です。元本は保証されていて払い戻しを受ける時には元本に利子が付くため原本以上のお金が戻ってくることになります。また、元本の保証がある保険・年金(個人年金保険)なども基本的に安全資産です。しかし、注意すべきこともあります。

不況・大恐慌・金融危機の時は金融機関の破綻に注意

金融機関への預金や貯金は原則として元本が保証されています。しかし、預金・貯金をした金融機関が破綻した場合には、元本が保証されない場合があります。

日本ではペイオフが実施されているため、一定の預金等は預金保険制度によって1000万円と破綻日までの利息は全額保護されますが、一定の預金等は1000万円を超える部分が保護されません。また、預金保険制度によって保護されない預金等もあります。

景気が悪い不況・大不況の時や金融危機が発生した時は、経営体力がない金融機関は破綻してしまう可能性があるため、預金・貯金が必ずしも安全とは言い切れないことがあるために注意が必要です。保険も同様で保険会社が破綻した場合は当初の元本が保証されないことがあります。

低金利政策では利子はほとんど付かない

ただし、金融緩和によって市場の金利が低下している時は預金金利も大幅に低くなるため利子がほとんど使ないことがあります。銀行の預金は基本的に元本割れを起こすことはありませんが、利子がほとんど使ないためATM利用手数料など各種手数料の支払いによって預金することによって結果的に資産を減らしてしまうことがあります。

手数料等で元本割れすることがあり得る

近年では低金利が続いており、金融機関の収益環境が厳しくなっていることから、各種手数料を導入したり、値上げしたりする動きがみられます。口座を保有しているだけで維持・管理等の名目で手数料が発生する場合があり、銀行預金自体は元本保証でも、利子以上の手数料が差し引かれてしまい、結果的に元本割れを起こしてしまうことがあります。

可能性は低いもののマイナス金利にも注意

日本の一般国民向けの預金ではマイナス金利の適用はありませんが、中央銀行がマイナス金利政策を実施し、金融機関が一般の預金者にマイナス金利を転嫁した場合にはマイナス金利で元本割れを起こす可能性が考えられます。

当面、一般の預金にマイナス金利が適用される可能性はとても低いと考えられますが、将来にわたって全く可能性がないとは言い切れません。

中途解約時のペナルティや元本割れに注意

預金・貯金は引き出して現金化しやすいため、流動性という点でも安全度が高いと考えられます。一部の預金は途中で解約した場合、本来受け取れる利子が受け取れなくなど中途解約のペナルティがある場合もあるため注意が必要です。ただし、基本的に元本は保証されています。

一方、保険の場合は途中で解約してしまうと、払い戻される金額が支払った金額よりも低くなってしまい、元本割れを起こす場合もあるため、注意が必要です。

国債は安全資産でもリスクがあることも

国債が安全資産だとされるのはなぜかと言えば、国という信用力が高い発行体によって元本が保証された資産だからです。現在は世界的な規模で活動を行う極めて信用力が高い企業もありますが、それでもある国の中で、国が最も信用力が高いと考えられます。発行体である国がどうにもならない状態であれば、企業などはもっと悪い状態であるはずで、国が最後の砦というようなイメージとなります。

その上で、自国の国債であれば為替リスク等はなく、満期まで保有する前提であれば市場で金利変化による価格変動リスクの影響を受けることがなくなるため、基本的に国債は安全資産だということができます。満期保有でなくても、残存年限が極端に長くなければ、国債の金利変化による価格変化は小さいため、安全資産だと考えることができます。

しかし、同じ債券であっても社債は必ずしも安全資産とは言えませんし、外国の国債は信用力が高くても為替変動リスクがあるため、その国と同じ通貨を採用していない国の投資家にとっては安全資産とはなりません。

国も債務不履行(デフォルト)となることがある

もちろん国債であってもリスクが全くないということはありません。国も財政政策の失敗により政府の債務が増大すれば行き詰ってしまい、国債の利息(クーポン)や元本の償還金の支払いの遅延や不能を起こし、債務不履行(デフォルト)となることがあるのです。過去には世界中で様々な国の国債が債務不履行(デフォルト)を起こしています。

日本の財政状況も財政収支の赤字が長らく続いており、厳しい状況であり、将来にわたって国債は全くリスクがないとは言い切れない部分があるため、国債であれば必ず安全とは言えません。

社債は安全資産でないこともある

債券は満期まで保有すれば、満期までに支払われる元本の償還金と利息(クーポン)の金額は基本的に確定しています(変動利付国債や物価連動国債、途中で償還される債券などを除く)。

そのため、債券は途中で売却しなければ、価格変動リスクは基本的にないため、安全資産ということができるのですが、債券によっては元本の償還や利息の支払いが疑わしい場合があります。

しかし、債券の発行体の財務状況が悪化している場合には、予定通りに利息の支払いや元本の償還を行えない可能性があります。そうなると満期まで保有しても予定していた支払いが受けられず元本割れしてしまう可能性があるのです。

特に社債は発行体となる企業は国と比較すると信用力が低くなるため、安全資産とは呼べないことがあります。

外国の国債(債券)は為替変動リスクがあり安全資産ではない

なお、外国の国債、例えば米国債は安全資産であると考えられますが、日本の投資家にとっては米国債は米ドル建てであるため、自国通貨の円建てではなく、投資をする場合には、為替リスクが含まれてしまいます。外貨建てのままなら安全資産と言えますが、為替リスクがあり自国通貨建てに換算すると価格変動リスクが大きいのです。

そのため、米国債やドイツ国債など国際的に見て信用度が高い国債であっても、日本の投資家にとっては為替リスクがある分、安全資産ではなくなってしまうのです。自国通貨建ての信用力が高い外国債券がある場合は安全資産と同等だと考えることが出来る場合があります。

なお、国家財政が破綻寸前の国の国債は為替変動リスクがなかったとしても、安全資産ではありません。

マイナス利回りの国債は安全資産か

近年ではマイナス金利政策により、マイナスの利回りとなる国債が発行されることがあります。マイナスの利回りとなる国債は元本割れとなる可能性が高いですが、将来の収益の不確実性は小さく、通常は安全資産に含まれます。そのため、厳密には元本保証の有無で安全資産かどうか区分されるわけではありません。あくまで相対的な価格変動の不確実性が高いかどうかで安全資産かどうかが決まります。

マイナス利回りの国債は、リスク回避的な行動をとる投資家の資金の逃避先となる場合があります。

償還までの年数が長い国債は安全資産か

特殊な仕組みがない国債は満期まで持ち切れば、マイナスの利回りでない場合は元本が保証されています。しかし、満期保有を前提とせず、満期までの間に途中売却をする場合、市場金利の変動に応じて国債の価格は変動します。そして、償還までの年数が長い国債ほど、金利変動に伴う価格変動が大きくなり(修正デュレーションが大きい)、価格変動リスクが大きくなります。

つまり、国債は基本的に安全資産ですが、残存年限が大きい国債は大きな価格変動が発生することがあり、安全資産とは言いづらい価格変動リスクを抱えている場合があります。

まとめ

  • 安全資産とは、元本保証の資産を含む、価格変動リスクが小さく将来の収益の不確実性が小さい資産を意味します。
  • 安全資産の例として、銀行の預金、自国通貨建ての国債、元本保証型の保険などがあります。

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【安全資産とはの記事は終わりです】

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