債券貸借取引とは
記事作成日:2020年10月3日
最終更新日:2021年9月12日
債券貸借取引とは、債券の貸し手が借り手に債券を貸し出し、一定期間経過後に借り手が同量・同種の債券を貸し手に返済する消費貸借取引のことを意味します。貸借取引とは貸し借りの取引のことです。
貸借取引には、担保を差し入れる有担保取引と担保がない無担保取引がありますが、短金融市場で行われるのは有担保取引です。担保として借り手が貸し手に現金担保を差し入れる債券貸借取引を、現金担保付き債券貸借取引(現担レポ、貸借レポ)と呼びます。
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現金担保付き債券貸借取引の仕組み
現金担保付き債券貸借取引では債券の貸し借りの際に現金担保が差し入れられることが特徴です。担保金の返却時に担保金金利が、債券の返却時に債券貸借料が合わせて支払われます。
取引開始時(スタート時)
現金担保付き債券貸借取引では、取引開始(スタート)時に債券の貸し手が債券を債券の借り手に貸し出し、債券の借り手(資金の出し手)は担保金を債券の貸し手(資金の取り手)に差し入れます。
- 貸し手:-債券 +担保金
- 借り手:+債券 -担保金
取引終了時(エンド時)
貸し手と借り手があらかじめ合意した一定期間が経過した取引終了(エンド)時には、借り手は借りた同量・同種の債券を貸し手に返却するとともに債券貸借料を貸し手に支払います。貸し手は担保金を借り手に返却するとともに担保金金利を支払います。
- 貸し手:+債券 +債券貸借料 -担保金 -担保金金利
- 借り手:-債券 -債券賃借料 +担保金 +担保金金利
債券貸借取引の結果
貸借取引の結果、開始時の債券の貸し手は債券貸借料を受け取る代わりに担保金金利を支払うことになります。開始時の債券の借り手は担保金金利を受け取る代わりに債券貸借料を支払います。
- 貸し手:債券貸借料-担保金金利
- 借り手:担保金金利-債券貸借料
レポ金利とは
レポ金利(レポレート)は、担保金利率と債券賃借料率の差を意味します。経済的な実態としては債券を担保として資金を借りる金利ということになります。
レポ金利(レポレート)はレポ取引の重要な取引条件となります。また、短期の資金の貸し借りの金利となるため、短期の市場金利の実勢を示す指標ともなります。
レポ金利は短期金利の動きと連動するため、中央銀行によるマイナス金利政策下ではマイナスの金利となることがあります。
債券貸借取引の特徴
債券貸借取引の特徴についてです。
債券貸借取引の対象となる債券
一般に貸借取引といった場合、取引対象は債券に限らず株式などの有価証券を対象とすることができますが、債券貸借取引と言った場合には、地方債、政府関係機関債(特別法人債)、社債なども貸し借りの対象となりますが、国債が取引の中心となっています。
債券貸借取引の主体
債券貸借取引はオープン市場に分類されますが、通常の事業会社には敷居が高く、基本的に銀行、信託銀行、証券会社など金融機関による取引が行われています。
債券貸借取引の取引期間
債券貸借取引の取引期間は短いもので1日(翌日物)から、長いもので数か月のものがあります。基本的には短期の取引が中心となります。
債券貸借取引の性質
債券貸借取引は、債券の貸し手から見ると経済的な実態としては債券を担保にお金を借りる行為と同等で債券を担保にした資金調達を行っていることになります(資金の取り手)。取引期間中は担保金を運用することも可能です。
債券の借り手から見ると経済的な実態としては債券を担保として受け取る代わりに資金を貸し出す資金運用を行っていることになります(資金の出し手)。また、現金を担保にして債券を調達していると考えることもできます。調達した債券を空売りすることもあります。
レポ取引と債券貸借取引の違い
海外ではレポ取引と言った場合、通常は売買取引を指しますが、日本でレポ取引といった場合、債券現先取引(条件付き売買取引)と現金担保付き債券貸借取引の両方を意味することもあれば、特に現金担保付き債券貸借取引を意味する場合もあり注意が必要です。
- 日本のレポ取引→「債券現先取引と(現金担保付き)債券貸借取引」、または「(現金担保付き)債券貸借取引のみ」を指す
- 海外でのレポ取引→日本の現先取引(条件付き売買取引)に相当
レポとリバースレポの違い
レポとリバースレポの違いは、レポ取引を債券の貸し手側から見るか、債券の借り手側から見るかの違いとなります。レポ取引(債券貸借取引)において、債券の貸し手(資金の取り手)からレポ取引を見た場合がレポ、債券の借り手(資金の出し手)からレポ取引を見た場合がリバースレポとなります。
レポ
債券の貸し手(資金の借り手)から見たレポ取引で、債券を担保に資金調達をします。
リバースレポ
債券の借り手(資金の出し手)から見たレポ取引で、債券を調達し資金運用をします。
GCレポとSCレポの違い
GCレポとは銘柄を特定しない債券貸借取引で、SC(Special Collateral)レポは銘柄を特定して行う債券貸借取引という違いがあります。
GCレポ
GC(General Collateral)レポ取引(ジェネラル取引、非特定銘柄取引)とは、銘柄を特定しないで行う債券貸借取引です。銘柄を特定しないため債券の銘柄ではなくやりとりされる資金が重要となり、資金調達・資金運用の意味合いが強いレポ取引となります。GCレポのレポ金利は銘柄による影響を受けづらくなるため短期金利の指標性が高くなります。
SCレポ
SC(Special Collateral)レポ取引(スペシャル取引、特定銘柄取引)とは、銘柄を特定して行う債券貸借取引です。銘柄を特定して行うので、特定の債券の調達を目的とする意味合いが強いレポ取引となります。債券の銘柄が特定されるので債券貸借料率が高くなる傾向があり、担保金利率と債券賃借料率の差であるレポ金利(レポレート)は低くなる傾向があります。
まとめ
- 債券貸借取引は、債券の貸し借りをする取引で、債券の貸し手が借り手に債券を貸し出し、一定期間経過後に借り手が同量・同種の債券を貸し手に返済する消費貸借取引のことを意味します。
- 担保として借り手が貸し手に現金担保を差し入れる債券貸借取引を、現金担保付き債券貸借取引(現担レポ)と呼び、日本では債券現先取引と合わせてレポ取引と呼びます。