持株会は勤務先企業にリスクを集中させてしまう
記事作成日:2015年11月6日
最終更新日:2021年12月8日
上場企業などでは自社株式に従業員の立場として投資できる従業員持株会(持ち株会)があることがあります。また、上場企業でなくても自社の株式を保有するように経営者から持ち掛けられることがあります。ストック・オプション(新株予約権)を報酬として受け取るような場合もあります。
自社の株式を持つことは、自社が儲かれば株価の値上がりあるいは配当金の増加によって自らの収入も増えることから、仕事のモチベーションを高める方策としてしばしば用いられます。今後の業績の伸びが期待できる企業であるならば、自社株は魅力的な投資にも思えますがリスクもあります。
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持株会は投資のリスクが自社に集中する
持株会などによる自社株への投資で最も問題なのは投資のリスクが自社に集中してしまうことです。
労働による対価である給料は勤務先である自社の業績の影響を受けます。自社の経営が傾けば毎月の給料が減ったりボーナスがカットされたりする可能性があります。また、自社株の評価についても自社の業績の影響を受けます。自社の経営が傾けば自社の株式の評価額が下がることになります。自社の経営が傾く、あるいは自社の業界が傾くことになれば、自分の収入や資産は大きな影響を受けることになります。
自社株の購入を行うと、労働と資産運用の両面で自社への投資を行うことになり、リスクが集中してしまうことになります。
経営者以外は自分の努力は業績にほとんど影響しない
大企業ともなれば、ほとんどの従業員の個々の努力は業績を左右するほどの影響力はありません。例えば、自分が中核的な役割を果たして超大型契約を成立させる、画期的な新商品やサービスを開発するといったように、個人としてメディア等に取り上げられるほどの有名人になり広告塔的な役割を果たすなどの役割を果たさない限り、通常1人1人の従業員の努力による業績への影響力は限られています。
自分が労働で頑張ったことによって自社の株価が上がるのであれば、自社株への投資もありなのかもしれませんが、経営者の経営判断のミスによって業績は左右されるため、経営者でない限りほとんどの場合自社株への投資は実質的に仕事へのモチベーションにならないと考えられます。特に企業の中での役割が大きくない場合、若手の場合であれば、自らの意見や行動が自社の業績を左右することはほとんどないはずです。
自分の努力が業績に影響しないのであれば、自社に投資するのも他社に投資するのも、どちらの業績がより伸びるか、どちらの株価が上がるのかといったような純粋な投資判断に過ぎないことになります。
ただし、規模が小さい企業の場合は自分の努力が業績を左右する場合もあるので、自分の努力と自社の株価には一定の関係が生じる場合があります。
労働の対価は給料や賞与など受けている
労働の対価は給料や賞与などで受けているので、経営者などでない限り敢えて追加して自社株に投資する必要性は薄いと考えられます。
会社に勤めることによって労働を提供することの対価は毎月の給料や賞与(ボーナス)などによって支払われます。法律的な解釈を除けば退職金も広い意味で労働したことによって受け取るものです。
労働で成果が出た場合には通常は、昇給や昇進などによって毎月の給料や賞与、退職金が増加することになります。近年では労働の成果が全く給料に反映されないということは珍しくなっており、年功主義的な報酬体系であっても何らかの成果に応じた報酬が得られているはずです。また、年功主義的な報酬体系であっても勤続年数が伸びれば毎月の給料などは増加するはずです。
資産運用は自社株式以外に
資産運用で株式に投資を行う場合は、持株会などによる自社株式への投資は客観的に見ても余程魅力的でなければ避けた方が良いでしょう。
労働部分で事実上自社への投資を行っていると考えると、資産運用は別の業界の株式に投資をした方がリスクの分散を行うことができます。
まとめ
- 持株会などを通じて勤務先の株式を購入すると自分の収入や資産を勤務先企業に集中させることになってしまいます。
- 資産運用で株式に投資を行う場合は勤務先の株式への投資は避けた方がリスクの分散につながります。