為替ヘッジありの外国株式のメリットとデメリット
記事作成日:2019年10月9日
最終更新日:2021年12月7日
米国などの先進国株式に投資をする投資信託では、為替ヘッジあり(為替ヘッジ付き)のものを選べる場合があります。為替ヘッジとは、為替予約などを活用してあらかじめ将来の為替レートを固定することで外貨建て資産の為替変動リスクを回避することで、100%の為替ヘッジがある外国株式の場合は、ヘッジコストが発生する代わりに為替レート変動の影響がなくなり、外国株式の価格変動(現地通貨ベース)のみとなります。
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為替ヘッジありの外国株式の特徴
為替ヘッジがあるかどうかが問題となるのは外国債券の場合が多いですが、外国株式でも為替ヘッジの有無が問題となることがあります。外国株式はもともと株価変動が大きいため、為替変動の影響が外国債券の場合ほどは気にならないかもしれませんが、為替変動によってもリターンは左右されます。そのため、為替ヘッジをしたいという場合があるのです。
為替ヘッジありと為替ヘッジなしのリターン特性の違い
為替ヘッジがない場合の円ベースの外国株式のリターンは「外国株式のリターン(現地通貨ベース)+為替のリターン」となりますが、為替ヘッジを行うことで「外国株式のリターン(現地通貨ベース)-ヘッジコスト」となります。ヘッジコストを負担してもメリットがあるような場合でないと為替ヘッジを行う意義が薄いということになります。
為替ヘッジありの外国株式のメリット
外国株式で為替ヘッジありのものを選ぶと為替変動リスクの心配をすることなく、純粋な外国株価の変動に着目して投資をすることができるようになります。
為替変動リスクがなくなるか少なくなる
為替ヘッジがある外国株式を選ぶと外国株式投資における為替変動リスクをなくせるか、少なくすることができます。為替変動リスクがどの程度回避できるかはヘッジ率にかかっていて、100%ヘッジであれば為替変動リスクはなくなり、100%未満であれば一部の為替変動リスクがなくなり、為替変動リスクが少なくなります。為替変動リスクがなくなることで為替による損失(為替差損)が発生することがなくなります。
そのため、純粋な外国株式の株価変動に注目して投資することができるようになり、為替レートの変動に頭を悩ませる必要がなくなります。
為替ヘッジをしても国内株式を上回るリターンが期待できることがある
外国債券で為替ヘッジを行う場合、2通貨間の金利差に応じてヘッジコストが発生するため、理論的には国内債券と為替ヘッジありの外国債券では期待リターンには大きな差がないことになります。しかし、国内株式と外国株式の場合は、企業の業績などに応じて株価騰落率が変わってくるため、債券の時のように国内株式と為替ヘッジありの外国株式の期待リターンがヘッジコストの負担によって理論上同じになるということはありません。
そのため債券の時とは異なり、国内株式の単純な代替投資先としてヘッジ付き外国株式を選ぶのではなく、純粋に外国企業の業績がどうかに注目して投資をすることになります。為替ヘッジありの外国株式はヘッジコストを負担しても、国内株式よりも魅力的な場合があり得るのです。
為替ヘッジありの外国株式のデメリット
為替ヘッジありの外国株式ではヘッジコストがあるため、ヘッジコストを上回るリターンが期待できる場合でないと為替ヘッジをかける意義が薄れてしまいます。為替ヘッジを行うことで為替差益も得られなくなります。
ヘッジコストが発生する
為替ヘッジを行うと2通貨間の金利差に応じたヘッジコストが発生します。2通貨間の金利差が大きい場合に為替ヘッジを行うとヘッジコストが大きくなるため、ヘッジコストを上回るリターンが期待できる場合でないと為替ヘッジをする意味が薄れてしまいます。
仮に、国内株式と外国株式の現地通貨建ての期待リターンが同じような場合には、為替ヘッジをして外国株式投資を行うとヘッジコストの分だけ期待リターンが下がるので、最初から為替変動リスクがない国内株式を選べばいいということになってしまいます。
為替差益が得られない
為替ヘッジをすると為替変動リスクを負わなくなるため、為替によるリターンも得られなくなるということになります。為替が不利に動いた場合の為替差損はなくなりますが、有利に働いた場合の為替差益もなくなってしまいます。
また、為替レートの変動は投資家のリスク選好度合いとも関係があるため、投資家がリスク選好的である場合、株価が値上がりし、外国通貨も値上がり(円安ドル高など)することがあります。そのため、株価と為替の両方から高いリターンが得られたはずなのに、為替ヘッジをしているためにリターンが少なくなってしまうということがあり得ます。
まとめ
- 為替ヘッジありの外国株式とは、為替予約などの手法により為替変動リスクを回避した外国株式のことで、現地通貨ベースの株価の変動からヘッジコストを差し引いたものがリターンとなります。
- 為替ヘッジありの外国株式は、為替変動リスクを気にせず投資できることがメリットですが、為替差益を得られなくなることなどがデメリットです。