株主の権利と義務・責任とは
記事作成日:2015年8月9日
最終更新日:2021年12月19日
株主の権利は、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利、会社の経営に参加する権利があります。一方で、株主の義務・責任は、出資する金額の範囲内に限られますので投資金額全額が返ってこないことはあっても、その範囲を超えて会社の債務の返済義務を負うようなことは基本的にありません。
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株主の権利とは
株主の権利は様々なものがありますが、大きく分けると剰余金の配当を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利と会社の経営に参加する権利の3つがあります。
- 剰余金の配当を受ける権利
- 残余財産の分配を受ける権利
- 会社の経営に参加する権利
このうち自分の利益につながる剰余金の配当を受ける権利や残余財産の分配を受ける権利を自益権と呼び、株主総会における議決権など会社の経営に参加する権利は株主全体の利益につながるため共益権と呼ばれます。
また、株主の権利については、1株あるいは1単元でも行使できる単独株主権と一定の株式数を保有することで行使できる権利である少数株主権があります。単元株が導入されている場合は1単元でないと制約される株主の権利が一部あります。
剰余金の配当を受ける権利
剰余金の配当を受ける権利とは文字通り会社から配当金を受け取ることができる権利です。会社が利益を上げたら配当という形で分けてもらうということです。株式投資では値上がり益と並んで重要な収益となります。
剰余金の配当を受ける権利は1株の株主でも受けることができる権利です。単元株未満の株式であっても制約を受けないことが会社法及び会社法施行規則において定められています。ただし、種類株式の場合は剰余金の配当について異なった権利内容となっている場合があります。
残余財産の分配を受ける権利
残余財産の分配を受ける権利とは、会社が解散した場合に会社に残っている財産を株式の割合に応じて分けてもらえる権利です。解散の際には負債を返済し残った分が株主に分けられるため、経営が傾いて解散した場合にはほとんど分配を受けられないこともあります。
残余財産の分配を受ける権利は1株の株主でも受けることができる権利です。単元株未満の株式であっても制約を受けないことが会社法上定められています。ただし、種類株式の場合は残余財産の分配について異なった権利内容となっている場合があります。
経営に参加する権利
株主が経営に参加する共益権については、単独株主権と少数株主権があります。ただし、種類株式の場合は議決権の行使などについて異なった権利内容となっている場合があります。
単独株主権
単独株主権の最も代表的な権利は株主総会に出席する権利と議決に参加できる議決権です。ただし、単元株制度が導入されている場合は、議決権は1単元を保有していないと行使できません。
そのほか単独株主権には、定款や計算書類などの閲覧を請求する権利、株主名簿や新株予約権原簿、株主総会議事録の閲覧を請求する権利、募集株式の発行の差止請求権、募集株式の発行の無効の訴えを起こす権利、新株予約権発行の無効の訴えを起こす権利、資本金減少の無効の訴えを起こす権利、吸収合併や吸収分割など組織再編行為の無効の訴えを起こす権利、株主代表訴訟を起こす権利などがあります。
少数株主権
一定の株式数を保有していることなどを前提に認められる少数株主権の例としては、株主総会に対して議案を提案する議案提案権、株主総会の招集を請求する権利、会計帳簿などの閲覧や謄写を請求する権利、財産の状況の調査や株主総会の招集手続きに関する検査役の選任請求権、取締役や監査役などの解任の訴えを起こす権利、解散の訴えを起こす権利などがあります。
株主の義務とは
株主の義務は会社にお金を出資することですが、株式を取得する時には出資と引き換えになるため義務を履行した状態で株式を取得します。つまり、株式を購入して保有している時点で事実上義務はないことになります。
株主の責任とは
株主は出資した金額の範囲内で責任を負います。いわゆる有限責任です。つまり、株式を取得した時に支払ったお金を失う可能性はありますが、それ以上にお金の支払い義務を負うことはありません。会社が多額の負債を抱えて倒産したとしても会社の債権者が株主に対して直接支払いを請求するようなことはありません。
株主責任と呼ばれる言葉がありますが、新しい義務が発生したり、何らかの新しい責任を負ったりするようなものではなく、既に出資している金額の範囲内での責任です。減資によって株主としての権利が減ったり無くなったりすることがあるほか、増資によって権利が薄められたり株価下落によって経済的な損失を被ることです。
まとめ
- 株主の権利には、剰余金の配当を受ける権利、残余財産の分配を受ける権利。会社の経営に参加する権利があります。
- 株主の義務・責任は、出資する金額の範囲内に限られますので投資金額全額が返ってこないことはあっても、その範囲を超えて会社の債務の返済義務を負うようなことはありません。